第10試愛 優Side ラウンド3
私は今、真緒を膝枕しています。優です。真緒が太ももにスリスリして来てくすぐったいです。でも、嫌では無いです。優です。だって真緒の存在が感じられるから。
優です。
何故、私が真緒を膝枕しているか気になったそこのキミ。そう。今この文字を読んでいるそこのキミ。気になっちゃう? 気になっちゃうよねぇ? 仕方ないなぁ。いいでしょうッ! この勇者のお姉さんが教えてあげましょうッ!!
そう。アレはジェットコースターでの出来事です。なんと真緒が乗っている途中で気絶してしまったのです。私は慌てました。ペチペチと頬を叩いて、何とか意識を取り戻させるも。暫くしたら、また気絶してしまうのです。
何度かそれを繰り返していたら。いつの間にかジェットコースターが終わっていました。真緒はぐったりとしていて、脚が小鹿の様にプルプルしています。一人ではとても歩けそうに無かったので、私は肩を貸して何とか外に運び出しました。
近くにあったベンチに真緒を横たえます。しかしそこで真緒は、私に膝枕して欲しいとせがんで来ました。ジェットコースターに誘ってしまった手前。断ることも出来ず。私は真緒に膝を貸しました。
で。この状況が誕生したってワケ。私は真緒の横顔を観察する。その顔はにへらぁとだらしなく緩んでいた。気付けば私の視線は。真緒のうなじに注がれていた。
普段見た事も無かった真緒のうなじ。ただ、白い首と黒い髪の境目でしか無い筈なのに。不思議と視線が釘付けになってしまう。それに。妙にその。何と言うか。
……正直、エロかった。何で私は真緒に興奮しているのだろうか? 胸がこうも高鳴るのだろうか? 真緒は
これは恋では無い筈だ。だって私と真緒は友達である前に。勇者と魔王。つまりは。敵同士。犬猿の仲。ライバル。そして。唯一の天敵なのだから。そんな相手に恋をするはずが無い。だったら。この感情は。この思いは。この胸の高鳴りは。一体。
何なんだと言うのだ。クソッ! 前にもこんな風に悩んでいたよね私? その時は一応、友情って事で解決したけど。でも、結局はこの感情の正体は全く掴めていないのよね。
……はぁー。とにかく。今はあーだこーだ考えていても仕方がない。せっかく遊園地に来たのだ。楽しまないと損でしょ? 何時楽しむの? 今でしょ? だよね?
森先生?
「……ゆう~。喉乾いた~」
と。真緒が此方を向いてそんな事を言っていた。何だか赤ちゃんみたいで可愛い。母性本能が擽られた私は、赤ちゃん言葉で返す。
「はいはい。何が飲みたいんでちゅか~? マオマオちゃん?」
「ん~? おっぱい。おっぱいが飲みたいでちゅ」
「は?」
前言撤回。コイツ今なんて言った? 確かに今の真緒は、赤ちゃんみたいって思ったけど。まさかおっぱいを飲みたいなんて言ってくるとは。もしかしなくても、私に喧嘩売ってんの?
「そうでちた。マッマは胸が平らでちたね。優・シャルロッテ・胸平でちたね?」
イラッ!! イライラッ!! イライライラッスンゴレライって何ですのッ!!
思わず一発屋芸人になってしまう程イラついてしまった。
「ねぇ? 喧嘩売ってんの? そうなんでしょ? このッ! デカ乳大魔王ッ!」
「いでででッ!? いらいれすッ!? やめへふららいッ!?」
私は真緒の頬を指で抓った。お陰で真緒の声が歯抜けたような声になる。全く。ホント真緒って。揶揄って来るのが好きだよね。それに何だかんだ言っても。真緒に揶揄われるのは嫌じゃない。寧ろ楽しんでいる自分がいる。
「いでででッ!! いふまへふねっへるのッ!? ほほとれひゃうッ!?」
「あッ!? ごめんごめんッ!? マジでごめんッ!?」
慌てて、抓っていた手を離す。真緒は私の膝枕から頭を起こすと。自身の赤くなった頬を擦った。真緒の頭の感触が。太ももに残滓として残る。もっと膝枕していたかったと。思う自分がいた。
ふふっ。何だかんだ言って。私は真緒の事が好きなのよね。あ。今の好きはライクの方であってラブの方では無いからねッ!? 誤解しないでねッ!?
