第21試愛 真緒Side ラウンド3


 手を握る隣の優を見る。わたしの方が背が高いので見下ろすような感じになり、水着の胸元が良く見えた。しかし水着がぴったりと覆っている為、隙間が無く生乳は拝めなかったが。残念。


 でも。優の水着姿を見れただけでも良かったわ。胸上と腰にフリルが付いた、白いワンピースタイプの水着。それが今、優が着ている水着だ。やっぱりそっちを選んだわね。もう一つの方は流石に無理だったようね。


 無理も無いわ。だってもう一つの方は。わたしが選んであげた方は。黒のマイクロビキニなのだから。優の胸では、屈めば敏感な部分がポロリしそうなのだから。

 ちぇっ。優のマイクロビキニ姿。せっかくなら見たかったなぁ?


 大事な所を最低限覆ったマイクロビキニを着て、モジモジしながら恥じらう優が見たかったなぁ。しょうがないので、わたしはイマジナリー優に着せる事にした。


『こんなの見たいなんてッ!? 真緒の変態ッ!! エッチッ!! スケベッ!!』


 デュフッ!! デュフフッ!! おっと。危ない危ない。これ以上は危険が危ないだ。わたしの心臓が持たないもの。しかし。イマジナリー優でこれなら。リアル優が着たらどうなってしまうのかしら? きっと見るなり優を押し倒してしまうわ。

 そしてそのまま、くんずほぐれずしてしまうだろう。


 良かった。今、優が着ていなくて。


 改めてわたしは優の水着姿を眺める。胸上と腰のフリルが優の薄い身体にボリュームを持たせ、それが良い感じに体型を隠していた。だけどすらりと伸びる手足が、優の身体の細さを如実に表し、背の小ささも相まって高校生には見えなかった。

 中学生。いや、小学生と言っても分からないかも知れない。


 わたしはそんな優が好きだった。優の小さな体をわたしの大きな体で、滅茶苦茶にする優越感と背徳感。それに支配欲。それらが刺激され、仄暗く甘美な快感が押し寄せるのだ。


 最高で最低だった。でもそれで良い。だってわたしは魔王だから。悪の権化だから。優の為ならどこまでだって堕ちれるのだから。


 だから優。あなたもわたしの元に早く堕ちてよ。まだ。堕ちてくれないのかしら? 

 早く堕ちてわたしに告白しなさいよ。わたしはずっと待っているんだから。そうだ。わたしは自分から優に告白する勇気は無い。


 あんなに初めては自分から奪いたいなんて言っておきながら。肝心の告白では自分から出来ないなんて。本当にわたしって。卑怯で臆病な、それでいて傲慢で強欲な。

 最低最悪の魔王だわ。


「真緒っ! 最初はあそこで遊ぼうよっ!」


 でも。優のこの笑顔を見たら。そんなのどうでも良くなった。あぁ、わたしは優が好きなんだと。好きになって良かったと。そう思えたから。


「あそこって……子供が遊ぶ所じゃないかしら?」


 そう。優が遊ぼうと指した場所は。いろんなフルーツのオブジェがあるトロピカルなエリアだった。小学生ぐらいの子供たちがキャッキャッと遊んでいる場所だ。


「良いんだよっ! だって私達、まだ子供なんだからっ!」

「……そうだったわね」

「ほらっ! いこっ!」

「ちょっとっ! 急に走り出さないでよっ!」

「――そこ。危ないので走らないで下さい」


 ほら。係員に注意されたじゃないの。優はしゅんと肩を落とし、トボトボ歩きになった。ふふっ。落ち込んでいる優も可愛いわね。そんな優をわたしはもっと揶揄いたくなった。


「ふふっ。怒られちゃったね? 優ちゃん?」

「うるさいうるさいうるさいっ!」


 灼眼の優になっちゃったわね。わたしの二つのメロンパンでも食べるかしら?


「ッ!? そんなのいらないわよッ!? バカッ!!」


 ふふっ。可愛い。顔を真っ赤にして必死になっちゃって。そんな初心な所もまた可愛いけど。

 と。如何やら目的の場所に着いたようね。


「そんな真緒はこれで頭でも冷やしてなさい。……えいっ!」

「ひゃっ!? ちょっといきなり顔に水掛けないで頂戴。目に入るでしょう?」


 優は繋いでいた手を離す。そして足元の水を両手で掬って、わたしの顔にいきなり掛けて来た。思わず可愛い声が出てしまう。


「えいえいっ! 怒った?」

「怒ってないわよ?」


 そう言ってわたしは。足元の水を掬って優の顔に掛けた。


「わっぷっ!? やったな~! とりゃりゃりゃっ!」

「ちょ、ちょっとっ!? 掛け過ぎよっ!?」


 わたしにお尻を向けた優。開いた脚の間から、犬が穴を掘って土を飛ばすみたいに水を連続で飛ばして来る。犬かきならぬ。犬かけだ。連続で振り注ぐ水飛沫にわたしは両腕で顔を防ぐことしか出来ず、防戦一方だった。


 こうなったらわたしもッ!!


