第18話
日本国の法律では賭け麻雀が違法となっていることは有名だろう。
そして、麻雀が違法なら当然ポーカーも違法だろう、ってことで基本的にやってはいけないという事になっている。
しかしながら世の中には必ず例外がある様に、賭けポーカーの禁止を示す賭博罪にも例外が存在する。
それは、ダンジョン内では通用しない、と言う点だ。
まあ、例外と言ってもダンジョン自体が日本国の範囲じゃないって理由なのだが。
法律は監視するものあってこそ存在するものなのであって、ダンジョンと言う決して行政の目が届かない深淵においては法律など通用しない。
という訳で目が届かないなら仕方がないからいっそのこと認めてしまおう、との事で認可されている。
……実際は死刑囚が死刑執行前に何を食べても良い、という理論と同じく、冒険者は常に死との隣り合わせなのだからそのくらいは認めてやっても良いという考えのもとの認可なのだが。
因みに、じゃあ薬はどうなの?って話になるが、結論から言うと合法だ。
軍人の様に痛み止めに使う例から恐怖鎮静の為に使うものまで様々な理由があって、合法化されている。
まあ、俺は絶対に使いたくないが。戦いなんて素面でやってなんぼであろう。
酔いながら戦うなんて敗因になりえるのだからな。
とまあそんな感じの例外なのだが、勿論規制もあって、賭博をするためだけに一般人が冒険者にならない為にE級以下の冒険者は違法となっている。
俺は、ギリギリD級のためこの制限には当たらないため今回の賭けポーカーに参加できるという訳である。
「フフフ、今回は賭けポーカーの為に大金を持ってきたの」
《法律はこいつを裁けない定期》
《なぜ司法はコイツを見逃しているんだ?》
《多くね?》
《金持ちかよ》
《ガチやんwww》
そんな事を言いつつ札束を積み上げる乗宮さん。
推定だが、きっと500万はある。
心の中でひそかにコメントに共感してしまったのは内緒だ。
世の中正しいことこそが正義って訳じゃないからな。
「ハッ!いかにも雑魚の考えそうな事だァ!こっちはこれで十分だ」
そう言って山口が取り出すは乗宮さんの札束の半分以下の200万。
《お、舐めプですか》
《山口らしいな》
《”強者の余裕”www》
《おもろいなw》
「じゃあ僕はこれで」
ブライトネスさんは300万ほど。
やはりS級冒険者は違うな、って感じだ。
全員100万単位で金を用意するあたり別格だ。
「おい、お前はどうなんだよォ」
「えー?栄治くーん、まさかお金持ってないのぉー?」
下衆い笑みを浮かべながらこちらを見てくる乗宮&山口。
お前ら仲いいな……って感じだ。
「まあ、安心してください。金ならきちんとありますよ」
懐から金を取り出す。
《え、少な》
《勝てるのか?》
《ごめん、山口よりも舐めプしてる奴いたわw》
《行ける?》
《資金力が一人だけ庶民w》
《弱い》
「じゅ、十万!?」
「ぷ、ぷぷぷ!そんなんで足りるのかよw」
ふふふ、笑うがいい。
俺は天を仰いだ。
「足りない分は物品で補ってもらうからね。まあ、武器は取んないけど」
「お前の泣きっ面を見るのが楽しみだなァ」
ん、山口のそれはさっきのが悔しかったからであろうか。
まあ、関係ない。来るなら正面からぶっ潰すのみ。
「……」
「ん?なんだ、ビビったか?」
「逃げるなら今のうちだよ」
「いや」
そう言い、札束を手に取る。
「──全ベットだ」
そうして勝負が始まった。
▽▲▽▲
「はい、スイマセンデシタ」
「クソ!なんで、一度も勝てないんだ!?イ、イカサマだ!」
全裸で座る二人。
──乗宮と山口。
因みにブライトネスさんは嫌な予感がしたらしく途中で辞めた。
まあ、いい判断であると思う。
しかしこの二人は違う。
敗北に敗北を重ねたが、損失を取り戻すことに必死になって勝負の辞め時を見失った。
「はいはい、静かにー。寝てる人もいるからねー」
こりゃ絶景だ。
S級冒険者二人を全裸に。
ちな、乗宮さんはブランケットを纏っている。
あー、賭けポーカー最高!
「もう一回勝負だ!」
「そうそう、あと一回だけ!」
「ごめんなさい。俺は金のない人間とポーカーをする趣味はなくてですね」
《RERERE強いw》
《異次元の強さじゃね》
《何があったらポーカーであんな勝てんだよ》
《まさか本当にイカサマ?》
《理論値的な勝ち方だった》
《おかしい》
「あー、ここってダンジョンですよね?法律なんて関係ないんですよ」
《なるほど、つまりはそういう事か(分かっていない)》
《意味不明w》
《イカサマしたのね》
《だとしても全く見えなかったんだけどw》
《プロかな?》
そう、ここはダンジョンなのだ。
つまりは過程の公平性を保証する機関は存在しない。
イカサマをしようが何をしようが、結果が残ってしまえば何も問題なくなるのだ。
ここには法律は通用しない。
ならば冒険者らしく法律が通用しないやり方をするだけだ。
「ク、クソ!覚えてろよ!」
「栄治のばーか!」
そう言って痴態を晒しながら去ってゆく二人。
あー、げに絶景なり。
因みにこれ以降俺は賭けポーカーに誘われなくなってしまったのは内緒だ。
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