第12話 白
黒を基調とした部屋。
その部屋の主であろう少女は椅子に腰かけていた。
深い藍色の高慢な炎を燃やした瞳が特徴的だ。
歳は見たところ20以下である。
「ふむん、エクストラボスか。これまためんどくさいのが表れたもんじゃ」
頬杖をつき、めんどくさそうな表情を浮かべながらそう言った。
「すいませんね。例の
対するはどこか幼さの残る面の青年。
黒髪、黒目。
これと言った特徴のない顔。
彼を一言で表すならば”モブ”である。
「そうじゃな。どっかの誰かさんのせいで」
ニヤニヤと両者は嗤った。
「で、エクストラボスとやらはA級パーティでも一方的に虐殺されたんじゃっけか?」
「その通りです。まあ、かのエクストラボスの素体はS級で出来ているらしいですからね。当たり前ですけど」
「これまた厄介な……」
はあ、と少女は溜息をついた。
彼女こそ世に隠されし最強の特S級冒険者の白銀卿である。
といっても、多くの配信者のせいで世に隠されていないのが現状ではあるが。
五歳にしてスキル【
この世界で最も凶悪にして最強のスキルである特S級スキルである【
その効果は驚くことに五本の指に収まりきらない。
そして、さらにはそのすべての効果においてS級のメイン効果を凌駕しかねない能力が揃えられている。
当然世の理を超越した能力を持つわけで、冒険者協会──通称ギルド──はそんな彼女を見逃す訳がなく、史上最年少である十代で特S級冒険者入りを果たしたのである。
そんな壮絶とも言える人生を歩んできた彼女であったが、一つ悩みを抱えていた。
「我はいつになったら休めるんじゃ……?」
死んだ目を浮かべ、溜息をついた。
そう、社畜なのである。
「全く、あのクソ前髪野郎め!問題ばかり起こしおって!こんど会ったら締め上げてやるんじゃ!ファッキン!」
中指を立てる。
「お下品ですよ?」
「知らん知らん!我はイライラしてるのじゃ!」
「はあ、まあ別に白銀卿が中指を立ててもらってそれでストレスが解消されるなら別に良いんですけどね。まあ、安心してください、このエクストラボスの討伐が終われば休みも取れるんじゃないでしょうか?」
「ふん?お前、我を舐めておるのか?貴様らギルドの人間は我にこれが終わったら休みが取れる、取れる、って言い続けてはや数か月経っておるんじゃが?労基に訴えるぞ?」
「どうかそれだけはおやめください」
男はヘラヘラと笑った。
「あ、そうそう。そんな白銀卿に朗報がありますよ?」
「ん?なんじゃ」
頭を搔きむしる白銀卿。
顔は上げない。
どうせ期待を裏切ることを知っているから。
特S級になり、様々なことを経験して知ったことがある。
それは、期待はし過ぎないこと。
期待をするから絶望するし、喜ぶ。感情の波が生まれるのだ。
しかし、特S級という役に就く限りはそんな物不要である。というか邪魔なだけである。故に彼女は心を乱さない。
「S級冒険者の乗宮が討伐に参加すると表明しましたよ。これでこれ以上S級冒険者の被害が出ること減るんじゃないでしょうか?」
「乗宮か……まあ、あやつは変態じゃからな。ヤツが参加するなら安心でもあるな」
興味なさげにそう言った。
S級如きの話題では白銀卿の心を乱すことは出来ないのだ。
確かに、乗宮は強い。というか、便利である。
しかし、所詮は常識から少し外れた程度。
心躍らせることはないのである。
「朗報はそれだけじゃなくてですね……」
「ん?」
「乗宮がついでに参加させたいという者が居るのですが、こちらをご覧ください」
とある映像を彼女に見せた。
それは、幼い、黒髪の幼女がドラゴンの首を両断する動画。
「これは……!?」
「名をREREREというのですが、彼女はこちらの者を参加させたいと言うのです」
動画を見て、少女は口角を上げた。
「なんじゃなんじゃ!?ドラゴンの首を両断!それも、我の見間違いでないならばこの者のスキル、D級ではないか!どうやってるんじゃ!?」
目を輝かす。
D級という、恵まれないスキル。
効果はたったの2つ。
それだけでドラゴンの首を両断する?
どうやって?
まさか身体強化のみで実現している訳ではあるまい。
身体強化は魔力の消費が激しい。さらに、脳のリソースを多く割かなければならない。戦闘中に脳のリソースを割くだけで大きな隙になってしまう。
しかし、この幼女に隙は一切見えない。
どうやっているのだろうか?
白銀卿は不思議に思った。
自分には察しもつかない。
彼女の
「この者、面白い!」
「会っちゃダメですよ?あなたにはまだやってもらわねばならない事があるのですから」
「分かっておる!」
嘘である。
今すぐとは言わずとも、会おうとはしている。
「こんな面白い者が居るなら早く言っても良かったんじゃ?ダンジョンマスター」
ダンジョンマスターと呼ばれた男は肩を落とし言った、
「まあまあ、私も忙しいんですよ」
「ふむん。弁明になっておらんが許そう。我は今気分がいいからな」
「気分が良いなら早くエクストラボスについて早くあれこれ終わらしてもらいたいんですが……。あなたが決めなければ何も始まんないんですよ」
「ギクリ」
「心の声が出てますよ」
仕方なく、再び業務を始める。それに合わせてダンジョンマスターも退出した。
脳裏に未だに再生されるあの映像。
気になって気になって仕方がない。
「よし、これが終わったら会いに行くか!」
少女はそう言った。
そして再び業務に打ち込む。
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こっからメインストーリーが進んでく予定
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