041 マルチタスク・マジック
ふぅ〜、けぷ。
カランコロンと転がる細い骨と、さらにその奥に積もる骨の山を見つつ私は仰向けに倒れる。
ボーンイーターを倒してからしばらく。その肉の美味さに魅せられた私は一心不乱にボーンイーターを食べ続け、そしてついに先程完食した。
軟骨にへばりついてたスジばった肉も含めてしっかり食べた。
試しに骨もかじってみたが、流石に硬いし味もしなかったので食べるのはやめておいた。
骨までバリボリいってるハイエナさんは凄かった。
……それにしても、これだけ食べて腹七分目ってところか…。
私の身体どうなってんの、これ?
数日に分けて少しずつ食べる、とかならまだ分かるが、私は一心不乱に食べ続け一気に完食した。
それで腹七分目くらいって…。
お菓子か。小腹を埋めるために適当につまんだお菓子かよ。
う〜ん、でも食べた分体力はMAXになってるけど……。
本当にどうなってるんだろう、私の体。魔物だからかなぁ。
……なんか、なんでも魔物だからって言って片付けるのは良くない気がしてきた。
誰か私のお腹にミニ・ブラックホールでも入れたか。
ドラ○も〜〜ん!!
……ふぅ。
まぁ、とりあえずいいや。
なんでこれだけ食べられるかは分からないけど、食べられるならそれに越したことはないだろうし。
『条件を満たしました。スキル〈飽食Lv.1〉を取得しました』
うぉ!…飽食?
食べまくったからかな。
噂をすればなんとやらですか。
『飽食。
余計に食べた分だけ体力の最大値が増加する。
レベルが高いほど、増加上限が増える』
お、おぉ~。おぉ?
ってことはつまり?
『《体力:724/724{+100}》』
おぉ!!体力が100増えてる!!
レベルが高いほど増加上限が増えるって言ってたし、100ぴったり増えてるってことはレベル×100ずつ上限が上がっていくのかな。
良いスキルだなオイ!体力は体動かしたら減ってくし、あって困るもんじゃない!
…っていうか、これまでも結構食べてたと思うんだけど、今更入手なんだなぁ。
いや、これまでの積み重ねがあったからこその入手だ。
きっとそうだ。
これでまた使えるスキルが一つ増えた。
これを上げていけば、体力がマックスになっても食べて損じゃないし、ありがたい。
………と、そういえば、スキルの使える使えないで思い出したけど、未だに唯一使い方が全く分からないスキルがあるんだよなぁ。
手に入れたはいいものの、どうしても使えなかったスキル。
今は余裕があるし、せっかくだからこのタイミングで改めて使い方を模索してみるか。
で、その使えないスキルというのが、これ。
〈並列思考Lv.3〉
レベルアップの恩恵で今はレベル3になってるが、ぶっちゃけ手に入れてから一度も使ってない。
というか使えてない。
このスキル、並列思考とか言うくせに全然並列に思考させてくれない。
発動はしてみるのだが、同時に二つのことを考えようとしても中々できない。発動してる感じがしない。
本来、私はそこまでマルチタスクが得意じゃない。
結構シングルタスク寄りだと思う。新しいこと考えてたらさっきまで考えてたこと忘れるし。
私はこれまでの探索や魔物との戦いの中で何度も、同時に色々なことを考えたり動いたりしているように見えたかもしれないが、あれは全て"思考加速"のスキルのおかげだ。
思考加速で速くなった思考の中で、色々考えて動いてたから、あたかも同時に色々やってるみたいな、いわゆるマルチタスクのような動きができていた。
あのスキルがなければ私の動きはもっとぐずぐずでぐだぐだだったろう。
ちなみに記憶力がいいのは記憶のスキルのおかげ。
だから最初、このスキルを取得したときは、私もついに圧倒的マルチタスクウーマンになってしまうのかと舞い上がった。
だって並列思考って名前だし。まさかこの名前で発動しても並列に思考できないとは思わないでしょ。
レベルが足らないから使えない…わけがないよね。
レベル1とか2じゃ使えないスキルなんて想像つかないし。なんのためのレベルよそれ。
じゃあ私のレベルが足りないか。
もっとあり得ない。それだったら多分そもそも取得できてないと思う。
う~ん、この辺のことは全部もう一回考えてるんだよなぁ。
やっぱり名前に騙されてるだけでそもそもの使い方が間違ってるとか、そういうことなのかなぁ。
そういうことな気がする。
流石に、この名前で使えないってことはないと思うし。
というわけで、改めて並列思考をおさらいしてみます。
『並列思考。
同時に複数の思考が行える』
行えてないっつの。
ここはあれだな。考えを柔らかくしよう。
行き詰ったときは思考を柔らかくするのが大事だってどのラノベの強いキャラクターも似たようなこと言ってた。
同時に思考できる……私はてっきり、Aについて考えながらBのことも正確に考えられる、みたいなものかと思ってたけど、多分それは違う。
だってできてなかったし。
となると考えられるのは、えーっと…?
