第4話
「つまり、無意識のうちにロッジまで這いつくばってきたってこと?」
「……そうかもしれん……もしくは、誰かが助けてくれたか……」
「「「プッハハハッハ! そんな訳ねぇだろ! お前、狐にでも化かされたんじゃないのか?」」」
「う、うっせーな……もういいだろこの話。命は助かったんだし」
笑いの種にされるので、この件について話すのに嫌気がさして来ていた。
でも、周りは面白おかしくしようとするし……困ったもんである。
「ねぇ、本当に大丈夫なの?」
俺をからかう声の中から一つだけ、不機嫌そうな、不満そうな声音が聞こえてきた。
モンブランみたいな栗色の長い髪、クリクリとした瞳(栗だけに)でこちらを睨むのは、同じサークルの同期の栗原秋葉(栗だけに)だ。
高校の頃から同じ学校に通う腐れ縁のこいつは、俺の事が気に入らないのか、昔から何かと突っかかってくる。
まるで、口うるさい姉のようなやつだ。
「まぁ、命は助かったしな……」
「てか、遭難するとかバカなんじゃないの? 子供じゃあるまいし」
「ぐっ…いや、確かにその通りかもしれんが、仕方なかったんだよ。まさかあんなに雪山が過酷だとは思わなくて…」
「それがバカだって言ってんの!」
「……ほんますまん……でも、あんな危険な山道をコース認定してる運営側にも問題が……」
「言い訳しない!」
「な、なんだよ! そこまで言わなくてもいいじゃんかよ!」
売り言葉に買い言葉。
なんとか大人な対応に努めようとするも、秋葉の圧の強い言葉に反応してしまい、あっという間にいつもの口論に発展してしまう。
「おいおい、岳斗怪我してんだから、夫婦喧嘩はそこまでにしとけって」
「「夫婦じゃない!」」
見かねたサークルの誰かが言ったその一言で、秋葉と俺の口論は一旦終了。
ほんと、こいつは口が悪い。
まぁ、根は真面目で優しいヤツなのは長い付き合いなので知っているつもりなのだが……
それでも、こいつはとは何故か張り合ってしまう。
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