第54話 シーザリオの異変

「まあ、今すぐに嫁に!!とかでは無く、いずれは…という事にしておきましょう」



 そう俺は提案する。恐る恐るだが…。



「そうですね。私も立場がありますので、内々の約束という事にしておきましょうか」


「わかりました。しかし私は公爵家の人間。色々と面倒なお話が出てくるかもしれません。その時は…ハヤト様、よろしくお願いいたしますね」


「…わかりました。お任せください」



 メサイア様の言葉に若干の不安を感じつつ、この話から話題を変えたい一心で『お任せください』と答えておいた。



「では…ハヤト様。一度、お体に触れさせて頂いてもよろしいですか。疑っているわけではありませんが、体内に魔力があるかを確認しませんと…服をお脱ぎください」


「はい、お願いします」



 俺はシーザリオ様の言葉を聞いて服を脱ぎ、上半身、裸の状態になる。



「あぁ…『スベスベ』のお背中、『プニプニ』の二の腕…あぁ~素敵!!」



 シーザリオ様が後ろから俺の体を触りまくる。



「……………」



 俺はよくわからず、されるがままの状態だ。若干、シーザリオ様の息遣いが荒くなってきているような…。

 周りで見ているアレグリア達も微妙な顔をしている。



「シ、シーザリオ…。それは…ちょっと…趣旨が違うのではありませんか…。そ、それではセクハラと思われてしまいますよ」


「はっ!?ハヤト様、申し訳ございません。つい…うっかり。しかし問題はありません。ハヤト様のお体の中に魔力があるのを確認できました」



 アレグリア達も王家筆頭魔術師のシーザリオ様に苦言を言う勇気は無かった様だ。仕方なくメサイア様が代表してシーザリオ様のセクハラを止める。



「シーザリオ、気持ちは痛いほどわかりますが、今は自嘲してください」


「う、うむ。それでは私の魔力を流し込みますね」


(セクハラをする気持ちが分かるんかい!!それも痛いほど!!)



 俺は心の中でメサイア様にツッコミを入れながら、シーザリオ様の魔力が入ってくるのを待つ。



「あぁ~~~、ハヤト様…凄い~凄いわ!!私、おかしくなっちゃう!!」


『な、何が凄いの!?』



 また、シーザリオ様が意味深な言葉を放ち、それを女性陣が興味津々に聞き返した。



「あぁ~~~!!ダメ…ダメ。本当にダメなの!!」



 俺は困惑しているが、シーザリオ様の悶えが止まらない。


 しばらく間、俺の背中に手を当てているシーザリオ様が悶えている…が、見るからに顔が蒼くなってきた。



「これは本当におかしいかも!?」



 メサイア様が慌てて俺とシーザリオ様を引き離そうとするが離れない。



「ダメです…離れません。どうやらハヤト様がシーザリオの魔力を吸い上げていて離れなくなっています。アレグリア達も手伝ってください!!このままではシーザリオが危険です!!」


『はい』



 みんなで俺とシーザリオ様を逆方向に引っ張り、引き離そうと力を入れる。


 そして何とか俺とシーザリオ様を引き離すことに成功した…が、シーザリオ様の様子がおかしい。



「えへっ、えへへへっ!!こんなの初めてよ。私とハヤト様が一つに繋がりました。私の体ごとハヤト様の中に引き込まれそうになり、えへへへっ…私…気持ち良く…このまま天国まで…」



 シーザリオ様は口から涎を垂らし、そのまま気絶してしまった。



「シーザリオ!!」



 メサイア様が大きな声を出して名前を呼ぶも反応が無い。


 みんな大慌ての中、ジュリアさんが小声で呟いたのが偶然聞こえてしまった。


 

「もしかしてシーザリオ様…絶頂…、イッてしまわれたのかしら…」



(…お、俺は何も聞こえていない)



 何も聞こえないふりをしてシーザリオ様の顔を覗き込む。気絶をしていて呼吸は浅い。しかし、何故だか分からないが、とても幸せそうな顔に見えたのは、男の身勝手な気持ちのせいか…。



「空いている部屋まで運んでください。ベッドに寝かして安静にしないと…」



 ジュリアさんの指示で、アレグリアとメサイア様がシーザリオ様を空室まで運ぶ。


 青白い顔をしてベッドに横になるシーザリオ様。メサイア様が何やら青い液体を取り出し、シーザリオ様の口に含ませる。



「メサイア様、それは?」


「えっ!?ポーションですけど…。ハヤト様はまだポーションをご存じありませんでしたか。これはシーザリオの魔力入りのポーション。ランクで言うと中級位でしょうかね」


「へぇ~、ポーションか…」



 俺はポーションが気になるも、今はそれどころでは無い。


 シーザリオ様の容体のほうが大切である。


 ポーションを飲ませてしばらくすると、呼吸も安定し顔色も良くなってきた。みんな安心して一息つく。



「中級ポーションの効き目、凄いですね」


「そうですね。特にこのポーションはシーザリオの魔力入りですから、効き目も通常の下級ポーションとは比べ物になりませんね」



 アレグリアとメサイア様がポーションについて話をしている。俺も興味があるので聞きたかったのだが、ここでシーザリオ様が目を覚ましたのであった。






【シーザリオ視点】


(は、初めて触る殿方の肌…)



 私は興奮を押し殺し、平然とした顔をしてハヤト様の背中に触れた。



(ハヤト様のお背中…スベスベですね~。ふふふっ、魔力とは関係ないですが、二の腕にも触れて…あぁ~『プニプニ』ですね~)



 私はハヤト様のお体の感触を堪能する…が、メサイアに止められる。



(チッ!!)



 渋々、ハヤト様の体を撫でまわす事は諦めて、本来の目的である魔力を流し込む。



(魔力を流し込む、流し込む…流し…込む……流し…)



 止まらない。私の体ごと、ハヤト様の中に吸い込まれてしまうような感覚。私とハヤト様の体が一つに繋がった感じが…気持ち良い。初めての感覚。



(あぁ~、なんて安らいだ気分なのでしょう。心が満たされます。そして…ハヤト様と一つになり、全身を愛撫されているような感覚…私…もう…ダメかも…あぁ~~~!!)



 私は急激な魔力の減少や感情の高まり、そして全身を包み込む快感により、気を失ってしまうのでした。



 



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