第3話

「「「ギャハハハハ! 岳斗! なんだよその足!」」」


「うっせーな……」



 昼下がりの学食。


 単独での雪山遭難から奇跡の生還を果たした俺は、サークル内でちょっとした伝説となっていた。


 しかし、武勇伝の代償は大きい。


 全治3ヶ月。


 ボッキリと折れた左足は、ガッチガチにギブスに固定され、今もなお痛々しく宙にぶら下がっている。




「しっかし不思議だよな。岳斗、お前ロッジの反対側の崖から落ちていったよな? で、あの吹雪の中、足まで折れて、どうやって自力でロッシまで移動したんだよ」


「……それが、わかんねぇんだよ俺にも」


「「「は?」」」




 サークルの面々が、きょとんとした表情になる。


 まぁ、無理もないだろう。


 自分でも、訳の分からない事を口にしているのは理解している。


 でも、本当にあの状況からどうやって生還したのか、俺にも分からないのだ。


 分からないというか、覚えていない。


 崖から落ちて、足が折れて、気を失って。


 そうして、再び目を覚ました時には、病院の

 天井を眺めていた。


 遭難してから帰還するまでの記憶が、まるで靄が掛かったように思い出せない。


 その代わり、長い夢を見ていたような気がする。


 白く、小さく、美しい女に、雪の中を引きずり回されるような、そんな夢を……

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