Sid.3 深夜に遭遇した豊穣の女神がエロい

 新たな家族となる母娘との生活が始まった。

 血の繋がりは無く、つい先日までは真っ赤な他人だったが。人の縁とは摩訶不思議なものだ。その他人と寝食を共にするだけに留まらず、家族として接して行くことになろうとは。

 親父が再婚しなければ、生涯知ることの無い存在だったのだろう。


 だがな、家族と言うよりは女性を強く意識する。

 ばるんばるんだからな。服の上からでもはっきり分かる、見事な盛り上がりと揺れ具合。

 年頃の男子にとって、あれは凶器だ。

 意識するなと言われても無理がある。動く度に揺れるんだぜ。掴みたい衝動に駆られるっての。

 顔埋めたい。


 引っ越し当日の昼はデリバリーで済ませたが、夜は絢佳さんの手作り料理が振る舞われた。

 これまで専業主婦をしてきたのか、と思いきや「兼業主婦だったから、料理は少し苦手かな」などと謙遜していたようだ。だが、振る舞われた料理は、貧しい食生活をしていた俺にしてみれば、愛情の篭もった見事な晩餐だったのは言うまでもない。

 デリバリーやテイクアウトの素っ気ない食事や、自分で作るひとり飯なんて、ただのエネルギー補給でしか無かった。


 飯が美味い。

 こんな感覚は久しく無かったな。思い返せば七年以上も前に、当たり前と思っていた程度だ。

 それが崩れて以降は、何を食っても美味いとは感じなかったし。

 失って分かるものってあるんだよな。


 ちょっとしんみりしてしまったが、やはり母の愛情は子にとって必須だ。父親では得られないものがあると思う。

 ただの遺伝子提供者でしかないのが父親だ。だが、母親は遺伝子だけに留まらず、血を分けた存在でもある。母体でもって成長して行くのだからな。その差は埋め難いものがあると思うぞ。

 子にとって母親が如何に大切な存在であるか、子を虐待する母親は少しでも理解した方がいい。

 まあ、俺の場合は虐待は無かったし、母親の愛情は感じ取れていた。

 それだけは救いだったな。


 絢佳さんは勿論、他人ではあるが母性もあると思う。あの、ばるんばるんは、まさに母性の塊ではなかろうか。

 吸ってみたいぞ。


 夕食のあとは部屋で暫し勉強し、風呂に入って寝るだけだ。

 我が家には風呂が一階と二階にそれぞれある。一階の風呂の方が広いが、二階は俺専用で使ってきた。

 つい、いつもの癖で二階の風呂を洗って、湯を張ろうと出向いたら絢佳さんが居る。


「お掃除済ませたけど、翔真君はいつも二階のお風呂使ってるの?」


 少し水を被ったのか胸元に張り付くシャツがエロい。ブラが何となく透けて見える気がするし。

 じゃない。


「そうです。一階は親父専用みたいになってるんで」

「じゃあ、私たちは一階のお風呂がいいのかな」


 いやいや、絢佳さん汁を堪能したいから、ぜひ俺より先に入ってエキスを。

 違う。これじゃただの変態じゃねえか。


「遠慮は要らないです。どっちでも好きな方を」

「じゃあ時々使わせてね」

「どうぞどうぞ。俺はあとでもいいんで」

「翔真君が先に入ってね」


 あとでもいいんだが、まだ互いに距離があるからな。この辺は時間を掛けてゆっくり醸成する部分だ。

 と言うことで湯を張り溜まるのを待つ。

 絢佳さんが先に入ってくれると、残り香とかエキスとか。脱衣籠に下着が置いてあって。ブラを頭に被ってみたり、パンツを嗅いでしまったり。

 じゃなくて、それだと俺はまじもんの変態だっての。


 部屋で暫し待っていると湯張りが完了したのだろう。アラームが何となく聞こえる。

 入浴を済ませ寝る支度を整え部屋に戻った。

 今夜は親父と萌えるのだろうか。クソ羨ましい。抱き放題ってか。


 少々悶々としながらベッドに体を預け、暫くののちに寝入ったようだ。


 ばるんばるん。

 よく跳ねる双丘に挟まれ顔面を埋め込み、しっかり重量感と柔らかさを堪能する。

 出そうだ。

 なんて思ったら目が覚めて夢と気付く。


 いい夢だったと思うが、どうせなら最後まで、なんて。

 だがそれだとパンツがな。

 トイレに行きたくなり部屋を出て洗面所に。洗面所の奥にトイレがあるからだ。

 深夜ってことで静かに歩くが、洗面所に明かりが灯っている。親父か?

