その星は自由に空を流れる






「うーん、フクロウくんいないな〜」


 砂浜にて、波の音を聞きながらつい呟いてしまった。


 アップデート後に、不道の森林経由でイルルーンに到達する際、もしかしたらフクロウくんがいるかもと辺りを探していたが、結局出会えず着いてしまった。


 道中に出会したエリアボス、グラントレントとの戦闘は、相性差もあって簡単に倒してしてしまったからこそ、強くフクロウくんについて考えてしまうのかもしれない…。


「【波流火】と【零氷】やっぱり強すぎるよね…」


 単純にRSFを楽しんでいたら、クエストの報酬やら何やらで、いつの間にか手に入っていた二本の剣。


 白を基調としたレイピア、零氷は氷属性を持ち、黒の下地に赤い装飾が付けられた片刃の剣である波流火は、炎属性をそれぞれ持っている。


 波流火の炎属性は、ただの動く大きな木であったグラントレントを、あっという間に燃やし尽くした。


 それはそれは一瞬だった。


「なんか可哀想だったもん…」


 日差しに照らされた素肌を撫でつつ、またしても独り言。


 この世界では日焼けと言う概念が無いっぽいので、何の不安もなく砂浜でくつろげる。


 今着ている白いビキニ風の水着は、配信仲間の女性プレイヤーにオススメされて買ったものだ。


 配信には際どくて映せないかもだけど、可愛いから気に入っている。


「…フクロウくんに見せたらどんな反応してくれるのかな?」


 現実でのものを参考にキャラクリしたのだが、結構スタイルには自信がある。


 確かに少しだけ胸は盛ったけど…、本当に少しだけだから!


「…そろそろ戻ろうかな」


 フクロウくんがまた配信に映り込んだおかげで、妖精種の存在が一気に広まった。各地で妖精を探すプレイヤーが溢れかえっている事が、その証拠だろう。


 最初こそ、私も妖精を探しはしたが、ヒントもなく探し出せるほど運が無い事を思い出し、速攻で諦めた。


「クランの皆んなは妖精さんと仲良くなれたのかな」


 立ち上がり、砂浜を歩いて行く。


 少し遠くには、シードラとイルルーンが見えた。


 私が今いるのは、イルルーンの観光名所である、ハクアビーチから泳いで少しの無人島だ。


 プレイヤーで溢れるハクアビーチと違い、ここは静かでまったり過ごせる。


 もしかしたら、泳いでいけばシードラにも辿り着けるのかもしれない。


 船がないなら泳げば良いじゃない、ってどっかのアントワネットさんも言ってた気がするし。


「いつか試してみよっ」


 イルルーンに向かって泳ごうとした時、ぱちゃぱちゃと波を叩く音が聞こえた気がした。


 ここまで泳いで来た他のプレイヤーだろうか。


 音の聞こえた方に向かってみると、どうやらプレイヤーではないらしい。


「ちぴちぴ、ちゃぱちゃぱ…!」


「……」


「ちゃぱちゃ…」


 そこには、海が珍しいのか、翼で波を叩いてはしゃぐ、小さな竜の姿があった。


「……君名前は?」


「ラーグ…」


「そっか、よろしくねっ!」


 何だかまた面白い事が起こりそうだよ、フクロウくん…!










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