 優にお尻を向け、犬かけスタイルになる。わたしのお尻に優が掛けた水がぶつかり、ひやっとした。だがそれもここまでよ。優。覚悟しなさい。


「優っ! 仕返しよっ!!」

「あははっ! そんな攻撃効かないよっ! ホラホラホラッ!!」

「それはどうかしら? オラオラオラオラオラオラァッ!!」


 わたしは両腕のスピードを上げ、さらに激しく水飛沫を飛ばす。


「ねぇママー。アレ、なにしてるの?」

「スタン〇バトルよ。おんなおんなの戦いよ」

「ふーん? お姉ちゃんたち~がんばえ~!」

「「がんばえ~!」」


 ありがとうみんな。お姉さん、悪の怪人に絶対に勝って見せるからね。


「誰が怪人かッ!! どっちかと言えば真緒の方が悪の組織側でしょうがッ!!」

「みんなッ!! 騙されては駄目よッ!! 怪人は嘘を付いているのよッ!!」

「だから誰が怪人じゃぁぁぁぁぁぁッ!!」


 こうしてわたし達は、みんなに見守られながら死闘を繰り広げた。

 勝者は――。


「ハァ……ハァ……ハァ……」

「ハァ……ハァ……ハァ……」


 ――引き分けだった。わたちと優は二人そろって、足を投げ出して地面にお尻を付けていた。当然と言えば当然ね。優とは今まで色んな勝負をして来たけれど。その全てで引き分けなんだから。その数、九九九回。


 だけど。わたしは千回目に挑んだ勝負で優に負けている。この事はまだ優は知らないけど。そう。堕とし愛だ。わたしはこの勝負を仕掛けた時点で既に負けているのだ。だって。わたしは既に優に恋しているのだから。堕ちているのだから。


「ねぇ? 次は何しよっか、真緒?」

「そうね。少し疲れたから、ゆっくりしたいわね」

「そっか。……あ。ならさ、流れるプール行こうよっ! あそこならゆっくりも出来るし、遊ぶ事も出来るから。ね?」

「……分かったわ。そこに行きましょう」





 ***





 流れるプールにやって来たわたし達は、貸し出しの浮き輪を借りて水に入った。

 一瞬、身体が冷たさに驚くが。暫くすれば身体がその冷たさに慣れ、心地良くなってくる。浮き輪を装備して身体を預けた。全身の筋肉の力を抜き、脱力。


 独特の気持ち良さに、頭がボーっとしてくる。その身体を水の流れが勝手に運んでいく。


「うへ~。動いていないのに、動いてるよ~」

「ちょっと真緒。おじさんが出てるよ。うへ~」

「優だって。おじさんじゃないの」

「「……うへ~」」


 二人しておじさん化が進んで、顔が蕩けた。何で。ただ流されているだけなのに。

 こんなにも楽しいんだろう? ずっと流されていたいと思う程に。不思議だ。


 何て。ボーっとしていたら突然頭に水を被った。すわ何事かと辺りを見渡す。

 如何やら、掛かっている橋から水が滝になって流れていたようである。


 わたしと優はずぶ濡れになった顔で見つめ合う。優の前髪がおでこに張り付いていた。


「「……プッ」」


 何故だか笑いが込み上げ、二人して笑い合った。楽しかった。優と一緒ならどんな事でも楽しい。そう思えた。


 そうして流れるプールを一周し終える。


 プールから上がり、浮き輪を返却した。わたしはズレて尻に食い込んだハイレグをパチンと直す。ふと視線を感じて振り返れば。パッと優が慌ててそっぽを向いた。


 ふーん? わたしのお尻を見てたんだ? そんなに慌てて顔を逸らさなくても良いのに。優が見たいなら何時まででも見せてあげるのに。わたしは優に向かってお尻を突き出した。左右に振る。


「ぶりぶり~ぶりぶり~」

「ッ!? ……な、なにしてんのよ……」


 優はわたしのお尻をチラチラと見ながらそう言った。チラチラ見てただろ?


「お? お? おねえさ~んっ! ぶりぶり~ぶりぶり~」

「ちょッ!? ケツ揺らしながらこっちくんなしッ!? ケツだけ星人ッ!!」


 わたしのお尻に優の平手打ちが炸裂。良い音が鳴った。そして平手打ちの衝撃が下腹部を揺らす。思わず変な声が出てしまう。


「おっほっ!」

「ッ!? な、なに変な声出してんのよッ!?」

「? オホ声だけれど?」

「バカッ!? 変態ッ!? エッチッ!!」


 エッチって。それってオホ声の事を知っているって事よね? へぇー? 結構いい趣味してるじゃないの。まぁ、わたしもだけれど。あの下品な声良いわよね。低い声だとなお良い。


「もう知らないッ!!」

「え? ちょっとッ!? 走ったら危ないわよッ!!」


 優はそう言い残しプールサイドを走っていく。当然。


「プールサイドを走ったら危ないですよー!」


 係員からの注意喚起が発せられる。慌てて優は止まり、今度は早歩きで行く。

 て。わたしも追い掛けないと。何で逃げ出したかは分からないけど。優とは離れたくない。そう強く思ったから。


「待ってッ!! 優ッ!!」


 わたしは早歩きで追い掛けた。

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