第55話 女性が集まれば…
「……………」
シーザリオ様は目を覚ましたが、ぼんやりとして目の焦点が定まっていない感じがした。
「大丈夫ですか!!シーザリオ」
「あぁ…メサイアか…大丈夫です。心配をかけましたね」
メサイア様の問いかけに、笑顔を見せて答えるシーザリオ様。この笑顔を見て、俺達は少し安心をした。
「メサイア…倒れた時の事、あまり覚えてはいないの。何があったの?」
「ハヤト様の体に魔力を流し込んだ時、想定以上に魔力が吸い取られて…そのまま気を失ってしまったのです」
「………お、思い出しました。あの時、私はハヤト様と交わった感じがして…あぁ…感覚がまだ体に残って…体が火照って…」
こう言うと、シーザリオ様は顔を赤くし、布団の中へ潜ってしまった。
微妙な空気が流れる。
「……………」
誰も言葉を発しようとはしない。
シーザリオ様が真っ赤になった顔を布団から出し
「ハ、ハヤト様と二人きりにして頂けないでしょうか?」
と、言った。
「ダメに決まっているでしょう!!シーザリオ、もしや不埒な事を考えて…」
メサイア様が言い放つ。さすがは親友。王家筆頭魔術師にも遠慮がない。
「みなさん、ハヤト様を別室へ移動させてください。危険です!!」
『はい!!』
アレグリア達が大慌てで俺を部屋から連れ出した。
「シーザリオ様の表情、見た?」
「見ました。獲物を狙う野獣のような目をしていましたね」
「ふふふっ、ハヤト君を下から舐めるように見ていましたね。いろいろとストレスが溜まっているのかしら…」
アレグリアとリスグラシュー、それにジュリアさんが『ヒソヒソ』と話している。
(いやいや、シーザリオ様に限ってそんな事は…無いと信じたい!!)
と思ったが、女性同士の会話に口をはさむ勇気は俺にはない。地雷は目に見えないところに埋まっているのだ。気を付けねば…。俺は存在感を消し去り、隅の方で『ジッ』っと息をひそめていた。
しばらくしてドアが開き、メサイア様が入ってきた。
「シーザリオも落ち着きを取り戻しました。魔法の事を話したいと言っていましたので、申し訳ありませんけどハヤト様、いらしてくださいますか?ご安心を。何かありましたら、私が命を懸けてお守りします!!」
「い、いえ…。俺は大丈夫ですから…お構いなく」
俺は若干、メサイア様の言葉に引きつつも、シーザリオ様のいる部屋まで行こうとする。そして当然!!という顔をしてアレグリア達も後からついてきたのであった。俺の心配というより、興味津々という顔をしている。全く困ったものである。
メサイア様に続き『ゾロゾロ』と部屋に入っていく。
「ご心配をおかけして大変申し訳ありませんでした」
シーザリオ様は照れ笑いを浮かべながら俺達に謝った。
「大丈夫そうで安心をしました」
俺がそう言うと、続いてジュリアさんが
「今日はもう遅いです。それに完全に体調も戻ってはおられないと思いますので、このままお泊り下さい」
と、シーザリオ様に宿泊を勧める。
「申し訳ありません。お言葉に甘えさせていただきましょう。いいですね、メサイア」
「はい。ジュリアさん、一晩お世話になります」
これには俺も一安心した。暗いからと言って襲われる事はまず無いと思われるが、やはり体調面で不安がある。一晩でも泊っていった方が良いだろう。
「ふふふっ、夜は長いです。ハヤト様、魔法の事を詳しくお聞かせしましょう。とは言っても正直に言って、この世界の人間にも分からない事が多いのですけどね…。アレグリア達も聞いていきますか?ためになるかもしれませんよ」
「私達も聞いてよいのですか?」
「はい、構いませんよ。皆さんとは、これから長いお付き合いになるのですから、是非聞いていってください」
(長い付き合いになる…か)
俺はシーザリオ様の言葉にプレッシャーを感じつつも、受け入れる事を決意する。
まだ子供のアパパネを部屋に返し、シーザリオ様に魔法の話を伺う。
「まず、ハヤト様。私とメサイアの事は、呼び捨てでお願いいたします」
「えっ!?む、無理ですよ!!」
「ここは譲れません。お願いします」
「…どうしてもですか?」
『はい!!』
「シーザリオ、メサイア。これからよろしくね」
『ハヤト様、末永くよろしくお願いします』
二人の年上の才色兼備の女性が笑顔で頭を下げている。何とも居心地が悪い状況だが、なぜかアレグリア達も笑顔で喜んでいる。
非モテキャラが骨の髄までしみ込んでいる俺は、ただただ戸惑うばかりであった…。
【シーザリオとメサイアの会話】
メサイアがアレグリア達にハヤト様を部屋から連れ出す様にと指示を出す。
(危険だと!?失礼な!!ハヤト様と二人きりになったら、私が襲いかかるとでも思っているのですか!?)
シーザリオはメサイアの言葉を聞いて憤慨する。
「……………」
「シーザリオ、何を黙っているのです?」
「……………」
「でっ…どうだったのですか?」
「………どうとは?」
「わ、分かっているくせに!!ハ、ハヤト様のお肌の感触に決まっているでしょう!!わ、私は…と、殿方の体に触れた事がありませんから…。やっぱり『ゴツゴツ』と力強い感触がしたのですか?」
興奮し、興味津々で聞いてくるメサイアを見て、シーザリオは『ニヤッ』と笑う。
「さあね!!」
「!?…シーザリオ…親友でしょう!!教えてくれても…」
「まあ、待て…メサイア。その時が来るまで待っていなさい。情報を得ずに、自分の頭の中で妄想を膨らますのです。そして…その時が来たら、思いの丈をハヤト様に全てぶつけるのです。私も今回だけ…。今後は自制し、その時が来るまで思いを募らせましょう」
「…わ、わかりました。その時が来るまで…。ただし、抜け駆けは無しですよ!!」
「あぁ…女同士、親友として約束する。いつの日か…二人一緒にハヤト様に…」
「二人一緒に…。シーザリオ、負けませんよ!!」
「望むところです!!」
ハヤトのいない所で、とんでもない事が決まってしまった。
「では、ハヤト様に魔法の話をするので、この部屋まで呼んできてもらえますか」
シーザリオの言葉に頷き、メサイアはハヤトを呼びに部屋を出て行くのであった。
☆☆☆☆☆★★★★★☆☆☆☆☆★★★★★
あとがき
お読み頂き、ありがとうございます。残念ながら書き溜めていたものが無くなってしまいました。今後、しばらくの間は日曜更新とさせて頂きます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。