第16話 今日はゆっくり休もう
翔と春、桜、小梅はリビングへ降りると洗面所で手を洗った。
翔は、小梅に家にあったドッグフードをあげた。
小梅は待っていたかのように勢いよく食べた。
「小梅、ゆっくり食べなよ」
翔は嬉しそうに笑った。
「兄ちゃん、お腹すいたから食べるね」
「ダメ!」
春がカレーライスを口に入れようとすると翔が止めた。
「なんで?」
春は不思議そうな顔をして翔を見た。
「いただきます。言ってないだろう」
「あっ、そうだった!」
春はスプーンを置いた。
「いただきます!」
翔は手を合わせて、お腹に力を入れて言った。
「いただきます」
春と桜は手を合わせて、声を揃えて言った。
「美味しい!」
桜は、カレーライスを口に入れると目を大きくして幸せそうな顔をして言った。
「よかった。前にお母さんと一緒に作ったことがあったけど、久しぶりに料理をしたから美味しいと言ってもらえて嬉しいな」
翔は、桜の美味しいに食べる姿を見ると嬉しい気持ちになった。久しぶりに誰かと一緒に食べたからか、ちゃんとした料理を食べたからか、何故か最後に家族四人でカレーライスを食べたあの日を思い出し、涙が出そうになった。
「やっぱり、誰かと一緒に食べる料理って美味しいね。そういえば、テレビって何がやっているんだろう」
春は、嬉しそうな顔をして食べ、テレビの電源をつけた。
テレビの映像は、宇燈逢籠(いぇひおうる)と君が代高校についてのことだけが流れていた。
宇燈逢籠“は、人口三〇〇人が住む、面積十五平方キロメートルの町。生き残った三〇〇人が力を合わせて生きていく町。進化し続ける町。一つだけ約束がある。それは、この町の外に絶対に出ないこと。理由は、外は町が整備されていない危険区域と指定されているため絶対に外には出ないことという内容が放送されていた。次に”君が代高校”の映像が流れた。ここは、生き残った子どもたちが通う学校。そして、希望の光。生徒たちはこの世界を救うために、過去へ行くタイムマシンに乗る授業と未知のウイルス”ゼノ”の発生を防ぐための授業を受けてもらうという内容が放送されていた。
その内容はAIの声でひたすら繰り返し流されていた。
「まるで僕たちがこの町のヒーローみたいだね」
春は、他人事のように呟いた。
「これが放送されたら、大人たちは私たちに期待するよね。期待されすぎるとちょっと怖いな」
桜は不安そうに呟いた。
「大丈夫だ。俺たちなら、きっと」
翔は桜に笑いかけた。
「うん」
桜は笑顔で返事をした。
その後は三人ともカレーライスを平らげた。
「美味しかった! ありがとう!!」
桜は満面の笑みを浮かべた。
「また一緒に食べよう」
「うん。ありがとう。私も料理できるように練習して、翔くんと春くんにご馳走するね!」
「楽しみにしてる」
翔は、出会って一日でこんなにも仲良くなれたことを喜んだ。
「片付けるね」
桜は、三人の分の食器を洗いに流しへと向かった。
「ありがとう」
「ううん、今の私にはこれくらいしかできないから」
「料理は練習したら作れるようになるさ。俺も不器用だけど、ずっと作っていたらできるようになったし」
「ありがとう。私、頑張るね」
「うん。応援してる」
翔は桜に微笑んだ。
夕飯の片付けを終えた。
「翔くん、春くん、ありがとう!」
桜は、嬉しそうに微笑んだ。
「うん。また一緒に食べよう」
翔は、誰かに感謝をされるのが久しぶりだったのでとても嬉しかった。
それぞれ自分の部屋の前へ着くと、桜から話し始めた。
「本当にありがとう! 翔くん、春くん、小梅、またね」
桜は嬉しそうな表情をしていた。
「どういたしまして。また明日」
翔は手を軽く振った。
小梅は嬉しそうに尻尾を振った。
「またね、桜」
春は大きく手を振った。
翔は、自分の部屋のドアノブをひねったがドアが開かなかった。
「オートロックか。ちょっと面倒だな」
翔は、画面操作をしてドアを開けた。春と桜の方を見ると、春も桜も同じ反応をしていた。
翔と春、桜は部屋のロックを解除すると、お互いの顔を見て笑った。そして、手を振りながら部屋へ入った。
翔は、様子を見ながらお風呂に入り、パジャマに着替えた。そして、今日の出来事を振り返り、明日に備えて早めに寝た。
小梅は翔の隣で丸くなって寝た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます