第7話

「誕生日おめでとうじゃ!オンリー!」


「テンション高いですね。師匠。」


「当たり前じゃ!お主の誕生日じゃぞ!それと二級試験も合格と祝い事が重なっているんじゃ!!」


「テンションも重ねなくて良いでしょう。」


 決闘から数ヶ月経ちオンリーも6歳になった。

 決闘の結果を高く評価されたオンリーは男としては快挙である6歳での二級試験を合格という大事もあったが、オンリーとしては当たり前の結果であった。

 サトゥルヌスも落ちるなんて一切考えていなかったので、試験を受理した瞬間から合格祝いのプレゼントを用意していた。


「まぁ、良い。あ奴らもこんなめでたい日なのじゃから。仕事を切り上げて帰って来ても罰は当たらぬじゃろう。」


「いや、ほぼ世界中の結界のメンテナンスをしに行っているんですから。途中で帰って来たら世界中から大バッシングですよ。」


 土聖派は結界を得意とする派閥である為、世界中の都市の結界の殆どは土聖派のシスターによって維持されていた。

 年々結界の技術も上がっている為、本部のシスターを指導員としてこの数年に一度派遣しているのである。

 全ての都市の教会が土聖派があるわけではない為、土聖派の教会がない都市は他の都市から派遣してもらうのが常識だが、それをサボる都市や金がないなら問題にはならないが、脱税・横領のために派遣を偽っている都市もあり、この派遣はそんなクズを炙り出すものでもあった。

 因みに土聖派は土壌改善やレンガなど土や砂などを原料にしている建材を作っている為、土聖派は都市建築には欠かせない存在だった。

 その他の派閥もそれぞれが特色ある生産物も作っている為、教会は昔から都市機能を握っているのである。

 そんな教会のスキャンダルは記者は大好物である。

 弟分の誕生日なので帰りますなんて尾鰭を付けまくって大炎上させる記事を考えるなんて容易なことだった。


「あのマスゴミ連中か、昔からウザイ連中じゃ。ワシも何回取り上げられては炎上したか忘れるほどじゃ。」


 サトゥルヌスの事だから半分は自業自得な記事なんだろうとオンリーは冷めた目で師匠は見ていた。

 そんな空気を変えようとサトゥルヌスはオンリーに誕生日プレゼントを渡す事にした。


「おほん!そんな事よりお主にプレゼントがある。喜んでくれるとワシは嬉しい。」


「師匠の選んだもので私が不満に思った事はないので安心してください。」


 長生きしているサトゥルヌスはこれまで誕生日プレゼントなど様々なお祝いで多種多様な者達にプレゼントを贈ってきた経験がある為、サトゥルヌスが選んだものは大半がその人の欲しいものをバチ当てしていた。たまに、師匠の趣味で的外れなネタプレゼントをするが、いつも自信満々に渡してくる師匠にしては珍しく喜んでくれるかソワソワしているのを不思議に思いながら師匠でも緊張することもあるんだなぁと呑気に考えてオンリーはどんな物でも喜びますよと暗に伝えた。


「ほら、入って来なさい。」


「・・・うん?」


 外にいる人に呼びかけるサトゥルヌスを見てオンリーはそんな大きいものを渡してくるのかな?と思っていたが、入って来たのは自分より歳上だが、10代前半の男の子が聖騎士の格好をしているだけで手にはプレゼントらしきものはない事にオンリーは不思議に思い首を傾げた。

 そんなオンリーの仕草が可愛かったのか男の子は顔を赤くして照れているのが見えた。

 

「今年のプレゼントはこれじゃ!」


「・・・どれですか?彼は何も持っていませんが?」


「いえ、わたしめがプレゼントでございます。」


「は?」


 パンパカパーンと効感音がなりそうなテンションで男の子を見せるように手を広げるサトゥルヌスを見て、男の子が何も持たずに膝をついて頭を垂れる姿しかない事に男の子が緊張でプレゼントを出して忘れたのかと内心納得して指摘した所、オンリーの予想外の回答がプレゼント本人から返ってきて稀にしか見れないオンリーのポカン顔を晒す事になった。


「いやいやいやいや。私、奴隷といりませんよ。」


「そうじゃないのじゃ。此奴の名はヒュッロ・キン、聖騎士見習いじゃ。今日からオンリーの付き人に任命したのじゃ。あぁ、安心するのじゃ。お主程じゃないが、此奴も男ながら中々の才能じゃ。」


 サトゥルヌスは前々からオンリーに付き人を付けようと思っていたが、原則、付き人制度は二級以上の者が使えるものである為、付けたくても付けれなかったのだ。

 それが今回、めでたくオンリーも二級になった為、厳選していた付き人を付けることができたのだ。

 ヒュッロ・キンは聖騎士の中でも男ながら頭角を現しだした優秀株であり、付き人兼オンリーの親友になってくれたらと、実力が高い女の聖騎士ではなく男の聖騎士を厳選していたのはその為だった。

 ヒュッロは真面目で気が効く同僚からも、上司からも評価が高い人間である。

 コミュ障のオンリーに適した人材だとサトゥルヌスは判断した。


「・・・分かりました。貴方を私の聖騎士になる事を許可します。」


「ありがたき幸せ。誠心誠意貴方の盾となり、剣となり、貴方をお守りすることを此処に誓います。」


「うむ、喜んでくれて良かったのじゃ。あ、これは二級合格のプレゼントじゃ。誕生日プレゼントはこれじゃ。」


 サトゥルヌスはそう言うとポケットにしまっていた箱を取り出すとオンリーに手渡しした。

 その中を見たオンリーは困惑しながらお返ししようとしていたが、サトゥルヌスはそれを許さず、無理矢理オンリーの懐にしまった。


「お主がまだ納得しないだろうが、ワシらはオンリーの力を認めておる。だから、これをお主に任せる。」


「これは・・・教会の内部調査ですか?」


「あぁ、二級になったお主の初めてのお仕事じゃ。それを見事勤めることが出来たとお主が納得した時、それを付けるのじゃ。ふふ、お主の胸にそれが付いて帰ってくる事をワシは確信しておる。」


 サトゥルヌスはオンリーがこれを受け取らない事を分かっていたので、自分から納得して受け取れるように初めて仕事を与えたのだ。

 これを完遂した時、オンリーは初めて自身の力を思い知ると理解しているサトゥルヌスはルンルン気分でオンリーの自室から出て行った。

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