第46話 あっ、地下!?




 驚きを隠せていないピノーに、アイテムボックスから一つのアイテムを取り出して見せた。


「それはいったい…?」


「猫耳カチューシャだ。友人のドワーフとの共同開発の末、形になった代物だ」


 黒い猫耳をモチーフにした猫耳。デザイン等の原案は俺が出し、バルクハムの技術力で形にしてもらった物だ。


 一応俺も細工スキルを持っているので、作れない事もないが、やはりスキルレベルの高いバルクハムにお願いして正解だったな。


 とても完成度の高い出来栄えだ。


「なるほど、それを付ける事で拙者の猫耳を目立たなくさせるのですね!」


「そうなるな」


「しかし、ヨル殿一人増えたところで皆の目は変わらない気もしますが…」


「ふっふっふっ、もう手は打ってある」


 アイテムボックスからさらに色違いの猫耳カチューシャを取り出す。察しの良い人はこれでもうわかったかもしれないな。


「そう、すでに量産可能。友人の店での販売、そしてコスケとウイセに協力してもらって宣伝もしてもらっている」


「という事は…!」


「俺の見立てじゃあ、すでに猫耳は流行の一歩手前だ」


 アバターが可愛いコスケとウイセに、直接付けてもらうことで高い宣伝効果をもたらし、商品として買ってもらう事で猫耳が広がるとともに収入も入る。


 さらにドワーフであるバルクハムが手掛けたという事で、品質面にも信頼性を持たせる事に成功した完璧な商売…、じゃなくてピノーを目立たせないための策。


「頭が良すぎるなぁ!!」


「流石ヨル殿!!」


 ピノーからの拍手ももらえた事だし、大満足だ。


 ここからは予測になるが、バルクハムが作成した事実ってのが少し違った意味合いでRSFに変化をもたらすかもしれない。


 と言うのも、アプデによって追加されたエルフとドワーフなのだが、エルフは精霊スキルによって重宝される中、ドワーフはその影に隠れてしまっている。


 しかし、猫耳カチューシャ等の自作アイテムの登場により、種族として技術の高いドワーフは、これから生産職として高い地位に上り詰めるに違いない。


 最初は猫耳カチューシャから派生し、あらゆるケモ耳カチューシャが登場。ファッショナブルなアイテムや、実用的なアイテム等で盛り上がっていくと考えられる。


「最初から鍛治スキルを持ってるアドバンテージはこうやって生かされるんだろうな…」


 そんな事はさておき、これでピノーが人型で街を行動できるようになった。


「次はサリアに向かう」


「サリアですか?」


「ああ、あそこには教会があるからな」


 この世界での最大宗教である聖教会。その教会はイルルーンにもあるらしいが、サリアという街が今回はちょうど良い。


「よし、時間が無いからな。早速行くぞ」





******************





「ここが聖教会ですか」


「そうだ。流石は最大宗教、デカいな」


 ピノーの方を見ると、何故か上ではなく下を見ている。


 初見は必ず高さに圧倒されると思ったが、ケット・シーのピノーにとってはそこら辺の街並みと大差ないのかもしれない。


 猫耳を付けた俺と、人型のピノーはサリアに転移すると、早速教会に向かったのだが、俺の策略は成功しており、まだ数は少ないが、猫耳カチューシャを付けているプレイヤーを見かける事が出来た。


 これから流行っていくに期待する。


 ピノーを見たプレイヤーやNPCが黄色い歓声をあげる中、俺を見た奴らは嘲笑というか哀れみというか、なんともムカつく反応をしてきやがった。


「まあ男の猫耳は見たくないよな!!」


「拙者も男ですよ?」


「……男と美少年は違うの。ほら入るぞ」


 聖教会サリア支部。本部はどこにあるのと言う質問には分からないとだけ答えておく。


 教会の高さは目算100メートル超え。サクラダファミリアをイメージして作られたのかなとも見れる。


 中には誰でも入る事ができ、一定時間祈る事で、なんと無料で食事や薬草を配ってくれる。そのため、極貧時代はちゃんとお世話になった。


 ただ今回の目当てはソレじゃない。いやまあソレも欲しいけどね?


「さて、今回の目的は聖女に接触する事だ」


「聖女?」


「サリアの教会には聖女がいる。滅多に表舞台には出て来ないが、世界の言葉を聞き、それを伝える役目を持つって話だ」


 この説明も、アプデ前は単なる宗教的なお話だと思っていたが、世界の言葉とやらが精霊の登場によって信憑性が出てきた。


 精霊と妖精、そしてピノーの持つ聖印は繋がりがある。精霊と繋がっていると考えられる聖女にも、聖なる力があっても不思議じゃない。


ピノー妖精の持つ聖印は人が扱うには難しいが、聖女の持つ聖なる力なら、俺にも扱えるかもしれない」


「なるほど。確かに妖精由来の力は人には扱えないですが、人由来の力なら可能性はありますね!」


 目的の共有は出来たが、どうやって達成するかだ。聖女がどこにいるかは公にはなっていない。


「ま、目星は付いてるんだけどね。ピノー、この教会で一番強く聖なる力を感じられる場所はあるか?」


 俺の予想的に一番上の階。こういった高い建物は上に上がって行くのが定番だもんな。


「はい。教会に着いた瞬間から感じ取れる程のオーラ、地下から感じられます」


 ……え、あっ、地下!?

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