第11話 新しい生活

 画面が示した家に着くと、誰かが住んでいたであろう家があった。綺麗で大きな二階建てで、子どもだけで住むには勿体ない程に文句のない贅沢な家があった。

「僕たち、本当にここに住むんだよね?」

 春はジッと家を見つめた。春の手は震えていた。

「そうだな。大丈夫、何があっても兄ちゃんが守るから。とりあえず中に入ってみるか。学校が用意しているから中は大丈夫だと思うけど、俺より前には行くなよ」

 春の手を強く握り、警戒しながら先頭に立ち、ドアを開けようとした。

「あれ? 鍵がかかっていて開かないぞ」


「翔くん、もしかしてこれも画面を出して鍵を開けるんじゃないかな」

 桜は、画面を表示して鍵が開かないか調べ始めた。

「あっ、そういえば早乙女先生がそんなことを言ってた気がする」

画面を表示して鍵を開けるアイコンを見つけた。

「これか。本当に何でもITでするようになったんだな」

 そう言って、ドアを開ける操作をした。

 ガチャ、と鍵が開いた音が鳴った。

 春は驚いて、翔の服に掴まった。

 桜は春を安心させるように春の手をぎゅっと握った。


「開けるぞ」

 深呼吸をしてからドアを静かに開けた。

 開けると、下駄箱に砂が入っていたり、壁には画鋲で空いた穴があった。どうやら、過去に誰かが住んでいた跡がしっかりとあった。

「誰かがここに住んでいたんだね。ここに住んでいた人は死んじゃったのかな」

 悲しそうに春が呟いた。

「誰かが住んでいたのは間違いないな。ここに住んでいた人がどうしているか分からないけど。でも、大丈夫だ。俺たちがタイムマシンに乗ってみんなを助けるからな」

「うん! 兄ちゃんは頼もしいな」

「だろ!」

 春に褒められて嬉しそうな表情でグッドポーズをしてカッコつけた。

「さあ、中へ入るぞ」

 部屋の電気をつけて、玄関にあった杖を持って先に奥へと進んだ。

 春と桜はお互いに不安そうな顔をして翔に続いた。

 奥へ進み、ドアを開け、近くにあったスイッチを押して電気をつけると、そこには広いリビングとダイニングが一体となった部屋があった。

「広い! キッチンとイスとテーブルもある!!」

 春は桜の手を離し、翔より先に部屋に入った。先ほどまで怖がっていたことを忘れたのか、嬉しそうに部屋中を見ていた。

 そこには、大きなテーブルとイスが五脚、テレビが一台あった。

「春!! 俺より先に入るな」

 声を荒げて、春の近くに周囲を警戒した。

「ごめん、兄ちゃん」

 春は驚いて、沈んだ表情をした。

「何かあったらどうするんだ。次は気を付けるんだぞ」

「うん。分かった」

「約束だぞ」

 春の頭を撫で、春に何事もなくて安心した。

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