第19話 劇的な因縁

 最高傑作?


誰しもが予想していなかったその言葉を聞いて動揺する。


――いや、正確にはかまぼこさんだけは何だか苦い表情を浮かべていた。


「本当だったのですねぇ、あの噂は」


かまぼこさんは呆れたような言い草だった。


「どんな噂を聞かされていたのか知らないが、私は世界の演出家だ!!」


サンザシは両手を大きく広げる。


「――演出家って、い、一体どういうこと何ですかかまぼこさん」


俺は恐らく一番この場で聞くべきであろう質問を投げかけた。


かまぼこさんは後ろにいる俺を一瞥すると、サンザシの方に視線を向けたまま話し出した。


「それは彼がた――」


「それに関しては私が答えよう!」


サンザシがかまぼこさんの言葉を遮り、大声で語りだした。


「キミは何故ダンジョンというモノが突然世界に現れたかわかるかな?」


俺はサンザシに突然指をさされ、狼狽する。


「い、いや。 分からないいです」


正直、一回だけ本気で考えたこともあったが憶測の域をでない。


「やれやれ、その勘に鈍さで役がつとまるのか・・・ 不安ではあるが、まぁいいだろう」


顎を指に乗せ眉根を寄せて思考に耽る様子を一瞬だけ見せた後、サンザシはまた堂々たる一人語りを始めた。


「そこそこの力を持つ神たちは世界丸ごとを管理する仕事を最高神より任せられるのだが、すぐに魔王のような邪悪な存在が現れ世界の質を下げてしまう。 管理している世界の質が低い=その神の質も低いと判断される。 その対策としてここのような最高神から見放され、誰の管轄とも決まっていない場所から人間を持ってきて、強いの能力を与え、魔王を討伐させるというモノが流行ったのだ。 まぁ本来なら管理している神が世界を逐一観察し、微調整を行っていれば滅多に魔王など生まれないのだが、やはりとにかく沢山の量の世界を管理して、魔王が出たら人間に任せるというやり方の方が、質のいい世界を沢山管理していると上位神たちにアピールでき、自身の出世につながるから、そんなメンド―なことはしないのだ。 ――そしてその魔王を討伐させる人間を選ぶために、ダンジョンを使うのだよ。 そこで自身の管理する世界に居る魔物たちを再現してダンジョンに送り込む。 そのダンジョンで良い感じに動けた者をトラックで轢かせて異世界に転生させる、あぁそういえばお前の父親も母親も異世界で活躍しているようだぞ――」


サンザシはそういうと、俺の方に視線を向けた。


「――は? 俺の両親?? 」


「それでだな、私は考えたのだよ。 私がもっと上に行くためには、こんな小銭を稼ぐようなやり方で評価されるわけにはいかんと。 そこで思いついたのは、世界の中で起きる戦いや人間の営みを演出によって劇的にする。 神たちは娯楽に飢えていてな、人間の生死に興味を抱いているのだよ。 その一幕の舞台として私はこの世界を選んだのだ。 ついてはここにあらゆる異世界の魔物たちを送り込むから、君たちにはぜひ戦って世界を救おうとしてほしい――……」


――俺の両親、聞き捨てならない言葉が発せられた。


その後もサンザシは自身の目的について何か重要なことを言っていたような気がするが、全く耳に入らなかった。


「あの!」


俺は気持ちよさそうにしゃべるサンザシの話に強引に割って入った。


「俺の両親は確かにトラックに轢かれて死んでしまいました。 それはあなたがそう仕向けたということなんですか!?」


突然話を中断させられたサンザシは眉間にシワを寄せて、不快感たっぷりの表情を作る。


「私はそんなチンケに人間関わろうとなど思わんよ。 それをしたのはもっと下位の神だろう、ただその二人は異世界でめざましい活躍をしているらしくてな、私の耳にも入って来たのだよ」


そんな、なんてことだ。


両親は神に殺されたのか・・・・。


突然頭を殴られたような衝撃がはしり、クラクラする。


鼓動が早まり、同時になんとも言えない激情が湧き上がってくる。


事故死ではなった・・殺されたのだ、両親は。か、神に。


視線が定まらず、眼球が物凄い速さで左右に行き来して、思考を巡らせる。


――もう一つ聞いておかなければならないことがある。


「――妹は、その事故に巻き込まれた命を落とした妹はどうなったんですか!!!」


「は? 知らんよ。 あの世にでもいるんじゃないか」


テキトウ、あまりにもテキトウな返事だった。




――あの大雨の日、妹を車に乗せ病院から帰る途中。


反対車線を走る大型トラックが突如ハンドルを切り、俺の両親と妹の乗る車へと突っ込んだ。


両親は即死、妹は重傷を負った。


大雨により近くの川が氾濫し、救急車がなかなか現場にたどりつけず、着いた頃には妹は・・・・。


妹は救急隊が到着してほんの数分だけ生きていたらしい、激痛に苦しみながら俺のことを呼んでいたという。


今の話を聞いたところではそれすら、神の仕業ではないかと思えてくる。


――気づけばサンザシは話を終えたようで、仰々しい別れの挨拶を述べてから去っていった。





俺はこいつら(神)と戦わなくてはならない。 そんな気がした。


ダンジョン内に静寂が流れる。


その場にいるこのダンジョンの幹部達、女神、人間、魔女、全員の視線が俺の方へ向けられていた。


「主様、なにかご指示はございますか?」






【あとがき】

7月19日辺りに27話目を更新出来たらと思います。


メインで書いている作品のあいまに思いつきで書き始めましたので、投稿頻度は不定期です。

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