第17話

 キャンプの準備は完了し、各々が好きに過ごし始めた今日この頃。

 俺は現在土下座しているところだ。


「えー、はい、全然実況できなくて悪かったとは思っている」


《配信ァ……》

《画面がブレッブレでなんも見えんかった》

《実況……?》

《とても悲しいです》

《どうせ俺たちなんかよりS級の男の方が好みなんだろ》

《草》


「おいおい、俺に男を好む趣味なんてないぞ?」


《ホモォ♂》

《デデドン(絶望)》

《は?REREREは皆の娘だろ》


 ……。

 うん、やっぱ見なかったことにしよっかな。

 

「──ん?それは最近巷で人気の”配信”ってやつですか?」


 そんな感じで昼間に全然実況できなかった埋め合わせで配信しているといつの間にかブライトネスさんが後ろに立っていた。

 気配が全くしなかった……。

 

「……はい、これが所謂”配信”ってやつです」


《所謂w》

《悲報:この空間の平均年齢は30を超えています》

《REREREの方が年上なのガチ草》


「ごめんね、パーティーだと実況しずらいでしょ」


「まあ、確かにそうですけど、ブライトネスさんが謝ることではないと思ます」


 ふふふ、いい大人の男性はサラリと謙遜できるのだ。

 まあ、この場合は謙遜って感じじゃないけどね。


「……ところでさ、REREREさんって治癒魔法扱えるって本当ですか?」


 そんな感じで内心ドヤ顔決めているとそんな事を訊いてきた。


「ん?扱えますけど?」


「よし!酒だ!」


《は?》

《はい?》

《意味わからん》

《なんで酒?》


「ククク、治癒魔法って細胞の活性化を行うんですが、実はこれが肝臓にも効きましてですねぇ……つまりはそういう事です」


 ああ、なるほど。

 言いたいことが分かった。

 つまりは、キャンプと言っても常に魔物に襲われる危険があるため酒なんて飲んだら翌日に響くし緊急事態に対処できなくなって最悪死の危険を覚悟しなければならない。まあ、それでも飲むバカは一定数いるらしいが。

 しかし、どうしても飲みたいという人間は当然ながらいる訳で、彼らが編み出した方法と言うのが、酔っぱらったら回復魔法で肝臓を回復&強化して酔いをすっとばしてしまおうというモノだ。

 なんでそんな事を知っているかって?

 これはアレだ。ボッチ配信している時に酒飲めって視聴者に言われてから知ったのだ。

 しかし、残念な事に食料を持ち込んでいなかったので当然ながら酒なんて持ち込んでいなかったのだ。それに酒飲んでもボッチ酒ほど悲しいものはないからな。

 あれ……?目から水が……。


 そんな事を視聴者に説明すると。


《構わん、飲め》

《未成年飲酒キター!》

《一応、体が変化したってだけだから合法》

《バ カ な の か?》

《絶望的に頭悪い方法w》


「ってことでやるらしいです」


「よし!こんなこともあろうかと酒は用意してたんです!ちょっと今から皆を集めますね!」


《こんなこともあろうかと?》

《なんでダンジョンに酒持ち込んでんの?》

《常人には理解できないぞ》

《ああ、そういえばコイツS級だったわw》


 そして、ブライトネスさんはパーティーの人たちを集めてきて酒を注ぎ始めた。

 トクトクと注がれるは黄金色のお高そうなビール。

 なんで高そうかと思ったかと言うと、泡立ちが良いからだ。

 若造には分かるまいが、高いビールと言うのは大体泡がきめ細かく美しいものなのだ。てか、ビール自体、泡が本体とも言えなくもないが。


 周りを見渡して見ると他の人たちも俺同様に困惑している様子。

 まあ、仕方ないよな。ダンジョンで酒を飲む方が異常なのだ。

 だから困惑という反応は一般的なもので……。


「え、酒飲めるの!?」

「よっしゃ!今晩は飲んだくれるぞ!」

「治癒魔法に感謝!」


 ん?

 困惑していると思ったのだがなんか全然違う事言ってるぞ?

 ……やっぱこのパーティーって酒狂いばっかりなのかな?

 まさか乗宮さんも……?

 という訳で彼女の方を見てみるが、なんと大はしゃぎ。

 マジかよ、って感じである。


「では!かんぱーい!」


 という訳で一斉に乾杯。

 いい酒なようで一口飲んでみるととんでもなくのど越しがよい。

 さらにブライトネスさんは氷系の魔法が扱えるようでキンキンに冷えている。

 

「かあー!キンッキンに冷えてやがる!」


《やばい、酒飲みたくなってきた》

《ちょっと飲んでくるは》

《酒酒酒》

《未成年はダメですよw》

《ここってダンジョン四階層ってマジ?》


「ふふん、残念だったな。こんなこと・・・・・があるかと思って医者に訊いてきたんだよ。体の内部構造は特に変わっていないらしくて、一応飲んでもいいって言われたんだよ」


《クソ!REREREの癖に手際が良い!》

《未成年飲酒ダメ絶対》

《それならいっかあ(脳破壊)》


 あー、ポカポカしてきた。

 なんか今ならなんでもできる気がしてくる。

 

「ねえ、栄治も一緒にポーカーしない?」


 ニヤニヤとした笑みを浮かべた乗宮が誘ってきた。

 ポーカー?

 ああ、ポーカーか。

 うん、俺の好きなヤツだ。


「もちろん賭けポーカーね」


「おい、俺もその勝負に混ぜろやァ!逃げるなんてしねえよな?」


 ん?金髪男性まで混ざってきたぞ。

 あー、久々に本気出そうかな。


「いいぞ、やろうか」


 こうして賭けポーカーが始まったのである。

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