027 …おや!?ヴァルプスのようすが…!
地面に寝そべっていたひんやりとして硬い感覚も、暑くも寒くもない気温も、全身を蝕む疲労感と痛みも。
そのすべてが白く塗りつぶされて、やがて消えた。
私の意識は、何もない真っ白な場所にいた。
『〈名前:なし/種族:ヴァルプス〉の〈種族:フレアヴァルプス〉への進化が開始されました』
『魔力の変質を感知。システムによる補助が一時的に放棄されます』
何もない、何も感じられない真っ白な場所で、ただ声だけが聞こえる。
アナウンス…天の声、さん?
そういえば、呼び方決めてないなぁ。毎回適当に言ってた気がする。
『身体組成の変質を確認』
『
『
『容量の拡張を確認』
おぉ、凄い。なんかそれっぽい。
っていうか、システム?放棄?なにそれ気になる。
『
『進化に伴ったスキルの魔力還元を確認』
『還元終了を確認』
『スキルの再形成および再取得が開始されます』
お、おぉ?おぉぉ~?
な、なんか気持ち悪い。なんというか、一瞬言いようのない不快感で血の気が引いたと思ったら、今度は力が溢れてくるような感じ。
何も感じないのに不快感を感じるというのもアレだが、感情的になんかね。
『スキルの再取得の完了を確認』
『
『進化に必要な全行程の完了を確認』
お??
『各種ステータスの上昇を確認』
『各種スキルの取得を確認』
『〈名前:なし/種族:ヴァルプス〉の〈種族:フレアヴァルプス〉への進化の完了を確認。システムによる補助を再開します』
だからそのシステムってなによ。
進化するときだけ放棄って何を補助してるのさ。
その時だった。
真っ白な場所の中で、唐突にグンと引っ張られるような感覚を感じる。
今までに感じたことのない不可思議な感覚に戸惑いつつ、なんとなく進化の完了って言ってたし意識戻るのかな、と察していると、案の定少しずつ体の感覚が戻ってきた。
十数秒も待つと、体の感覚は違和感がない程度には元通りになった。
目を開ける。うん。しっかり周りも見える。
それにしても、進化するときは意識が飛ぶとは。
最初に言ってほしかったなぁ。今は大丈夫だったけど、今後は気を付けないと。
すぐに終わったけど、今の間に襲われるかもしれなかったし。
危ない危ない。
……さて。
それはそうとして、進化か。
どんな感じになっちゃったのか『条件を満たしました。進化前余剰経験値を確認しました』
あ、あれ?
『余剰分を再計算中』
あ、まだ進化終わってなかった?
いや、進化前余剰経験値って言ってたし、あれ?どゆこと?
『計算終了』
『条件を満たしました。〈フレアヴァルプスLv.1〉が〈フレアヴァルプスLv.2〉になりました』
え、レベルアップ??
あ、え?あ、余剰ってもしかしてそういうこと?
『条件を満たしました。各種ステータスが上昇しました』
『条件を満たしました。スキル〈記憶Lv.4〉が〈記憶Lv.5〉になりました』
『条件を満たしました。スキル〈鑑定Lv.4〉が〈鑑定Lv.5〉になりました』
『条件を満たしました。スキル〈魔力循環Lv.2〉が〈魔力循環Lv.3〉になりました』
『条件を満たしました。スキル〈魔鎧Lv.2〉が〈魔鎧Lv.3〉になりました』
おぉ~。つまりあれか、アラネアを殺しまくったときの経験値量が余ってたから進化してすぐにレベルアップと、そういうことか。
いいね、これはありがたい。
システムの補助ってそういうこと?いや、流石にピンポイントすぎるか。
その後、私のレベルアップはさらに何度か続き、最終的に私はレベル3まで上がった。
そしてその結果、スキル〈鑑定〉が、なんと一気に
ムフ、ムフ、ムフフフフ。
前足で自らの
進化したあと、私の体の傷は全て完治していた。切断された両足も生えてきていた。
それと同時に見た目も変わり、大きさ自体は変化がないものの灰色だった毛並みは明るい緋色に変貌していた。
鏡とかはないので体の色で判断したが、もしかしたら顔とかは多少毛の色が違うかもしれない。
犬とか猫も顔だけ色が違うのいるし。
キツネはどうか知らないが。
まぁ、顔に関しては水辺でも見つけない限りは今後も見えることはないと思うので、気にしなくてもいいだろう。
そういえばその水辺のことで思い出したのだが、この体、もしかしなくても水を飲む必要はないのだろうか。流れ着いた川岸の空間から出て以来水を飲んでいないわけだが、特にふらついたり水分不足みたいな感じはしない。
魔物だから?それか、食べ物から摂取する水分で足りてるのか。
……虫から果たしてどの程度の水分を補給できるのか疑問だが、まぁ問題なさそうなら問題ないのかな。
どうにも人間だった時の感覚で動いてしまいそうになるが、今の私はキツネで、しかも魔物だ。
人間基準どころか、前世の動物に対する知識を基準に考えることすらズレているのかもしれない。
さて。
まぁそれはそうとして、先ほども言った通り鑑定がレベル6になった。
レベル6だ。レベル6。
一気にレベルが三つ上がった。
…三つだったけ?進化前に使ったときもレベルが上がってたっぽかったし、となると二つか。
まぁその辺りは今はどうでもいい。
問題は、レベル6となった鑑定の性能がいかほどか、という点だ。
せめて、自分のステータスの情報は何項目か増えていてほしいところだ。
……いざ。
鑑定!!
