少し小さな企業の令嬢と超大企業の御曹司
@syuimee2
少し小さな企業の令嬢と超大企業の御曹司
降りしきる雨の中父はこう言った。
お前には失望した、と。
それから僕は人生を悲観するようになった。
とある学園にて。そこではとある貴公子がいた。
学園ではその美貌と秀才さから今日も女学生の間で噂される。
◯◯様、今回の定期考査では全教科満点だったそうですわ。
まあ!今回もですの。相変わらず格好良さと秀才は健在ですわね。
◯◯様のような方とお付き合いできたらなんて幸せなんでしょうか。
随分高望みするのですわね。あの方と釣り合う女性なんてこの学園にいるのでしょうか。
今日も噂される◯◯御曹司。その恵まれた容姿と才覚、生まれは女学生にとってとても魅力的。
御曹司はこの国の総裁と深く関わり合いがあるという◯◯閣下の子息でありまた本人もめざましい活躍をしている。
そんな御曹司とは対称的に。
見て。またあの子ですわ。なんでこの学園にいるのでしょうか。
本当ですわ。あの子ではこの学園とは釣り合いが取れないでしょうに。
今日も俯いて登校するのは小さい企業の小さき令嬢。
小さい企業の長を務める父が無理を言ってこの学園に入れさせた。
どうせ大企業の令嬢子息との関わり合いを娘である自分に持たせて企業を拡大させようと思っているのだろう。
そう思い、今日も鬱くつとした思いをしながら学園を通う。
その登校での途中。
とある貴公子を見かける。
ああ、あんな御曹司と関わり合いを持つなんてできるのだろうか。
そう思いながら歩いていると車のクラクションが。
危ない。
だが避けられそうにない。
ここで終わりだろうか。
碌な人生ではなかったな。
これまでのことを思い出しつつ目を瞑っていると、衝撃が。
なんてことはなかった。
誰かに抱き止められる感覚。
目を開けるとあの貴公子の顔が。
大丈夫か?
冷たい瞳に見つめられ気づけば頬が赤くなるのを感じる。
おい。
あ!大丈夫ですわ。
助けていただきありがとうございました。
慌てて起きてそういうと御曹司は相変わらず冷たき瞳で、
そうか。
と一言残すと立ち去ってしまう。
視点は変わって御曹司へ。
今日の授業が終わり下校に途中。今日のことをなんとはなしに振り返る。
相変わらずつまらない授業だった。
自分にはこんな悲しい時間を過ごすしかないのか。
そう思っているとそういえば誰かを助けた気がする。
見たことない顔の令嬢だった。
少し綺麗で学園では珍しく成績は上位、だが生まれは恵まれず。
そう記憶している。
そんなことを思い出しながら帰路についた。
それから数日後。
視点は変わって小さき令嬢へ。
相変わらずクラスでは上品に陰口を叩かれ嫌気をさして教室を出た。
手作りの弁当を持って校舎を歩く。
いつもは行かない裏庭へ。
なんとなく向かった先にはあるベンチととある貴公子。
ベンチで横になっている。
相変わらずの冷たい瞳。
心臓がドクンと高鳴る。
そこには以前自分を助けてくれたあの御曹司が。
それを見て咄嗟に動いた。
あ!あの、あの時はありがとうございました!
お辞儀をしつつそう言う。
自分は思ったよりも行動力があるらしい。
君は、、あの時の。
覚えてくれていたんだ。
それがとてつもなく嬉しくなるも恥ずかしくてすぐに立ち去ってしまった。
どうしたんだ、、?
