第16話

「あーすまん、寝てて気づかなかったわ、ははは……で、どうした?」


「どうしたって……ど、どうせあんたが適当な生活してるんだろうなって思って、様子見にきてあげたんでしょうが!」


「えぇ……頼んでないのにキレんなよ……」


「う、うるさい!」




 一刻も早く要件を済ませ秋葉を帰らせたい俺とは裏腹に、秋葉は初っ端からフルスロットルで、いつものご機嫌ナナメな口撃を繰り出してくる。


 まずい、長くなるぞ……と経験上悟った俺は、華麗な自己保身及び秋葉に対するご機嫌取りを執り行うこととする。




「じょ、冗談冗談。心配して来てくれたのか? ありがとな。やっぱり秋葉は優しいなぁ……そういうとか好きだぞ? でもとりあえず何とかやってっから大丈夫だ。あ、あと前髪数ミリ切った?いいじゃん、かわいいじゃん」


「好……かわ……そ、そう」


「そ、そうそう。俺は大丈夫だから。秋葉の貴重な時間を奪うのも申し訳ないし、今日のところはお引き取り……」


「…………」


「……え、何してんの?」


「ご飯」


「は?」


「だから、見て分からない? ご飯作ってあげようとしてんの。バカで貧乏でおまけに足まで折れてる甲斐性なし大学生にこんな幸福が舞い降りるのは奇跡よ。ありがたく思いなさい」


「え、頼んでな……」


「うるさい! 黙って座ってなさい!」


「えぇ……」

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