第2話 『赤ずきん』 作:霧影一族の桃花(つきげ)

 昔あるところに赤ずきんと呼ばれる少女がいました。

 ちゃんとした名前はあったのですが、いつも赤い頭巾を

被っていたので赤ずきんと皆呼んでいました。そんな赤

ずきんはおばあちゃんのお見舞いのために村の外れに出

かけました。村の人は道中で獣に襲われか不安でこっそ

りと赤ずきんの後をつけていました。村の人が想定した

通り、赤ずきんは狼に襲われてしまいました。村の人は

影から飛びかかり、狼はひどく傷つけ、森へ追い返しま

した。村の人は狼を仕留めようと後を追おうとしました

が、赤ずきんに止められてしまいました。赤ずきんは村

の人に感謝を言い、無事おばあちゃんの家まで辿りつき

ました。


「ねぇ、おねえさん、その話ってほんとなの?」

「本当にあったお話だよ。私も聞かされた話だけどね」

「そういえばおねえさんも赤い頭巾、被っているよね?

 なんでなの?」

「お母様によると私は赤ずきんの子孫みたいで、赤い頭

巾がとてもしっくりくるの」

「え〜!そうだったの!?」

「それにね」

「それに?」

「あっ…… ごめん時間が来ちゃった。また今度ね」

「え〜!」

「それじゃぁ、またね」


「ただいま〜買い出ししてきたよ。今日も仲のいい村の

子と話してきたよ。でもその子もやっぱり村のお話を信

じていないみたい。実話なのにね」

 私は彼にそう言いながら赤い頭巾を脱ぐ。彼の返事を

聞きながら手を洗うために洗面所に向かう。私が嬉しそ

うに話しているのに釣られ、聞いている彼も嬉しそう。

手を洗いながら鏡を見ると、頭巾の中で髪が跳ねていた

みたい。手で髪をすいていく。生まれながらに頭の上か

ら生えている耳を避けながら髪を整える。彼は他の人と

違う、ふさふさなこの耳が大好きでよく触ったり撫でた

りする。まぁ、そういう私も…… 。

 洗面所から戻った私は彼を呼び寄せる。彼は勢いよく

私に飛びつき頬ずりをしてくる。私はそんな彼の毛並み

を撫で上げる。彼は幸せそうに目を細める。確かな幸せ

がここにあった。

「これも、血、なのかな?」

 赤ずきんおおかみ の口にキスをした。

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