『《フレアヴァルプス Lv.3
ステータス
名前:なし
魔力:310/310(+103)
体力:220/220
基礎攻撃力:74
基礎魔法力:87(+29)
基礎防御力:65
基礎抵抗力:49
基礎敏捷力:512
スキル
〈魔力感知Lv.5〉〈魔力操作Lv.6〉〈視覚強化Lv.4〉〈嗅覚強化Lv.6〉〈暗視Lv.5〉〈気配抑制Lv.4〉〈気配察知Lv.5〉〈記憶Lv.5〉〈鑑定Lv.6〉〈威圧Lv.4〉〈思考加速Lv.6〉〈魔力循環Lv.3〉〈魔闘気Lv.4〉〈魔鎧Lv.3〉〈魂思考〉〈魂記憶〉〈第六感Lv.5〉〈自動回復Lv.6〉〈体力回復Lv.6〉〈尖牙Lv.7〉〈尖爪Lv.7〉〈火魔法Lv.4〉〈風魔法Lv.2〉〈土魔法Lv.2〉〈火耐性Lv.6〉〈毒耐性Lv.4〉〈痛覚耐性Lv.6〉〈恐怖耐性Lv.3〉〈虫殺し〉〈アラネア殺し〉〈渡り者〉》』
おぉ?
おぉぉぉ??
おぉぉぉぉぉぉ!!!
すげぇ!!すげぇよこいつぁ!!
全部ッ!!全部見えるじゃねぇかよぉ!!
私が、みたいな~、と思ってたもの全部見えちゃうじゃねぇかよぉ!!
すげ~!
ゲームっぽい!スキル多い!!
…でもアルカディア・オンラインっぽさは微塵もない!!
なんだ基礎攻撃力って。あっちはATKだったぞ。
魔法力なんてなかったし、もしこれが魔法攻撃力を指してるならどのみちATKだったぞ。
っていうか基礎敏捷力たっか!頭一つ抜けてるどころじゃないな!!他四つのステータス全部足しても足りないじゃん!
…このかっこの数字を足せば…いや足りないか。っていうかこのかっこって左の数字にプラスってことなのかな。それとも左の数字に含まれてる?
良く分からん。
まぁいいや。
ステータスにアルカディア・オンラインっぽさがないことに関しても、これは以前からも薄々感づいてたことだし、問題はない。
それよりもスキルだよスキル!!
多分これ私が持ってるスキル全部だよね!?スキルの途中までしか見れないようになってるとかはちょっと良く分からないし、多分スキル全部だよね??
やっと…やっとレベルアップの時に聞こえる声だけで自分のスキルとそのレベルを把握して必死に覚える生活から解放される…!!
……ふむふむ。
私が思ってたよりも多いなぁ。意外と把握できてなかったスキルがある。
でもアルカディア・オンラインで見たことのあるスキルはない、か。元々ありそうな感じはしなかったけど。
まぁそもそも、アルカディア・オンラインのスキルって"能力"っていうより"技術"って感じだったしなぁ。耐性とか、
……あ、いや、RESの中でさらに細かく分かれてたか。その合計値だったっけか。
それでも結局は数値だったしなぁ。
まぁ、その辺はいいや。
魔物とか場所の話ならまだしも、スキルが同じだからなんだって感じだしね。
あとは~、私が覚えてるよりもかなりスキルのレベル上がってるなぁ。
思考加速とか魔闘気とか火耐性とか、こんなにレベル高かったっけ。
まぁ、スキルのレベルが上がって損になることはないだろう。
スキルのレベルの上限は良く分からないが、私が進化したのがレベル10だったのを鑑みるに、スキルもレベル10までいけばカンスト、あるいは進化するのだろうか。
まぁその辺りは今後見ていけばいいか。
ところで。
ここまでステータスやスキルを見てきたわけだが、その中で私は、一つの疑問が浮かんだ。
……う~ん…あれ?
うん、やっぱりそうだなぁ。
私、フレアヴァルプスに進化したよな?うん、そうだよな。
でもこうしてスキルとか見ると……見た目以外の
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