第21話

「とまあ、そんな感じであれやこれやあって結婚したワケ」

 

 しみじみとした顔のアキラことブライトネスさん。


「……すけこまし」


「今の泣ける話聞いて感想がそれ!?」


「弱っている女性に抱き着き耳元で救済の保証?詐欺師の手口じゃないですか」


「……まあ、否定はしない。でもさ、僕にとって彼女を救う方法がそれしかなかったのさ」


「救う、ですか」


 全く、耳ざわりの良い言葉だ。

 しかしながら、彼は何故救ったとか言っておきながら俺に殺せと頼んできたのだろうか。

 

「で、なんで俺にその配偶者を殺せと?」


「今回、僕たちが討伐するボスはどんな奴か知ってるか?」


「勿論知ってますよ。腐敗の悪夢カルナイアですよね?確か、倒した魔物や冒険者を支配する──」


 ん?

 支配?

 ギルドからの報告では腐敗の悪夢カルナイアの能力は対象の自我の剥奪だったよな?

 となると……、


「その通りさ。彼女は腐敗の悪夢カルナイアに殺された」


 俺の考えていることを読んだのかブライトネスさんはそう言った。


「なるほど、それで殺してくれと言うんですね」


「そうそう。前回の腐敗の悪夢カルナイアの討伐隊は壊滅していて、A級で揃えられた討伐隊は当然、エクストラボスに太刀打ちできなかったてのは知ってると思う。で、A級で揃えられているとは言ったもののリーダーとしてS級である彼女は討伐隊に加わった」


「……」


「で、残念な事に……」


 やっぱりそういう事か。

 前回の討伐隊は壊滅している。

 で、そのパーティーに彼の配偶者が参加していたと。

 

 しかし、残念な事に討伐隊は壊滅。

 配偶者の死亡は確実という事か。

 そして、腐敗の悪夢カルナイアに殺されたという事は即ち自我の剥奪、支配を受けるという事になる。

 

「彼女は今も迷宮の奥底で苦しんでいる。はあ、なんでだろうな。神は全てを奪われた人間を、さらに苦しめることが好きなようだ」


 彼は、やるせなさそうな顔をした。


「クソッたれの神め。もしも存在するならば首を絞めてやりたい」


「……」


 ただ黙っている事しかできなかった。

 

「今の話を聞いて、どう思う?」


「どう思うって……いや、違いますね」


 知ってしまった。

 知ってしまったのだ。

 知らなければ、楽しくいられた。


「約束します。ブライトネスさんの彼女を殺す手伝いを」


「ありがとう……」


 深々と頭を下げる。

 

 任せろ!なんて無責任には言えないが、手伝う事ぐらいならできる。

 まあ、人助けの一環くらいでいいだろう。


「あ、やべ、また気持ち悪く……オエエエッ!」


「はあ……飲み過ぎです!」


 そう言いながら回復魔法を施す。

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