↓第42話 すべて整いました

 時間が経ち、夕方になった。

 ここはカミールの城。テラスに出た迷子は灰色の空を眺める。

 ――ヴゥゥ……。ヴゥゥ……。

 端末が振動した。才城家の使いの者からだ。


「――もしもし?」


『迷子様。吸血鬼対策で依頼を受けた品ですが、カミール様の城にお届けすればよろしいので?』


「あ、完成したんですね。ではお願いします」


『ヘリで向かいますので、到着したらまたご連絡いたします』


 二日前にウェルモンドの家を訪れたとき、カミールに脅かされて迷子が注文した謎の品。

 もう使うことはないかもしれないが、せっかくなので届けてもらうことにした。

 通話を終えると、カミールがやってくる。


「ここにおったか」


「あ、カミらん」


「おい、ほんとうに吸血鬼の正体がわかったんか?」


「はい。あとはゆららんからの情報を待つだけです」


「大丈夫なんじゃろな? 言われたとおりみんなに連絡したぞ」


「ありがとうございます。『11人』のみなさまには、直接聞いてもらったほうがいいと思いまして」


「我の聞き間違いか? 頼まれたのは『8人』じゃぞ?」


 カミールは指折り数える。

 迷子、うらら、カミール、ネーグル、アルヴァ、ソル、アンヘル、ウェルモンド。

 言われたのはこのメンバーで、ゆららは後から来るそうなので数に入らない。


「まさか農場のベベを呼ぶ気か? 小川の向こうの」


「いいえ、ちがいます」


「ほかに誰がいる? 赤髪は大学に帰ったんじゃろ? ビリーは死んでしもうたし……」


「残りの3人についてはいずれ来ます。おそらくわたしの予想が正しければ――」


 そう言いながら、カタルシス帳に目を通していたとき、端末が振動する。

 ゆららからだ。


「――もしもし?」


『お待たせぇ、ビンゴよぉ。メイちゃんの予想は当たったわぁ』


「そうですか。ありがとうございます!」


 通話を切る迷子。

 カミールは「どういうことじゃ?」と、不思議そうな顔をしていた。


「準備が整いました」


 そして迷子はカタルシス帳を閉じると、


「今夜、解決編でっす!」

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