「……優。ひどいわ」
「ホントにごめんね? お詫びに何でもするから。ね? 許して?」
「ん? 今何でもするって言ったかしら?」
「……あ。いやいやいやッ!? それはあくまで例えであってッ!? ホントに何でもするワケじゃ無いからねッ!?」
「ふーん? じゃあキスは? わたしがキスしたいって言ったら、してくれるのかしら?」
それ……は。真緒とのキスは。……嫌では無い。寧ろしたい。だってキスをすれば。フワフワしてドキドキするから。真緒の存在を、もっと身近で感じられるから。好きだ。でもそれなら。この好きは一体、何の好きなんだろう?
確かめないと。この好きが一体何なのか。だから私はこう言った。
「……うん。真緒がしたいって言うのなら。キス。してあげる」
「え? ……本当に? してくれるの?」
なによ。その期待感と不安感が綯い交ぜになったような顔は。真緒の方からキスしてくれるか聞いて来た癖に。まるで純粋な子供みたいな顔をして。そんなのズルいじゃん。キスしたくなるに決まってんじゃん。反則だよ。ホント。
でも。あの時の様に失敗する訳には行かない。舌を入れるキスはまだ早いから。だから。我慢だ。今はまだ。唇同士が軽く触れあうキスで良い。それが良い。焦る必要は無いのだから。そう。これはあくまで
いや。違うか。今は友達としてここに居る。じゃあ。私が今、真緒にしようとしているキスは。クエストに関係ないサブクエなのか? ホントに? 今しようとしているこのキスは。ホントにクエストに関係ない?
そんな事は無い筈だ。私の居るこの世界は。ゲームでも無ければバーチャルでも無い。
だったら。このキスは。一度でもしてしまえば。取り消すことが出来ない。こう思ったら無性にその事が怖くなった。でも。それ以上に。私は真緒にキスしたいという。本能にも近い衝動が渦巻いている。
私は
魔法の紐じゃないと押さえ付けられない、
私に
でもそれで良い。その衝動に身を委ねてしまえば楽だから。フワフワしてドキドキするから。だから。私はキスをするんだ。真緒とキスをするんだ。真緒と一緒に本能に堕ちるんだ。
あぁ。そうか。真緒に抱いているこの感情は。最初から名前なんて付いていないんだ。でもそれだと。今の私みたいに悩んじゃうから。だから。この感情に名前を付けたんだ。
――それが。恋心。
私は真緒に恋心を抱いている。そっか。私って真緒の事が好きだったんだ。何だ。そんな簡単な事だったんだ。しかし。それを私は認める訳には行かない。だって。それを認めてしまえば。私は負けてしまう。それだけは嫌だ。私は真緒に負けたくない。勇者が魔王に負けちゃいけないのだから。だから。
さぁ――堕とし愛ましょう?
私は真緒に負けて欲しくて。真緒に堕ちて欲しくて。私の事を好きになって欲しくて。私は。
真緒にキスを堕とした。
「……ゆ、う?」
「……これが答え。でも。これ以上はまだ。分かった?」
「……ぅん……」
「……好きだよ。真緒」
「ッ!?!?」
真緒の顔は。これまでにないぐらい。赤く沸騰していた。その顔を、可愛いと私は思う。普段の超然とした真緒を知っているからこそ。尚更に。
「……それで真緒? 飲み物。何が良い? 私が買ってくるからさ?」
「…………なんでも……いいわ」
「そう。なら適当に買ってくるよ」
ベンチから腰を上げ、私は近くの自販機に向かった。
――やばいやばいやばいッ!? どうしようどうしようッ!? す、好きってッ!? 好きって言っちゃったッ!? 私ってば真緒に告白しちゃったッ!?
バカバカバカッ!? 私のバカぁッ!? 何言っちゃってんのッ?! これじゃあ私が負けを認めている様なものじゃないッ!! いやそんな事は無いッ!! 私はまだ負けていないッ!! そうよッ!! 真緒だって私を堕とす為に好きって言ってたじゃないッ!?
だからそうッ!! これは真緒を堕とす為に言ったのであって、私が負けを認めたワケでは断じて無いッ!!
だって私は勇者だから。世界を救う者だから。魔王に負けては絶対にダメなんだ。
まぁ、まぁ? 今日の所はこれで勘弁してあげるわ。でも覚えてなさい。いつか必ず
失敬。ドピューン!
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