第3話 無人の放送局

新しい日常に少しずつ慣れてきた「ボク」は、人類の消失についての手がかりを求めて、次なる行動に出る。地元のテレビ局に何か情報が残っていないかという一縷の望みを抱き、彼はその扉を押し開ける。


探索の始まり


テレビ局の建物は、街の他の場所と同じく静寂に包まれていた。入口を入ると、受付の椅子には誰も座っておらず、待合室の雑誌は整然と積まれたままだ。壁に掛けられた大型のフラットスクリーンテレビも、ただ黒い画面を映し出しているだけだった。


ボクは奥へと進む。スタジオ、編集室、そしてニュースルーム。どの部屋にも人の気配はなく、画面上の編集作業は中断されたまま、あたかも時間が止まったかのように静まり返っている。


録画された最後のニュース


ニュースルームにあるコンピューターを起動すると、幸いなことに電源はまだ通っていた。ボクは、最後に録画されたニュース映像を見つける。画面には、いつもニュースを読んでいたアンカーが映し出され、彼女の表情はいつもと変わらず落ち着いて見える。しかし、彼女の声は記録されているにも関わらず、その内容は驚くべきものだった。


「...全世界で報告されている、人々の突然の消失について、現在、科学者たちは原因を突き止めようと奮闘しています。政府はパニックを避けるために、市民に自宅待機を呼びかけていますが...」


映像はそこで途切れ、画面は真っ暗になる。何が起こったのか、その続きを知る手段はどこにもない。


意外な発見


失望しながらも、ボクは建物をさらに探索し続ける。そして、放送技術室の一角で、小さなラジオトランスミッターを見つける。それは、まだ作動しているようだった。ボクには突然のひらめきが閃く。このトランスミッターを使えば、もしかすると他の誰かと通信できるかもしれない。


新たな希望


ボクは、ラジオトランスミッターの前に座り、マイクを手に取る。「こちらは...」と言葉を発し始めるが、一瞬、自分の名前を名乗るべきか迷う。しかし、すぐに決心し、「ボク」と名乗り、自分がまだここにいること、そして他に誰か生きている人がいれば、応答してほしいと訴え続ける。


放送を終えた後、ボクはトランスミッターの前でじっと待つ。静かな放送室には、ただ彼の呼びかけが響き渡る。返答があるかどうかはわからないが、この行動が「ボク」に新たな希望を与える。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る