第15話

「か、隠れて!」


「ちょっ……きゃっ!」




 咄嗟に彼女を隠してしまったのは、身の危険を感じたから。


 多分、尋ねてきたのが他の誰かであったのであれば、そうはしなかったのだろう。


 むしろ、意味不明の美人局に襲撃されているんだと助けを求めていたかもしれない。


 けれど、今回はそういうわけもいかない。


 なぜなら、我が家を尋ねてきたであろう声の主、そいつの正体が十中八九「栗原秋葉」であったからだ。


 あいつは、他の奴らとは訳が違う。


 こちらにどんな事情があったとしても、自宅に女性を連れ込んでいるだんてことがばれたりしたら、一瞬で悪い噂を流されてしまうのは必至だろう。


 サークルどころか、高校の連れにまで噂が波及しかなねない。


 くそ……ただでさえ余裕がない時に……よりによってなんであいつなんだよ……


 そう心の中で舌打ちしながら、急いで謎の美女をクローゼットの中へ無理矢理押し込む。


 前門の虎、後門の龍とはまさにこれのことだろう。



「岳斗〜?」


「よ、よぉ、秋葉」


「……居るんなら返事ぐらいしなさいよ」





 間一髪で隠蔽に間に合い、冷や汗を流しながらクローゼットを抑えこみ、秋葉と言葉を交わす。


 というか、何勝手に入ってきてんだコイツは。


 もし俺がちょっとあれな本とか映像を見てたらどうする気なんだ。


 オカンか、お前は。

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