第14話 懐かしい記憶
二階は、個人の五部屋以外に一番の部屋の隣にベランダとトイレがあった。
俺と春と桜は個人のの五部屋以外の場所を全て見ると、ホッとひと息ついた。
「これで全ての部屋を見たよな。今日は疲れたから、俺たちも部屋に入ろうか」
「そうだね。ありがとう。翔くん、春くん」
桜は、優しく微笑んだ。
桜の笑顔を見て、桜と同じクラスで同じ家でよかったと心から思った。
春も嬉しそうに微笑んだ。
「小梅は、一階の部屋にいた方がいいかな」
桜は、抱っこしている小梅を見て話した。
「小梅の行きたいところでいいんじゃないか? ゲージの中だと可哀想だしな」
小梅を見つめて、小梅に話しかけるように言った。
「そうだよね。小梅、どこに行きたい?」
桜は、小梅を優しく降ろした。
小梅は、人間の言葉が分かるのか、翔の足元に来て身体を擦り付けた。
「兄ちゃんのところに行きたいんだね」
春は、自分のことのように嬉しそうに言った。
「わかった。小梅、よろしく」
俺は小梅を優しく抱き上げた。
小梅は、嬉しそうにしっぽを振っていた。
「それじゃあ、自分の部屋に入るか」
「うん!」
春は、自分の部屋がどんな風になっているのか気になるのか、自分の部屋をちらちらと見ていた。
「私も、自分の部屋に入るね。今日はありがとう」
桜は、嬉しそうに微笑んだ。
「うん! また明日な」
久しぶりに友達と話せることが嬉しくて笑った。
「うん、また明日」
桜は手を振った。
俺と春、桜は自分の部屋の鍵を開けて中へ入った。
部屋は、六畳の大きさで、壁紙はオレンジの作りであり、机が一台、椅子が一台、ベッドが一台、収納ラックが置いてあった。収納ラックには、翔が着れるくらいの大きさの綺麗な服や下着、パジャマ、タオルなどがいくつか入っていた。
小梅を降ろし、閉まっていたカーテンを開け、窓を開けた。こもっていた空気に新しい空気が入ってくることを感じる。まるで、新しいことが起きる始まりを告げるかのように風が翔の身体を包んだ。
深呼吸をして気持ちを整えた。
すると、トントンとドアを叩く音が聞こえた。
「兄ちゃん、部屋の中入れて」
春の声がドアの向こうから聞こえた。
「分かった。このまま開くのか」
ドアを開けるのに先程の操作が必要なのかとあたふたしていた。
「内側からだと操作しなくても開くよ」
春はドアの向こうから俺に教えた。
春の言うとおりにそのままドアノブをひねりドアを開けた。するとドアが開いた。
「ありがとう。よく分かったな」
「さっき、僕の部屋に出る時にやったら気づいた」
「そうなんだ。それよりどうしたんだ?」
「兄ちゃんの部屋が気になって見にきた。兄ちゃんの部屋はオレンジ色なんだね」
春は、興味津々に翔の部屋を見た。
「春の部屋は違うのか?」
「うん! 僕の部屋は青と白が混ざったような部屋だよ」
「そうなんだ。後で春の部屋見せて」
「うん! 兄ちゃん、もうすぐで夜になるよ。夕ごはんは何食べる?」
「そういえば、朝からまだ何も食べていなかったな。リビングには、食器や鍋とかは揃っているのに食料が一つもないや」
「兄ちゃん、また一緒に料理しようよ!」
「そうだな。よし! これから買い物に行こう」
「うん! そういえば、スーパーってどこにあるんだろう?」
「調べてみる」
手慣れた手つきで画面を表示して調べた。
「出てきた! 歩いて一〇分だって」
画面を見ながら歩き、春は周りを見ながら翔の横に並んで歩いた。
「ここだ」
止まった先には、以前翔と春と母親とよく行っていたスーパーがあった。
「チェーン店だから、ここにあってもおかしくないよな。それにしても懐かしいな」
春と母親と三人で買い物をしていたあの頃を思い出して少し泣きそうになった。
「兄ちゃん。僕ね、兄ちゃんとまた一緒に買い物に行けて嬉しい」
春は翔の手を握って、目をうるうるさせて泣きそうな目をして笑った。
「今までは施設に残っていた非常食や畑に咲いてる野菜や果物を食べていたからな。施設があったから食事に困らずに生活できたよな。俺も、また買い物に行けて嬉しい。さあ、何を作ろうかな」
涙がこぼれないようにまっすぐに前を向いて笑った。
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