第15話

「こんにちは、あなたの事はギルドマスターから聞いていますよ」


 二コリ、と優男の様な男は握手を求めた。


「ええ、こちらこそ」


 手を差し出し握手。


《この人ってS級のブライトネスじゃね?》

《クソッ!前歯が眩しい!》

《優男め!》

《グアアア!やめろ!その笑顔は俺に効く!》


 コメント欄が若干燃えているのを確認しつつ溜息をつく。


「ハア、お前ら何に興奮してんだよ。この人はS級のすごい人なんだぞ?」


《だ、か、らだよ》

《可愛い女児に近づく男は警戒しろ》

《ボディタッチは許しません》

《S級冒険者、S級の外見、ふう》


 全く、何故こんなにこいつらは興奮してんだか。

 てか俺は女児じゃないんだが。

 何度も言うが、俺はおっさんだ。 

 認めたら……ヤバい気がする。という訳で誰が何と言おうと俺はおっさんだ。

 という訳でこいつらが言ってることは理解したくない。

 なのでコメント欄は無視。


「確か、このパーティーは”腐敗の悪夢カルナイア”の討伐隊ですよね?」


「ええ、その通りです。僕がこのパーティーのリーダーです」


 ふむ、この男がこのパーティーのリーダーか。

 乗宮から集合場所を伝えられてここに来た。

 そして、ここに来た瞬間からこの男の事は観察していたが、コイツは強いってことが分かった。

 冒険者向けのやや緩い服のせいで見づらいが、この男の筋肉はかなり太い。腕は俺の太ももより一回り太いんじゃないか?なんて思ってしまうくらいには太い。

 そして、立ち方、視線、歩き方。どれを見ても隙が無く、コイツがS級であることを証明していた。

 さらにはS級であるってことは当然、スキルも強力なモノに違いない。つまるところコイツ、間違いなく強い。

 なんて心の中で考えつつ雑談しているといつの間にかパーティーメンバーが集合していた。

 周りを見てみると、これまた強そうなのがいっぱい。というかA級とS級しかいない。

 マジかよ……超高水準パーティーじゃん。

 俺を除いてS級3人にA級9人、B級2人という錚々たるメンバーだ。

 S級のうち一人は乗宮さん。もう一人がさっきのブライトネスさん。そして、最後の一人は知らない金髪の怖そうな男の人だった。

 

 ここはダンジョンセンターの一角なのだが、通り過ぎてゆく冒険者たちがこちらを見て、


「おい、なんだあのパーティー。化物ぞろいじゃねえか」

「見ろよ、あれブライトネスじゃね?」

「マジか。何を討伐するんだ?まさかあのエクストラボスか?」

 

 なんて言っていて改めてこのメンバーが凄いことを認識した。

 まあ、一部、


「誰だアイツ。見ねえ顔だな」

「おいおい、ガキじゃねえかよ」

「なんであのパーティーにあんな子供がいるんだ?」


 なんて俺は言われていたが気にしない。

 俺はお世辞にも有名とは言えないしな。登録者はまだまだ4桁台。それに等級もD級。まだまだ世間には知られていない冒険者なのである。

 ……もしかして俺、場違いか?なんてちょっと恥ずかしくなったのは内緒だ。 

 ここは隅っこで目立たたないようにするが吉だろう。


「おいおい、なんだお前。ここはガキの来るところじゃないぜ?」


 そんな感じで隅っこで小さくなっているとさっきの金髪の怖そうな男の人が話しかけてきた。

 下衆い笑みを浮かべながら。

 

「……やめときなさい」


 するとさっきのブライトネスさんが止めに入ってきた。

 むむ、これはそういう空気なのか?

 

「お前よお、REREREだっつたか?乗宮が紹介したっつうらしーけどなァ、本当かァ?エクストラボスの報酬がスキルだからって金渡して討伐隊に参加させてもらってるんじゃねえのかァ?」


「……おい、そこまでにしとけ」


 んー、これ映すと不味いかも?

 カメラを切る。

 てか、こちらを見る乗宮さんの目が怖い。

 あれは人を殺す目だ。


「おいおい、俺は別にここで殺り合いたいって訳じゃねえぜ?でもよお、弱えヤツがパーティーに入るっつーのはなァ、どうもなァ」


 一度動き出した口は止まらない。


「そもそも乗宮自体、本当に強いのかよォ?見たけどそこまで強くなさそうだったぞ?どうせギルドのお偉いさんとかに体売ってんじゃねえのか?」

 

 ……。

 コイツ、一線を越えたな。

 S級冒険者らしいが随分な口の利き方だ。

 

 手元に構えていた斧を振り上げる。

 刃先は男にその首を断ち切らんとする勢いで迫った。

 しかし、実際にはそうはならない。

 

「は?」


 首の薄皮一枚を切り裂き、寸止め。

 何が起こったか分からない、という表情だ。


「おい、口の利き方には気を付けろよ?俺の実力を疑ってもらうのは結構だが乗宮さんを馬鹿にするのは看過できない」


「レレさん?」


 こちらを意外そうな目で見てくるブライトネスさん。

 クソ!そんな目でこっちを見るな!恥ずかしくなっちまうだろ!

 なんて心の中で叫んでいると、


「クソ!人をコケにしやがって!別にお前の攻撃に反応できなかったって訳じゃないからな!次は避けれるからな!」


 なんて吐きつつ去っていった。

 ふう、危ない危ない。 

 あのまま続けさせていたら乗宮さんに殺されていたかもしれないからな。

 ちょっと自分自身乱暴だなとは思うが、人の命を一つ救えるならそれでよし。


 しかし、まだパーティーは集合したばかりだ。

 この後やってけるかどうか不安である。

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