第17話 一日目の朝

 ここの家に住んで一日目の朝。

 翔は、六時に起きて、顔を洗い、服に着替え、お腹を空かせているのかドッグフードと翔を交互に見る小梅にドッグフードを与えた後、朝ごはんの準備を始めた。ここの家に住んでから一日も経ってないのに慣れてしまっていることを怖いと感じた。やっとできた居場所をもうこれ以上、失わないようにと祈った。

 翔は目玉焼きを作りながら、桜が朝ごはんをバタバタして料理をする姿が思い浮かんだ。

「春の分だけじゃなく桜の分も作るか。どうせなら、神崎と流川の分も作るか」

 翔は独り言を呟き、この家に住む全員の分を作り始めた。

「おはよう。兄ちゃん」

 六時半に、春は眠そうな顔をして起きてきた。

「おはよう」

「朝ごはんできてるぞ。桜と神崎と流川は起きているか?」

「どうだろう? 分からないや」

「そうか。実は桜と神崎と流川の分も作ったんだ。桜は料理に慣れてないから、今から作るとしたら間に合わないだろうし、朝ごはんを作れなくて何も食べてこないっていうのもよくないと思ってみんなの分も作った」

「確かに、朝ごはんを食べてないと授業中倒れそうだよね。それに、朝ごはんを作っていたから学校に遅刻したなんても恥ずかしいよね」

「絶対に遅刻はしたくないな。俺の担任、早乙女先生って言うんだけど怒らせたら絶対怖いと思う」

「そんなに怖いの!? 僕の担任の水野先生は優しいよ」

「早乙女先生は心がないような先生だったな。でも案外、優しそうな人ほど怖いと思うぞ」

 翔はニヤリと、不敵な笑みを見せた。

「えー、水野先生が怖いなんてやだよ〜」

 春は身震いをした。

「じゃあ、桜たちの様子みてくる」

「待って、僕も行く!」

 朝七時、起きている人は起きてる時間に翔と春は桜の部屋をノックした。

「翔くん、春くん、おはよう」

 ドアが開くと、桜は肩と胸くらいの長さまで髪を下ろし、パジャマ姿で眠たそうな顔をしていた。

「朝ごはん食べた?」

「……まだ食べてない。今、起きたところ」

「よかった。桜の分も作ったから一緒に食べよう」

「ありがとう。すぐに準備するから」

 桜は、慌ててドアを閉めた。

 その後、翔と春は燈子と真宙の部屋に行ったが、燈子からも真宙からも返事がなかった。おそらく先に学校へ向かったのだろうと翔は思った。余った分は、翔と春のところに多めに入れた。

 翔と春は、リビングへ行き、翔と春、桜の分の朝ごはんを用意した。

 朝ごはんは、白米と目玉焼き、味噌汁、シャケの和食であった。

「お待たせ。本当にありがとう! 今から作ったら間に合わなかったよ」

 桜はうさぎのヘアゴムで結んだツインテールに髪型を変えて来て、深いお辞儀をして嬉しそうに笑った。

「どういたしまして」

 翔は、桜の笑顔を見れて作ってよかったと思った。

 そして、手を合わせて春と桜を見て言った。

「いただきます!!」

「いただきます!!」

 春と桜は手を合わせて言った。

「美味しいね」

 桜は味噌汁を飲むと、美味しそうな幸せそうな顔をした。

「味噌汁って、飲むと落ち着くよな」

「うん。味噌汁っていいよね。翔くん、春くん、よかったら一緒に学校に行ってもいいかな?」

 桜は、翔と春を見て、少し不安そうな顔をして聞いた。

「もちろん。俺も同じこと考えていた」

「うん! 桜がいると嬉しい」

 翔と春は迷わず答えた。

 すると、桜は涙を一滴頬に流した。

「どうした!?」

 翔は、桜がいきなり涙を流したので驚いた。

 春も、どうしたらいいのか分からないのか、キョロキョロと翔と桜の顔色を伺った。

「私の家の近くに翔くんと春くんがいてよかった」

 桜はあたふたする翔と春を見て、安心した表情で笑った。

「俺も、桜がいてよかった。じゃあ、そろそろ学校へ行く準備をしようか」

 翔は、桜の笑った顔を見て安心した。

「うん」

 桜は、頬に流れた涙を袖で拭きながら頷いた。


「そうだね。八時には家出ないとだよね」

 春は、画面を表示して時計を見た。

「では、ごちそうさまでした」

 翔は手を合わせた。

「ごちそうさまでした」

 春と桜は、手を合わせてごちそうさまをした。

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