第5話

 ああ、クソ頭いてぇ。

 三か月酒の一滴も飲んでこなかったのに、いきなり十缶も飲めばこうなることは当たり前である。

 てか、飲む前からそんなことは分かっていた。

 だがしかし、人間とは分かっていてもやってしまう生き物なのだ。

 俺は何も悪くない。


 とまあそんな感じで自分を慰めながら二日酔いにクラクラする頭を抱えながら大家さんに一日で引っ越し先を見つけるのは無理です、と伝えに行った。

 流石に明日出てけと言われてもついさっき帰ってきたのにどうやって引っ越し先見つけんねんって話だからな。

 という訳で大家さんに交渉しに行ったが、無事一週間後までに引っ越し先を見つける、という交換条件で話を付けさせてもらった。大家さん曰く、俺がなんの音沙汰もなしにダンジョンに潜ったせいで死亡扱いになっていたらしい。で、仕方がないから次の居住者を募集したら、ここは都心なわけですぐに見つかったらしい。だから既に来週業者に片づけをしてもらうように依頼していたらしい。

 つまりは、来週までに出ていかなければ俺に行き場はないという事だ。

 

 やはり、一番の問題は金だ。

 三か月ダンジョンに潜っていたが、その間に狩った魔物の素材は収集していない。無駄にかさばる素材は修行には邪魔だからね。

 あの時の自分に全力で助走をかけて飛び蹴りしたい。フ〇ックミー。


 という訳で、直近の問題は金なのだが……どうしたものか。

 社畜時代に働いて稼いだ金は長年のニート生活のせいで使いつぶしたしなあ……。

 ダンジョンに潜って稼ぐ、という方法は月末に銀行に振り込む式だから月初めの今からどうこうしたって間に合わないんだよな。

 マジでどうしようか。

 なんかどこかに都合のいい物件とかないかな。

 

 そう思い、携帯を立ち上げる。

 すると、SNSの通知が来ていることに気づいた。

 

「ん?なんだ?」


 そこには見知らぬ人からの知らないメッセージ。

 一体誰からだろうか?


【私とコラボして下さりませんか?】


 一通、そう書かれたメッセージがあった。


「は?」

 

 これはどういうことだ?

 コラボって一体何と?

 まさか、俺の弱小チャンネルと?

 俺のチャンネルの登録者数は400だぞ?

 こんな弱小とのコラボお誘いなんてよっぽどの物好きか、俺よりも登録者の少ない弱小チャンネルくらいしか居ないぞ?


 そう思い相手のSNSを確認してみたがなんと登録者が40万人もいた。

 俺のざっと1000倍じゃねえか!

 しかも相手のSNSを覗いてみたら大手の事務所のライバーさんだった。女性の方で、とんでも黒髪美人さんだ。

 正直俺なんかがコラボしてもなんのメリットもないと思うのだが……。

 まあ、それはともかくせっかくのコラボのお誘いだ、断る訳にはいかないだろう。


【コラボ受けさせてください!】


【もちろんです!】


 そして、家のことをほっぽリ投げてコラボが決まったのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る