第13話 広がる罠
「俺たち人間はな、どんな相手でも殺しちまうとショックをうけんだよ」
リュウトはどこか勝ち誇ったような、表情を浮かべながら話し始めた。
「特にお前んとこのレイはお人好しそうだからな、人殺しは普通にドン引かれると思うぜ」
――オーラにはリュウトが何を言っているのかいまいちよく分かっていなかった。
嫌いな人間を殺してくれた。
その事実に喜び以外の感情を感じることがあるのだろうか?
「――嘘か」
オーラはリュウトが隙を作るためにそんな嘘を吐いているのだと結論づけた。
「おいおい、待てよ。 俺をここで今殺しちまったら、動画の投稿を停止出来なくなるぜ」
「構わぬ。 投稿するがよい」
(チッ! コイツここまで、話の通じないやつだったのかよ)
リュウトは迎撃の体勢を整える。
「殺す」
オーラが手に力を溜め魔法を放とうとした、その時だった。
オーラの頭の中にとある映像が流れ出す。
自分が世界を滅ぼしているその時の様子。 それがとんでもないスピードで早送りされ、流れていく。
「……やめろ」
オーラは口だけを動かしてそう呟いた。
それでも頭の中の映像は途切れることなく、ついにはこの先、リュウトを殺したあとの未来まで写し始めた。
世界に追われ、逃まわりつつやっと会えたレイから、怯えたような目つきで見られている。
セナやネリエとは明らかに違う……。
「嘘だ、嘘に決まっている! こんなことがあるわけなかろう!」
「――なんだ!?」
リュウトは目の前で、突然頭を抱えながらしゃがみこむオーラに狼狽する。
(やりなさい)
リュウトの頭の中に、声が聞こえる。
「おぉ! 貴方様がなにかして下さったのですね!」
リュウトは剣を抜き、目の前でうずくまっているオーラに向けて振り下ろした。
自分のやったことは正しかったのだろうか?
ここ数日セナはそのことばかりが、頭の中をグルグルと駆け巡って仕方なかった。
案の定SNSにあの投稿をしてから、マスコミに付け回されているため、レイやほかの2人とも距離を置いていた。
そんな折、セナとネリエ、オーラで作っていたグループチャットにオーラからメッセージが送られてくる。
「――? 珍しい」
セナはそう呟き、メッセージを見るとそこには、体中に傷を負ったオーラの写真が添付されていた。
「なに……これ?」
あまりの衝撃にセナは口を抑える。
そして、その画像の後にとある住所を記載するメッセージが飛んできた。
「――ここにいる。 そう伝えたいわけね」
セナはふぅーと息を吐き、考える。
このメッセージを送ってきたのは、誰か。
この写真は本物か……。
色々と考えうる所があるが、ひとつ言えることは――。
「確実に罠ね」
もう一度、送られてきた住所を見ようと携帯に目を落としたタイミングで、ネリエから電話がかかってきた。
「もしもし〜、セナさん」
「オーラよね。 どう思う?」
「罠であることは明白ですねぇ〜……そして」
急にネリエの声のトーンが一段と低くなり、いつもの優しい口調とは違うシリアスさが漂う話し方に変わる。
「この住所、恐らくダンジョンのあるところです」
「――ダンジョン? ならアンタがオーラの様子を探って――」
「それは出来ません。 このダンジョンは私の管轄外です。 ここは別の神が管理しているものになります。それに加えてここには……」
ネリエは何かを言い淀む。
セナは急かすことなく、彼女の次の言葉を無言で待ち続けた。
「――このダンジョンは最近出来たばかりなのですが、ここにいる魔物はあまりに強すぎて、神の間でも問題になっていた所なんです」
「つまり?」
「この写真が本当だとしたら、オーラさんであっても魔物に襲われて殺されてしまう可能性があります」
「――そう・・・・ちょっと一回切るわね」
その話に対し、セナはあくまで冷静に返事を返し、電話を切る。
ネリエはここで終っていいものかと悩んでいたようであったが、いったん一人で考えたかったセナは半ば強引に会話を切り上げた。
セナの頭の中に自分のした事が裏目に出たのではないかという考えがよぎる。
「今はそんなこと考えている場合じゃない!」
セナの額にはじんわりと汗が滲んでいる。
自身の頬をつねり、冷静に考える。
最悪なのは、何も考えなしにダンジョンに向かうこと。
その考えに至ったと同時に、一抹の不安を抱く。
――レイにこのメッセージは送られているのだろうか。
セナはレイに電話をかけるが――でない。
リュウトがメッセージを送ってきたのなら、ほぼ確実にレイにも送っているだろう。
そしてレイはそれを見たら、ダンジョンまで突っ走って行くに違いない。
「今すぐ向かう他ない」
【あとがき】
メインで書いている作品のあいまに思いつきで書き始めましたので、投稿頻度は不定期です。
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