第13話 ルームメイト
「あなたたちもここなのね、よろしく」
二階へ上がってきたのは神崎燈子だった。
燈子は、俺たちをチラッと見ると興味がなさそうに言い、手慣れた手つきで四番の部屋の鍵を開けて中へ入っていた。
「よろしくって返事する前に行っちゃったね」
桜は、明るく言いつつ困った顔をした。
「兄ちゃんの知ってる人? なんだか、ちょっと話しづらい人だね。僕、まだ挨拶してないや」
春も困った顔をしていた。
「ああ、同じクラスの神崎燈子っていうんだ。クールだよな。人見知りなだけかもしれないな。次会ったら挨拶しような」
燈子の部屋のドアを見つめた。
すると、また玄関のドアが開く音がした。
春と桜は、ゆっくりと二階から誰が上がってくるのか覗いた。
誰が来るのか、仲良くできそうなのかと考えながら二階へ上がってくるのを待った。
「こんばんは。僕もここの家で過ごすことになったからよろしく」
二階へ上がってきたのは流川真宙だった。真宙は落ち着いた態度で話しかけてきた。
「俺は七瀬翔、隣にいるのは弟の春だ」
春は、俺の後ろから少しだけ顔を出して真宙を見た。
「よろしく」
真宙は、優しい目をして微笑んだ。
「帆士桜です。流川くん、よろしくね」
桜は、緊張して笑顔がぎこちなかった。
「素敵な名前だね」
真宙は、桜の目を見て微笑んだ。
「ありがとう。私の名前、おばあちゃんが付けてくれたんだ」
桜は照れて目線を下にした。
「俺たちの他に同じクラスの神崎も一緒だ。先に四番の部屋に入ってるけど呼ぼうか?」
桜と真宙の会話が途切れたタイミングを見て、話を変えた。
「大丈夫。さっき、玄関の前で会ったから」
「そうなんだ。じゃあ、挨拶ができていないのは俺たちだけか。真宙の部屋は五番の部屋か?」
「画面には五番って書いてあったけど、ここの部屋の番号のことだったんだ。教えてくれてありがとう。じゃあ、また」
真宙は、軽く手を振ってスムーズに画面操作をして鍵を開けて五番の部屋へ入って行った。
「他のクラスメイトたちも、神崎さんや流川くんみたいに落ち着いているのかな?」
「あの二人は別格だろ。神崎は自己紹介が印象に残るくらいだったし、真宙は知識が豊富そうだしな」
「だよね。この数年間あまり人と話したことがなかったからとても緊張したな」
「俺もこの数年間は、春としか話したことがなかったから緊張した」
自分の気持ちを言うと安心した。
桜は、翔も緊張していたということを知って安心したのか翔に微笑んだ。
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