第13話 悪夢
地を震わし、亡者達は行進を続ける。
かつて人間だった彼らはその黒い眼を濁らせ、進む。
彼らの行動原理はただ二つ。
増えろ。
喰らえ。
たったそれだけである。
おおよその生物が抱くそれと本質的には全く同じではあるが、決定的に異なる点がある。それは、目的の達成の為ならば犠牲を厭わない事である。
たとえ自らが滅びようとも集団の王が生き残ればそれでよし。
彼らに正常な思考などとうに存在しない。
上位存在の手により彼らの思考や本能は弄られているからである。
目に映る総てはエサであり、増えるための個体である。
彼らは人間や魔物を喰らう。
そして、喰らった個体を同胞とする。
言わばゾンビと同じである。
しかしながら、彼らも当然生き物な訳で何も食わなければ生きてゆけない。
故に、人間や魔物の頭のみを喰らうのである。
思考の一切の自由を奪い操るという観点で見ると合理的であるのが皮肉的であるが。
だから、彼らには頭が存在しない。
首から上は何もないのである。
首なしの悍ましい群体。
それこそが、ダンジョン7層に出現したエクストラボスである。
「ヒ、ヒィ!やめろ!こっちに来るなッ!」
彼らの前にエサが現れる。
冒険者だ。
彼らは、このエクストラボスの報酬に目がくらんで集まった者たち。
悍ましい群を前にして腰が抜けた者たち、あるいは圧倒的な群の物量を前に戦闘継続能力を失った者たちは為す術もなく化物の群れにのみ込まれる。
「やめろ!やめてくれ!」
必至の命乞いも最早彼らの耳には届かない。
グチャグチャグチャグチャグチャ
悍ましい肉を引き裂く音があたりを埋め尽くす。
彼らはただ一つの個体を中心に形成されている。
その個体名は”
総ての個体は彼らの王の為に存在し、王の為に増える。
そして、人を滅ぼさんとす。
彼らの最終目的は一つ。
ダンジョンからの脱出。そして人類の絶滅。
それだけであった。
彼らは人の肉を喰らい幸福を覚える。
そして、喰らった人が同胞となることに歓喜した。
こうしてまた群れが増える。
彼らの進行は止まらない。
進行は6層まで到達していた。
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