第53話 他人の全てを知るという事は…

「16年間の全ての情報といっても、分からない事もあるのよね」


「えっ…だから、全ての情報だけど…」



 混乱していて、今一つ理解できていないアレグリア。



「ハヤト様、今言った事は本当なのですか?」


「本当ですよ。ここにいるみんなには、正直に全てを話します」


「と言う事は…私の21年間の人生の情報を全てハヤト様に…」



 シーザリオ様は『信じられない』という顔をして呟いた。



「わ、私の情報も…」


「はい。先程言った通り、シーザリオ様との出会いから全ての情報を…」


「全ての情報…」



 メサイア様はショックなのだろうか…うつ向いてしまった。


 ちなみに



 メサイア・ド・エアディドール 21歳 身長176㎝ 体重51㎏ B86 W60 H89 処女


 戦闘 091/100 政治 064/100 内政 056/100 謀略 017/100


 魔法 000/100 家事 004/100 料理 012/100 生産 007/100


 農業 031/100 商業 022/100 建築 055/100 魅力 072/100


 外交 051/100 交渉 054/100 信用 096/100 採掘 004/100


 鍛冶 001/100 研究 004/100 狩猟 091/100 解体 050/100



 これは一部の情報


 エアディドール公爵家の四女で、引き締まったボディを持つスレンダー美人。剣術はSSランク。しかも弓術までAランクであった。


 メサイアさんは不遇とは無縁の人生。超優秀で名家のお嬢様である。非常に正義感が強く、シーザリオ様と一緒に世の中の為に働きたいと思っているようだ。



『……………』



 みんなそれぞれ、思うところがあるのだろう。しばらく無言の時間が流れる。



「アレグリアさんとジュリアさん、何を考える事があるのでしょうか?」



 リスグラシューが口を開いた。



「私達はハヤト様に身も心も捧げると誓ったはず…。今まで生きてきた16年間、38年間の全てを知られても良いではありませんか!!私は15年間の全てをハヤト様に知られても構いません。むしろ全てを知られたいと思っています」


「リスグラシューさん!!あなたの言う通りよ。ハヤト君、いつでもいいのよ。待ってるから…」


「お、お母さん!?アパパネもいるのよ。自嘲してよ!!」


「ふふふっ、アレグリアさん。何も心配する事はありませんよ。アパパネはすでに洗脳…いえ、教育済み。成人した暁にはハヤト様に身も心も…」


「……………」



 俺はリスグラシューのとんでも発言に言葉を失ったが、すぐにシーザリオ様とメサイア様に対しての言い訳を考える。



(これでは熟女から子供まで自分の女にしてしまう変態ではないか…。しかもアレグリアとジュリアさんは実の母娘だし…。ど、どうしようか…。俺はハーレムなんか望んでない。一人の女性を一生をかけて愛したいんだよ)



 こんな事を思うも、現実にはすでにハーレム状態。まだ肉体関係は一切無いが…。



(…軽蔑しているだろうな。きっとゴミクズを見るような目で俺を見るのだろう)



 しばらくの間、そんな事を考えてから、恐る恐る二人の方を見る…と、なぜか女性達が固く手を握りあっている。



(な、何が起こった!?)



 俺は訳が分からず、様子を窺う。



「私とメサイアもハヤト様に心の奥深くまで知られてしまっては、もはや他の殿方に嫁ぐ事などできはしません。私達もハヤト様に身も心も捧げる以外、道はありません。皆さん、よろしくお願いいたしますね」


「よろしく頼む。心を読まれるという事は、裸を見られるよりも重い事…。私もハヤト様に生涯を尽くしていく覚悟です」



(はぁ~!?何言ってんの…)



 俺はシーザリオ様とメサイア様の言葉に耳を疑う。



「素晴らしいお覚悟ですわ!!王家筆頭魔術師シーザリオ様と公爵家の四女メサイア様であれば、使徒様であるハヤト様にはお似合いですわ」



(お似合いじゃねぇ~よ!!中身は冴えないだけの、ただの庶民だぞ…)



 俺はそう思うも、時すでに遅し。


 シーザリオ様とメサイア様が『ニッコリ』微笑んで



「私達の心を覗かれたのです。責任は取っていただきますよ!!」



 そう言いながら、俺の両腕に腕を絡ませてきた。成熟した大人の女性の色香が俺を襲う。



(しかし…本当にこれでいいのか?何かのトラップではないのか?)



 悲しい非モテキャラの性か、この状況を素直に受け入れる事ができない。鑑定して確認をする。



(二人とも本気だ…鑑定をして全てを知るという事は、相手にとっては凄く重たい事なんだな。考えてみればそうだよな。俺も他人に知られたくない事もたくさんある。特に性癖など、絶対に知られたくない…否、知られてはいけない!!恥ずかしすぎる!!)



 俺は女性を安易に鑑定しすぎだったと反省をしたのであった。しかし、もうこれ以上は無理…否、今でも無理なのだが…。



(自嘲しなければ…。この調子で俺の周りに女性が増えていったら、身と心が持たないぞ!!)



 俺は贅沢な悩みと理解しながらも、心に誓うのであった。






【ジュリア視点】


(…人生の全ての情報を!?)



 私はハヤト君の言葉を聞いて、心に不安が広がりました。



(ここにいる若い子達とは違い、38年間という長い時間を生きてきました。その長い時間の間には、良い事も悪い事もたくさん経験し、いろんな感情が残っています。人には言えない醜い感情、ふしだらなあなたへの思い、思い出したくもない事もありました。それらの感情や体験のすべてを知られていたら…)



 心が締め付けられる思い。



(私は立派な大人では無いわ…。ハヤト君はそんな私の事をすべてを知っている。でも…私に対しての嫌悪感はみられない…という事は、こんな私を受け入れてくれている。だとしたら…私も…)



 そう考えていると、思わず…



「ハヤト君、いつでもいいのよ。待ってるから…」



 と、意味深な事を言ってしまいました。


 そして私はハヤト君のためなら、どんな事でもしてあげようと心に誓ったのでした。


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