第1話

 死ぬって、一体どんな感覚なんだろう。


 幼い頃、大好きだったばあちゃんの葬式に参列している時に、そんな事を考えた。


 ばあちゃんみたいに家族や友人に囲まれて、惜しまれながら死ぬことができるのか。


 それとも、ひとりで孤独に朽ち果てて行くのか。


 それが、小さい頃は気になって仕方がなかった。


 多分、怖かったんだと思う。


 肉親の死に触れて、死を身近に感じて、想像してしまったんだと思う。


 でも、最近はあまり考えなくなった。


 大人になったからだろう。


 自分が死ぬ時の事なんて、その時になってみないと分からない。


 だったら、今を全力で生きようと、そう思いながら日々の生活を送っている。


 そう、大切なのは今なんだ。


 ;今、この瞬間を精一杯。;


 それが、大人になった俺のモットーだった。




 そうして時を経て、大学生になった俺が、今現在、何をしているのかと言うと……


 絶賛死にかけ中。


 タイムリーに、死の淵に立たされていた。



 大学のサークル仲間と来た、冬の雪山。


 スノーボードでコースを外し、崖から落ちてしまった俺。


 不幸を重ねるように、突如吹雪き出した天候。




 役満と言っていい程揃った、死へのお膳立て。


 必須に立ち上がろうとしても、足が全く動かない。


 おそらく、どちらか片方の足の骨が折れている。


 感覚が無く痛みも感じないが、素人が見てわかる程異常な方向に折れ曲がっている……もしかしたら両足とも逝ってしまっているかもしれない。


 ……どうやら、俺の「死」は孤独なものになってしまうようだ。


 子供の頃、心の片隅のどこかでは、自分もばあちゃんのように、誰かに囲まれて惜しまれて、暖かい「死」を迎えるのだと、そう信じてやまなかった。


 けれど、現実は違うみたいで。


 状況を受け入れて、理解して、絶望して、その場に蹲る。


 そうして次第に体温が下がり、遠のいていく意識。


 もうダメか……


 そう、諦めかけたその時だった。




「ねぇ…大丈夫?」

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