第9話

 確かに、そんな会話を彼女と交わしたような気もする。


 しかし、責任ってなんだ?  

 

 それが、家主の居ぬ間に家に上がり込む理由になるのか?




「はぁ……確かにそんな約束もしたような気がしますが……あれですか、お礼を要求しに来たみたいな」


「お礼っていうか、種族のしきたりみたいな? とにかく、今日から私もこの家に住まわせてもらうから、よろしくね」


「はい? え、どういう事ですか? 全く意味が分からないですが……」


「ごめん、混乱する気持ちもわかるけど、もう決まったことなんだよ。しきたりを破ると、君にも私にもどんな災いが起きるか……」


「わ、災い?」


「雪女の一族の決まりとして、雪女に命を助けられた男の人は、命を助けた雪女と番になって、子供を作らなきゃいけない決まりなんだよ。ごめん、よく説明しなかった私も悪いけど、あの時は君も死にかけで余裕がなくて……悪いけど、諦めて」


「雪女? 番? 子供? さっきから何を言ってるんですか?」


「…………あ、そっか。ごめん。一番重要なことを言ってなかったね。実は私……」




 続く彼女の一言に、背筋が凍った。


 それはまるで、雪女に睨まれたようだった。




「雪女なんだ」


「……は?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る