第12話

 聞きにくい家庭の事情に覚悟を決めて足を踏み入れると、彼女はむくれて否定した。


 いやいや。


 だって、そんなん信じられるわけがない。


 宗教以外に彼女の言い分に正当性をつける事など、三流大学生の俺には難しかった。




「はぁ、これやっちゃうと疲れるから嫌なんだけど、仕方ないか。」


「え、何をするんですか?」


「今から見せてあげるよ。私が雪女だって言う証拠を」


「証拠!? や、やめてくださいよ礼拝とか……近所迷惑ですから……」


「黙ってて!」




 俺の言葉に少しオコな彼女は、ゆっくりと深呼吸をしながら、目を瞑った。


 集中している彼女を息を呑みながら見守る事数秒。


 突如目を開けた彼女は、ふふんと得意気な表情を見せて、俺に右手の掌を差し出した。




「はい」


「え、なんですか」


「手、触ってみて」


「はぁ……うわっ! 冷た!」


「えへへ」




 俺が驚く顔を見て、彼女は嬉しそうに笑った。


 彼女の手は、まるで氷を触っているように冷たかった。


 その事実は、紛れもなく彼女が雪女であることを証明……




「うわぁ……まじか……」


「へへ、これで信じてくれた?」


「はい……あの、お姉さん、あれですよね? 冷え性ですよね?」


「えへへ、だからさっきからそうだって…ん?」


「ごめんなさい、気づかず。部屋、暖房つけますね?」


「ち、ちがーう! 冷え性とかじゃないー!」

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