第2話 レーナルズの動画

ピートと自分に少しずつ回復魔法をかけていって、ようやく歩けるくらいまで回復した時に携帯の届いてたメッセージに気が付いた。


SNSでゴン太さんから、ダイレクトメッセージが届いてたのだ。


ゴン太〝ちょっと、配信急に切れたけど大丈夫?〟


そういう旨のメッセージが20件近く届いている。


「ゴン太さん心配性だからな」


俺は何事もなかったと嘘を吐いた。



それからしばらくはダンジョンに行かなかった、というかいけなかった。


攻略済みのダンジョンとはいえ、どんな危険があるかわからない。だからケガをしている人は役所からダンジョン探索の許可が下りないのである。


俺はレーナルズにされたあのことを忘れるかの様に、日常生活を淡々とすごした。


丁度一週間がたったある日、たまたま動画投稿サイトにレーナルズの最新動画が公開されたのを見てしまった。


別にも見る気もなかったが、その動画のサムネイルそしてタイトルが聞いていた話と全く異なっていたので、思わず見てしまっのだ。



動画は最悪だった。タイトルは【底辺配信者に話を聞いてみたらヤバかった】というものでサムネイルには如何にも変人の様に加工された俺が大きく映っていた。


眼には黒い線が入っており、その俺を矢印でさして底辺と書いてあった。


動画の内容は、俺のような同接の少ない配信者の活動を見て小バカにしている感じだ。


俺は『異世界という存在が危険でばかりではないということを伝えたくて、モンスターと心を通じ合わせようとしている』と話たのに、編集によって俺が突然モンスターに話かけはじめたような伝わり方をするように変わっていた。


俺が話かけても反応を示さなかったモンスターとのやりとりしか使われておらず、反応を示してくれたモンスターとのシーンは全部カットされていた。


そして俺だけではなく、他の駆け出しの配信者たちもバカにしたような紹介のされ方をしていた。


それだけではなく、彼らは動画の最後に『この動画の内容は配信者さん達に見せた上で許可をもらっています。 僕たちも最初の頃はいろいろなことに挑戦して、今こうして沢山の方々に見ていただけるようになりました。ですから僕たちは彼らの気持ちも痛いほどわかるんです。 許可をくださった配信者のみなさん、本当にありがとうございました。 僕たちはあなた方を心から応援しています! 』 と嘘で塗り固めた綺麗ごとを述べており、その動画についたコメントでは底辺配信者たちを面白がるものとレーナルズを賛美するもので溢れかえっていた。


その動画の説明欄には紹介した底辺配信者たちのコミュニティに飛べるリンクが貼られていたのだが、俺だけは貼られていなかった。


レーナルズによると俺は匿名希望で取材を受けたということになっているらしい。


俺のところで闇サイトの撮影をしたことが何か要因かもしれないが、とにかく俺にとっては全くプラスのない最悪な動画でしかなかった。




気づくと俺は家から配信を始めていた。


ゴン太〝この時間に配信ってめずらしくない!?〟


「あ、ゴン太さん。相変わらず早いですね。 ちょっとみなさんに会いたくなっちゃって・・・」


ゴン太〝そうなんだ・・・〟


ゴン太さんはレーナルズの動画を見ていなさそうだったので、俺は落ち込んでいることを悟らせないように普通の雑談をした。


――しかし。


ゴン太〝なんか今日、声が暗くない?〟


俺の配信を最初期からみてくれていた彼には、バレてしまったみたいだ。


どうしよう、そのコメント見てから少し考えこんでしまい、一瞬の沈黙が流れる。


「……実はこの前の配信で――」


このまま誤魔化して、話を進めることもできるし。ゴン太さんもこれ以上は深く追求しては来ないだろう。


けれど、彼は俺が隠している何かにわざわざ触れてきたのだ。


きっと彼ならあえて聞かないという選択をできるのにも関わらずだ。


そこまで心配をかけてしまうほど俺は明け透けだったようなのだ。


ならもう隠していることが逆に心配をかけてしまうのではないだろうか。


俺は今までの出来事をゴン太さんに全て話した、あの動画のことも・・・。


ゴン太〝ひどい・・・・〟


「すいません、こんな暗い話をしてしまって。 でも俺はもう大丈夫何で・・・ケガがなおったら・・また、あれ?」


気が付けば俺は涙を流していた。


それも一滴やに二滴ではない、徐々に溢れ出てきたのだ。


「あれ・・・・全然そんな・・泣くつもりなんて、ごめんなさい・・ほんとに、情けないっすよね・・」


最終的には嗚咽がとまらなくなるほど、泣いていた。


俺が泣いている間、ゴン太さんは何もコメントせず静観していてくれた。



やっと落ち着きを取り戻した俺は、かんで真っ赤になった鼻を指先で軽くこすって唾を飲み込み、話始める準備をする。


それを察したのか、静観していたゴン太さんからコメントが来ていた。


ゴン太〝会わない?〟


どういうことだ? これってつまり・・・・。


「リアルで会わないかってことですか?」


心臓が跳ねる。


もちろん会ってみたい、話をしてみたい。 けれど向こうは俺がどんな姿が知っているけれど、俺は全く知らない・・・・。


怖い・・・・でも・・あのゴン太さんがここまで言ってくれているのだから。


大丈夫。


「わかりました! リアルでお会いしましょう」


マジカルOL〝え、なに? なんの話?〟


かまぼこ〝この二人、リアルで会うらしいですよ〟


マジカルOL〝は? 何それ、私も会いたいんだけど〟


かまぼこ〝じゃあみんなでオフ会しますか〟


ゴン太〝え、2人いつからいたの?〟


どうやらリアルで会うという話の部分だけをマジカルOLさんとかまぼこさんに聞かれてしまったらしい。


マジカルOL〝仕事早く終わらせてよかったぁ、こんな大事なイベント乗り遅れるわけにはいかないじゃん〟


どうやらこれはもう断れる雰囲気ではない。


かまぼこ〝まさか私たちが来るならオフ会しないなんて言い出さないよね?〟


――オフ会が決定した。




【あとがき】

メインで書いている作品のあいまに思いつきで書き始めましたので、投稿頻度は不定期です。

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