あ、体を正確に動かしながら頭でちゃんと考えられるとか。
……それさっき言ってたABの話と同じじゃね…?
まぁいいや。
とりあえずやってみよう。
私はひとまず立ち上がり、体の動きに集中できなさそうな難しいことを考えて出す。
難しいことか…なんだろう。
高校数学とか思い出してみるか。
どういうこと勉強してたっけなぁ…えーっと。
……あれ?え?あれだけ勉強してたのになんも思い出せない……数学に1,2,3とA,Bがあったことくらいしか思い出せない…。
一年しか通わずに引きこもったせいだぁ!!
ヤバい…私ヤバいかこれ…?
えーと…確か最初とかは……いん…あ、そう因数分解!やってたやってた!
改めて高校数学について考えてみると、高一までは人並み以上に勉強していたはずなのに一欠片もその時の知識が出てこないことに焦り出す。
が、それはそれとしてちょうどよく頭を使えそうなので、考えることは続けつつ体も動かしてみる。
このあまり広くない拠点内で飛んだり跳ねたりしてみる。
高校数学を思い出しながら。
結果。
私は宙返りが間に合わず、天井に頭をぶつけて墜落した。
ぐべぁ!!
くぅ〜、いてぇ…。
痛覚耐性のおかげで特段痛いわけじゃないけどなんとなく痛いって言っちゃう…。
というか、こりゃだめだ…並列に思考できてる感じしないなぁ。
うん、この案はナシだな。
まぁこれくらいなら思考加速使えば一応成り立たせられるし、並列思考のスキルでできなくてもそこまで問題は無い。
今までも思考加速で色々考えながら戦ってたしね。
じゃあ次に試すのは〜……魔法か。
思考加速や魔力操作のスキルでなんだかんだと誤魔化してるが、実は私は未だに二つ以上の魔法を同時に発動できない。
"ほぼ"同時に使うことは出来るが、それはつまるところ、一つの魔法を発動したあと、思考加速と全力の魔力操作で即座に二つ目の魔法も発動しているだけ。
それも、
前に思考加速を発動した時は、思考を二つ行うイメージだったけど……今回は魔法の発動を補助するイメージで。
魔力操作に並列思考のスキルを組み合わせる感覚でやってみる。
とりあえず、
目を閉じ、スキルを発動してイメージを構築する。
魔力を練り上げ、体外に放出し、留める。
それを燃料として、空気が燃え上がるイメージ。
それを、二つ。
ボボン!
おっ!?
おぉっ!!?
……おぉぉ〜!!!
っしゃぁぁああ!!できたぁぁぁ〜!!!
火が二つ着火されるような音に目を開けると、そこには、二つの
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補足。
{}は左の数値に含まれずプラスされています。
()とは逆のものですね。
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