第8話

「はい、対ありってことなんだけど……この娘、怖い……」

 

 魔力圧縮により爆発を引き起こし、防御結界を破った。

 結果、彼女はひどい有様になってしまったが、俺が治療した。

 というか、今治療している。


 回復術式が通りやすいように彼女には正座してもらって、その頭に俺が手をかざしながら魔力を彼女の全身に通している。

 そのため傍から見たら妹が姉の頭を撫でているような光景だ。


 てか、怖いってなんだよ。

 防御結界を物理防御用に用いる奴の方がよっぽど怖いだろ。


《同感w》

《恐怖でしかない》

《この娘怖いw》

《草》

《確かにそう》

《本当に冒険者初めて三か月?》


「あ、そうそう。ただの疑問だけどさ、私を助けてくれた時ってドラゴンの首をスパーンって切断してたよね?龍鱗りゅうりんだけなら私の防御結界と同じか私の結界より少し物理耐性が低いかなー、位だけど肉と骨まで断つってなったら相当な力が必要だと思うんだけど?」


「そのー、あれです……ゲームでもゴリ押しするより相手に合わせた攻略法を考える方が楽しいってやつです」


「答えになってない……」


 目が泳ぐ。

 気まずい雰囲気が流れる。


《は?》

《はあ!?》

《つまりは全力は出していないと》

《頭イカれてるよ》

《限界突破してる》

《意味わからん》

《???????》

《これは特S級なのでは?》


「ところでその特S級?って何ですか?」


 この雰囲気を壊すために質問する。


「ダンジョン冒険者にはランクがあるのは知ってるよね?D級からS級まであるやつ。で、公式にはランクの上限はS級って事になってるけど、実はS級の中でも順S級と特S級って分け方があるんだよね。有名なところだと白銀卿とかになるね」


《特S級になると〇〇卿ってなるんだっけ》

《白銀卿は確かに有名》

《REREREなら特Sにも手届くんじゃ?》

《確かに行けそう》

《冗談抜きで行っちゃいそうなんだよな》


「あ、ちなみに私は順S級ね」


「そうなんですか」


 乗宮さんがS級って事になると特S級って相当強いのでは? 

 少しは余裕はあったがそれでもあの彼女の魔力量と出力は一般人と隔絶したものだ。となるとそれを超える特S級は計り知れない力を持っているのかもしれない。


「まあ、そんなことはさておき、この企画って負けた方が勝った方のいう事をなんでも聞くんだよね」


「確かにそうでしたね」


 そういえばそうだった。

 この彼女の防御結界に意識を引っ張られたせいで忘れていた。


 しかし、なんでもいう事を聞くか……。

 こういうのは無難に飯を奢らせるとかか?

 いや、でもなあ。今は飯なんかよりも明日の家の方が不安なんだよな。

 ここはダメ押しで訊いてみるか?


「あのー、俺、ダンジョンで三か月配信してたのって知ってますか?」


「うん、もちろん知ってるよ。だって命の恩人だからね」


《お、本題か?》

《ずっと待ってたぞ説明》

《説明キター!》


「俺の固有権能ユニークスキルの【断頭】なんですけどD級のスキルなんですよ。で、当時はそれはもう悔しくて、修行すれば強くなるんじゃないかと考えました。そこで俺はニートだったてのも助けになってダンジョンに籠ることにしたんです」


「……」


《草》

《常人の思考ではない》

《注意:REREREは特別な訓練を受けています》


「まあ、そんな訳でダンジョンに籠ったんですが、肝心の食料と水を持ち込むのを忘れてしまって、仕方なく魔物の血と肉を食べたんです。それのせいで魔力過剰負荷性転症なる病気になってしまったようで……」


《魔力過剰負荷性転症?》

《長い》

《なるほどなるほど》


「その病気のせいで今のこの姿になってしまいました。とまあ、これが今回の事の詳細なんですが、そんなことはどうでもよくて……実は俺、その……帰る家がないんです」


「ほう、帰る家がないと?」


《ほうほう、帰る家がないと》

《おじさんち泊まる?》

《うちんち空いてるよ》


「怖いので無理」

 

 コメント欄で非常に怖いコメントが流れていたがきっぱり断る。

 こういうのは断らないといけないってどっかの偉い人が言ってたからな。


《お前の方が怖いっつーのw》

《むしろREREREの方が怖い》

《夕ご飯に魔物の肉混ぜられそう》

《うちには化物を飼うスペースはありませんw》


 は?

 何をいってるんだこの人たち。

 誰が化物だ。全く失礼なやつらめ。


「ダンジョンに三か月籠ってたってことでお金を納めてなくて、大家さんに追い出されちゃったんです。ですので、乗宮さんのお宅に泊めさせていただけると……」


 その言葉を聞き、乗宮さんは少しばかり俯き考え始めた。

 数秒が経過し、彼女は顔を上げて答えた。


「いいよ!だってREREREさん可愛いからね」


「本当にいいんですか!?」


「もちろんいいとも」


 グッ、と親指を立てた。


 少し迷ってはいたようだけど即答か……。

 乗宮さんらしい。

 しかし、可愛いからという理由なのはどうかと思うが。

 てか、俺は中身おっさんだぞ。

 何が可愛いのだか。

 誰が中身おっさんの幼女に可愛いなんて感情を抱くのだか。

 きっと気遣って言ってくれたのだろう。


《それはそう》

《RERERE可愛いからね》

《マジで愛でたいレベル》

《そのゆるふわヘアーに顔を沈めたい》

《割とガチで可愛いとは思う》

《うーん、95点》


 えあ!?

 もしかしてマジでそういう目で見られてるのか?俺。

 いやいや、まさか。そんな筈が……。

 そう思いもう一度コメ欄を見るが、変わらないコメント群。


 こうして俺は自分の立ち位置を知ったのだった。 

 因みに配信後、恥ずかしすぎて悶絶したのは内緒である。

 とまあ、そんなこんながあったが無事俺はしばらくお世話になる家を見つけたである。





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2/18

次の話は今日の5時周辺で二話くらい投稿する予定です。

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