残された御曹司はそう言葉を残す。
それから翌日。
また同じ場所へ小さき令嬢は向かう。
やはりそこには御曹司。
話しかけようとするも一つ気になる事が。
相変わらずの冷たい瞳を見てこう思う。
あの瞳を温かなものにできないだろうか。
時は少し遡って視点は御曹司へ。
あの日、尊敬する父に失望されてから僕は笑わなくなった。
楽しいと言う感情もなくなった。
あの日から全てが無色になったのだ。
時は令嬢が裏庭にて御曹司に話しかけてきた後。
御曹司にて。
久しぶりに実家から呼び出しをくらった。
鬱くつとした思いを抱えながらも帰ると。
どうやら呼び出したのは母らしい。
◯◯ちゃん、久しぶりね。
相変わらずのちゃんづけ。
まともに手紙も寄越さず私とーっても寂しかったのだから。
そう。
僕の母は息子を大事にしてくれる。
あの日父に見放されてからも変わらず自分に愛情を向けて育ててくれた。
母と話して帰り際。父と出くわす。
◯◯か。
そう一言残すとどこかへ立ち去ってしまった。
時は小さき令嬢が2度目にベンチで話そうとした時。
実家に帰った時のことを思い出し鬱くつとした思いになる。
そんな時視線を感じた。
またあの時の令嬢だ。
あの!先日はすみませんでした!
すぐに立ち去ってしまって、、
ああ、別にいい。
あれ、その服の紋様、、
令嬢が目を向けたのは自分の改良した制服。
実は自分は大の服好きでこの制服は自分で一から作り上げたものだ。
とても素敵ですね。
優しげな瞳と共に令嬢はこの服を誉めた。
珍しいな。
この制服は異質でなかなか他の令嬢や子息は目を向けないのに。
そう思った。
それから翌日。
今度はファッションについて話した。
またその翌日。
今度は令嬢の趣味について話した。
その翌日もまたまたその翌日もその令嬢は自分に話しかけてきた。
自分は適当にあしらっているつもりなのだが、
令嬢は変わらず自分に話しかけてきた。
たまらず自分はその令嬢にこう尋ねた。
他の令嬢はなかなか私に話しかけてこないのに、
なんで君は変わらず私に話しかけてくるのだい?
そう尋ねると令嬢はキョトンとした顔で。
え?あの、私があなたと話したい。
ただ、そう思ったからです。
変わったやつだ。
そうかそう言って僕はベンチに横になって目を閉じた。
それから次の日も令嬢は話しかけてきた。
いつしか僕はそれを心地よく思うようになった。
それから令嬢に惹かれるようになり恋人関係になる。
とある日。
どうですか?私が作った弁当のお味は?
ああ、美味いよ。毎日食べたいよ。
え、それって、、、
その時、自分の電話が鳴った。
どうやらこの日々は終わりを迎えたらしい。
総裁が失落し、同時に仲の良い父がその立場を追われるようになったようだ。
おそらく父の立場を前々から狙っていた者たちだろう。
そしてそいつらが息子である自分に牙を向けようとしているらしい。
そのため身を隠すようにとのことだった。
父はその対処に。
母は私と共に。
もしかしたら恋人であるこの小さき令嬢にまで牙が剥かれるかもかもしれない。
このまま何も言わずに立ち去ろう。
悔しくて悔しくて。
だが迷惑を掛けたくなくて。
立ち去ることになった。
視点は小さき令嬢に。
いつもの待ち合わせ場所で待つ。
だがいつまで経ってもあの人は来ない。
仕方なく学園に先に向かうことにした。
結局その日は恋人とは会えなかった。
そしてその翌日も。
おかしいと思い色々と調べてみた。
するとだんだん分かってきた。
どうやら恋人の父とその家族が危なくなってしまったらしい。
ここからは推測ではあるが。
おそらく恋人は自分に迷惑を掛けたくなくて自分から離れた。
そして自分のことに未練を残してほしくなくて、
わざとこんな去り方をしたのではないか。
だがこんな去り方は許し難い。
未練だってある。
私は電話をかけた。
視点は変わって元御曹司へ。
これでよかったのですか?
近くに控える執事からそう言われた。
おそらく恋人についてだろう。
これでいい。
だが一つ瞳から雫が。
自分で決めたことなのに情けないな。
自分の弱さを嘆いていると電話が鳴る。
電話に出るとすぐに言葉を投げかけられる。
私もあなたについて行きます。
この声は、、あの子だ。
いや、それは、、
いえ、ついて行きます。
強くそう言われた。
私もいまそこに向かっています。
いまだ名残惜しさがあり結局私はそれを断ることができなかった。
小さいと思っていた令嬢は、
決して小さくなんてなかった。
少し小さな企業の令嬢と超大企業の御曹司 @syuimee2
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます