↓第17話 -って、ダイナミックコミュ障か

 捜査2日目のお昼時。

 眠たい目を擦りながら、げっそりした様子で迷子は城の正門に立った。


「ね、眠い……です」


「シャキっとせいアホ毛! 捜査はこれからじゃぞ!」


「だ……だれのせいだと、思ってるんですか……」


「フフン、我は夜の眷属! これしきのことでへばる器ではないわ!」


 中二病ポーズをキメるカミール。

 うららとゆららは、気の毒そうな視線を迷子に向けた。


「んでカミっち、今日はあの大工に会うんだよな?」


「乗り物は手配するぅ?」


「ああ、その必要はないぞ」


 メイド二人にそう告げると、カミールは人差し指を上に向けた。


「なぜならもう来とるからな」


 それと同時、背後からほとばしる殺気。

 それに逸早く反応し、メイド二人が飛来した物体をクナイで弾く。


 ――杭。


 床には30センチほどの『銀の杭』が刺さっていた。


「…………」


 トリガー・ウェルモンド。

 彼は太陽を背にして、正門の上から見下ろしていた――


☆       ☆       ☆


 突然の登場に迷子は面食らう。

 万が一を考慮して、うららとゆららは戦闘態勢をとった。

 ――が、すぐさまカミールが、


「こらーっ! やめんかダイナミックコミュ障ッ!」


 声を張り上げてウェルモンドを一喝する。

 迷子たちが戸惑いの視線を向けていると、


「仕事じゃ」


「え?」


「城の修繕じゃよ。言ったじゃろ、仕事を頼んどるって」


 カミールは上を向いて「お~い、下りてこ~い!」と、叫んだ。

 それを聞いたウェルモンドは、壁を軽々と伝い、ジャンプして地面に降り立つ。


「…………」


「まったく、黙っとらんでちゃんと言えい!」


 カミールにバシバシ背中を叩かれて、沈黙していたウェルモンドは口を開く。


「話は聞いている。すまない、少々試させてもらった」


「用件はわかっとるなウェルモンド。事件についての情報提供、加えて4年前の墓荒らしの件を、このアホ毛に話すんじゃ」


 再び背中を叩かれるウェルモンド。

 彼は考えるように沈黙を挟むと、


「……変に邪推されても厄介だしな」


 そう言って棺桶みたいなケースを背負い直す。そして停めていた車のほうへ静かに歩き出した。


「こっちだ」


 どうやら場所を移すようだが、相変わらず訝しい表情はそのままだ。

 視線を交わしたあと、迷子たちは言われるがままに車に乗り込んだ――

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