 入ると衝撃を受けた。


「あ、翔真君。起きてたの?」


 いや、絢佳さん。そうじゃなくて、衣装が最高潮にエロいんですけど。

 それはパジャマではなくネグリジェでもなく、ベビードールとか言う奴では。バスト部分には刺繍があって透け感はないが、ばるんばるんは見事なまでに強調され零れそうだ。ボディ部分は透けていてパンツが見えてるし。

 目を逸らさねば、と思う気持ちとは裏腹に、逸らせず凝視してしまう自分が居る。

 気付いたのか「あ、こんな格好」と言って「ごめんね。刺激が強過ぎたね」とか言ってるし。謝る必要は無いんだが。俺が謝るべきじゃなかろうかと。

 胸元や体を隠すようにしているが、隠しきれない豊穣のボディ。


「トイレ?」

「そうです」

「じゃあ出るね。おやすみなさい」


 少し顔を赤らめ洗面所をあとにする絢佳さんだった。

 ええもん見たと思う。

 あれか、親父と愉しんだあとだったのかもしれん。あの扇情的な姿態を見れば、親父もさぞや股間に力が入ったことだろう。ふにゃった親父より俺の方が絶対に硬いけどな。

 くっそ羨まし過ぎる。

 トイレに入るが、突っ張り過ぎてて用足しがし辛かった。


 部屋に戻り思い返す。

 夢で見た絢佳さんと実物の溢れる量感の違い。ベビードール越しとは言え、普段着では見られない凄まじさを知った。

 興奮して寝れねえじゃねえか。この場合やることは一択だ。

 済めば気分も収まり寝入ることができた。


 翌朝、目覚めると洗面所に行くが、ションベンガキと遭遇。

 絢佳さんと比較すると見事なまでにガキ。女性としての魅力は皆無だが、物凄い形相で睨まれ退散した。

 くそ。あのションベンガキめ。お前専用の洗面所じゃねえっての。

 仕方なく一階の洗面所で顔を洗うことに。


 一階に下りるとすでに絢佳さんがキッチンに居て、朝飯の準備をしているようだ。

 昨日は遅かったのに朝はしっかり起きてくる。自分のすべきことをするのだろう。母として妻として家に来たのだろうから。


「おはようございます」

「あ、おはよう。よく眠れた?」

「まあそれなりに。あ、えっと眠れましたか?」

「お母さん、は、まだ無理よね。しっかり休めたから」


 そうか。親父と致してがっつり発散できたんだろう。

 性生活が満たされた女性は艶っぽい、と思うが、俺に経験はないから確証もない。


 洗面所で顔を洗い出てキッチンを覗くと、絢佳さんが気付いて「朝ご飯、もう少し待っててね」だそうだ。


「洗面所、いつもこっち使うの?」


 ションベンガキが居て追い出された、とは言わない。あんなションベンガキでも絢佳さんの娘だし。表向きは気にしない素振りをしておくが吉。印象悪くする必要はないからな。


「たまたまです」

「そうなの」

「どっちも使うんで」


 一旦部屋に戻り着替えを済ませ、ダイニングに向かうと朝食の準備はできていた。

 ついでにションベンガキと親父も居る。珍しいな。親父は普段、朝飯を家で食うことは無いんだが。その分、早く家を出てしまうし。

 あれか、少しは新婚気分を味わいたいのかもな。

 四人で食事を済ませると、親父はさっさと出勤し俺も登校する。出勤する際に、見たくない光景が一瞬目に入ったが。キスしてやがった。俺もして欲しいぞ。

 残ったションベンガキは中学生だ。徒歩圏内に学校があるだろうから、少し遅いタイミングで家をあとにするのだろう。

 絢佳さんは専業主婦として、家のことをやるようだ。


「いってきます」

「いってらっしゃい」


 絢佳さんに見送られ家をあとにした。


 俺の生活に少し色彩が増した気がする。

 灰色だったのだが、絢佳さんのお陰で華やいだ感じだ。

 まあ、今の俺はただの子どもだから、男として意識されて無いだろうけどな。

 これからだ。

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