第23話
「スキル【
先頭の方で乗宮さんが叫んだ。
すると、巨大な防御結界が俺たちを守るように出現した。
巨大ではあるが、初めて彼女と手合わせした時のそれと全く違わない強度の物であった。
恐らくスキルによる影響だろう。
さらに巨大な防御結界は増殖し、五層まで増えた。
「防御は任せて!物理も魔法も弾くから!」
全く、頼もしい限りである。
あの変態結界が五層まで増殖したのだ。
単純計算で防御力が五倍。
彼女のスキルの効果は今のを見る限り防御結界の巨大化、複製を行うのだろう。
さらに彼女のスキルはS級であるため効果はさらにあると予測される。
流石はS級とだけあって効果も範囲も桁違いである。
俺も、欲しい……なんて少しばかり羨ましくなってしまったのは不可抗力であった。
しかし、まあ、安心して防御は任せられるというものである。
「接敵!これより敵の群れに浸透する!」
ブライトネスさんの声が響き、俺たちは
▲▽▲▽
あれから数分ほどが経過した。
作戦会議で敵の物量を警戒した作戦を立てた。そして、実際にこの様な対物稜線を想定した陣形を取ったが、正解だった。
敵は想定と同じか、それ以上の数が居たのだ。
目視で確認できる範囲に1000体以上。どうやら、人間だけでなく魔物ですらも支配しているようだ。
しかし、数が多いのは想定通りだったが、強さと言うのは想像通りではなかった。
「ギャ、ギャ!」
首のない亡者が飛び掛かってくる。
「弱いな。雑魚か」
ブライトネスはそう呟き片手剣で薙ぎ倒した。
剣の一薙ぎで倒せることから分かるように、奴らは想像よりも弱かったのだ。
まあ、雑魚とは言っても、その総てが腐敗魔法を扱い、首の切断面から腐敗を司る触手を飛ばしてくるというなかなかに厄介な存在だ。
一応、乗宮の結界のお陰でそう言った攻撃は全て弾かれ、安全ではある。
現状彼女の結界と、想像よりも弱い敵のお陰でパーティーは被害はゼロだ。
よかった、と安堵するブライトネス。
これならば被害は想定よりもかなり少なくなりそうだ。
ただ、そんな考えとは対照的に、しかし、と彼は苦虫をすり潰したかの様な表情を浮かべる。
「首の断面がどうもグロいですね……」
「確かにグロい。コイツらお互いの頭を食いつぶしてるからこんなギザギザの切断面になっているらしいよ」
結界に向けて魔力を供給しつつ、乗宮は一瞥した。
「グロい、か。彼女を早く解放できたならいいのだが」
そんなこんなで敵に切り込みつつ処理していると、
「グ、ギギャ、ゴギ」
不愉快な関節を蠢かす音を纏いながら、今まで戦っていた雑魚とは比べ物にならないほど大きな首なしの個体が現れた。
コイツは、どうやら群れの長ではなさそうだ。
しかし、強い。
素体はA級の冒険者か?
一目見ただけで相当な魔力を観測した。
「ようやく、骨のありそうなののお出ましですか」
そして付け加える。
「ゴメン!少しだけ雑魚を取りこぼすかもしれません!」
後ろに伝えた。
すると山口は、
「任せろォ!一匹残らずぶっ殺してやらァ!」
と返してきた。
全く、相変わらず元気そうでよかった。
という訳で後ろの心配は無くなったので、片手剣を構えスキルを発動。
「スキル【
瞬間、ブライトネスの体から氷冷の空気が溢れた。
溢れだした冷気をその脚に纏い、地を蹴る。
逆氷柱が蹴った地点から出現し、炎魔法をそこに向けて放つ。
凍てつく空気は膨張し爆ぜる。
爆ぜた空気を利用し、高速でブライトネスはA級を素体としたと思われる亡者に迫る。
腰を捻り、勢いを乗せた右脚の蹴り。
亡者は反応することも出来ず直撃を受けた。
「氷冷脚!」
氷を纏う右脚は、亡者の頭蓋を胴を凍らせ、そのまま衝撃で粉砕した。
致命の一撃を喰らった亡者は膝から崩れ落ち、動かなくなった。
そんな様子を見て呟く。
「弱い……?何か、おかしい?」
今の一連の攻撃から、ブライトネスは違和感を覚えた。
「だね、魔力量は人間だったころと変わんないようだけど、今のを見る限りA級の素体でも人間だったころに比べて大幅に弱体化してるみたい」
「嫌な予感がする」
実際、その通りであった。
A級を素体としたと思われる雑魚亡者はたったの一撃で沈んだのだ。
あの攻撃は消費魔力、威力を最小限としたモノだった。あくまでもジョブ程度と思ってはなったモノだったが、一撃で敵を屠ってしまった。
自分が強すぎる、という可能性もあるが前回の討伐隊が全滅していることを踏まえるとその考えは間違いとなる。あのパーティーにはS級である彼女も混ざっていたのだ。例え今の亡者が100体同時に襲ってきたとしてもなんら問題は無かったはず。
となると……A級を素体とした物とは別にとんでもなく強い個体が居る、という事になる。
「警戒した方が──」
その時、ブライトネスの魔力感知網がこちらにとんでもない魔力量の物体が迫っている事を検知した。
「ニ、ニンゲン、ツヨイノガキタ」
ゾワリ、と背筋を撫でられたかのような感覚に陥る。
反射神経的に己のスキルを全開放した。
生物には決して耐えられない速度で急激に周囲の空気が冷却され、二酸化炭素が個体化し、氷の薔薇が出現した。
氷の薔薇は周囲の亡者を飲み込み、美しく咲く。
総ての生き物はその温度に耐えられず、細胞が凍結し、生命活動を止める筈であった。
事実、多くの雑魚が絶命した。
しかし、一体、首のある個体のみは自身の体ごと氷を割り動いた。
「イ、イタイ」
割れた肉体を腐敗の触手で縫合し、再生。
そんな光景を見てブライトネスは冷や汗を垂らす。
「おかしい、僕のスキルは対象の治癒を阻害するんだぞ?サブ効果なんだけどドラゴンの再生も完全に止められるような代物だ」
「マジで?ってことはアイツは治癒阻害されようとも無理やり回復してるって事?」
「そうなるな」
スキル【
速度減衰、治癒阻害、温度操作、そのいずれも彼の冷気を司るというスキルの効果の影響によるものだ。
当然、S級スキルであるためその効果はA級以下のスキルの効果を凌ぐ。
即ちあの化物はS級スキルに匹敵、ないし凌駕する能力を保有している事になる。
どうやら上から説明された支配という能力からは遥かにかけ離れた能力を持ち合わせているようだ。
なるほど、と納得する。
アイツが前の討伐隊を全滅させたのだろう。
雑魚は雑魚であろうとも、この群れの長であるアイツは別格。
つまりはそういう事だ。
ゴクリ、と唾を飲み込み敵を観察。
と、その時衝撃的な事に気づく。
「お前……!?」
なんと、化物の姿がかつて彼の妻であった彼女の姿と全く同じだったのだ。
所々腐敗して肉が崩れているが間違いなくかつての彼女の姿であった。
「なるほど──」
そこから導き出される結論は一つ。
「──体を乗っ取ったのか」
ヤツは彼女の体を乗ったのだ。
となると取る行動は一つ。
「S級の素体はさぞ便利そうだな!ぶっ殺してやる!」
憤怒のまま地を蹴り、
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あれ?完、結……?
書けば書くほど書かなきゃいけないエピソードが溢れて完結出来ないぞ?
どうしてこうなった?
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