第15話 ごはんは誰かと一緒に食べると美味しい
俺と春は店内に入ると、店員がいた。野菜や肉、お米、調味料等が売っていた。あの頃のスーパーと雰囲気も変わっていなくて安心した。
「春は何を作りたい?」
春に聞くと春は迷わず答えた。
「僕、カレーライス食べたい」
すぐに春の気持ちが分かった。家族で食べていたあの楽しい日々が恋しいのだと。
「いいね。カレーライスにしようか!」
春に寂しいを思いをさせないように元気よく話した。
カレーライスを作るのに必要な食材を選んだ。あの頃を思い出しながら、食材を一つ一つ大事に宝物のようにかごに入れた。また、明日の朝ごはんと夕飯の分として、米や野菜、卵なども多めにかごにいれた。
春も俺と同じ気持ちなのだろうか。食材を一つ一つ大事そうに手に取って、カゴの中に入れた。
会計をするときに店員はいなかった。どうやら、店員は商品の管理をするためだけにいるそうだ。店の外へ出ようとすると、画面に会計と表示された。タッチをすると、所持金が下がったことで会計が終わったということが分かった。唯一、そこだけがあの頃のスーパーとは違った。
家に戻り、早速、リビングのキッチンを使って料理を始めた。
「春、これ切って」
「うん!」
春は嬉しそうにジャガイモとニンジンを慣れた手つきで切った。
「僕、次は玉ねぎを切るよ」
「大丈夫、兄ちゃんが切るよ。玉ねぎを切ると目がしぶしぶして涙が出るから」
玉ねぎを切りながら泣いた。家族とし料理をしていたあの頃を思い出しながら、玉ねぎをひたすら切った。
「この玉ねぎ、すごく涙がでるんだね。だから僕が切るって言ったのに」
「いいんだ。これからも玉ねぎを切るのは兄ちゃんの仕事だ」
「あははっ! 兄ちゃん、変なの」
春は笑いながら、手際よく次の準備をした。
「やっとできた」
「さあ、食べるぞ」
「うん!」
「いただきます」
二人は息を合わせて言うと、カレーライスを口に入れた。
「美味しい~」
「母さんと三人で作ったカレーライスの味と同じだな。それと人数分も同じだな」
俺と春は、無意識に家族四人分のカレーライスを作っていた。
春は口には出さなかったが寂しい顔をした。
「カレーライス、桜にあげない?」
春は、翔の反応を伺った。
「それはいい考えだな! 春、今から桜に渡しに行こう!!」
「うん!」
春は嬉しそうに返事をした。
二人で食べると、父親と母親がいなくなってから施設で二人で食べていたことを思い出すため、春ではない誰かと食べれることがれ嬉しかった。おそらく、春も同じ気持ちなのだと思った。
小梅を抱っこして春と、桜の部屋へ向かい、桜の部屋をトントンと叩いた。
「…………はいっ!」
驚いた桜の声がドアの向こうから聞こえた。
「俺、翔だけど今いいか?」
「うん、今開けるね。えっと、画面を開いて開けるのかな?」
「そのまま開けられるよ」
「分かった。ちょっと待ってね」
ガチャ、と桜はドアを開けた。部屋からほのかに花の香りがした。
「俺と春でカレーライスを作ったんだ。一緒に食べないか?」
「いいの?」
「多く作ってあるから大丈夫だ」
「食べたい!」
桜は食い気味に嬉しそうな顔をして答えた。
「もしかして何か作ろうとしてた?」
「うん。だけど、料理したことないから作り方を調べてたの……」
桜は恥ずかしそうに答えた。
「そうなんだ。桜は料理が苦手なんだ。じゃあ、今度一緒に作ろう!」
桜のことを少し知れたことが嬉しくて喜んだ。
「苦手じゃないもん! 料理したことがないだけだもん。ふふっ、ありがとう。今度教えてね」
桜は、少し怒った顔をした後に笑った。
「桜に料理教えるの、楽しみだな」
「馬鹿にしないでよ~」
「本当に楽しみなんだ。だって、料理は一人よりも一緒に作ると楽しいんだぜ」
「そういうものなの?」
「そういうもんさ」
桜にその楽しみを分かってもらいたくて、ニコッと笑った。
「兄ちゃん、僕おなかすいた」
「そうだな。じゃあ、今から食べるぞ」
桜の目を見た。
桜は、嬉しそうな表情をして部屋から出た。
「神崎さんと流川さんも一緒に食べるの?」
「そういえば、聞いてないな。声かけてみるか」
燈子の部屋を見た。
俺と春、桜、小梅は、燈子の部屋へ行き、翔はドアをノックした。
「何か用かしら」
神崎は、ドア越しから要件を聞いてきた。
「翔だけど、これから俺と春と桜でカレーライスを食べるんだけど、神崎も一緒に食べないか?」
「あいにく、先に食事を済ませているから、それじゃあ」
燈子は、落ち着いた声で大人が使うような言葉で話し、ドアを開けることなく会話を終わらせた。
また今度一緒に食べようと言ったが返事はなかった。
真宙にも声をかけたところ、先に食事を済ませたとのことで断られたが、真宙はドアを開けて、丁寧な話し方であった。
翔は、どうしても燈子と真宙の態度を比較してしまうが口には出さなかった。
春と桜も、何か言いたそうな顔をしているが、そのことについては話さなかった。
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