第34話 パスタの材料は?

「アレグリア、槍まで持っていくのか?」



 俺は槍を片手に持って、出かけようとしているアレグリアに聞く。



「当たり前じゃない!!ハヤト、あなたにもしもの事があったら、取り返しがつかない。私はハヤトを命に代えても守るから…安心して!!」



 何という男前のセリフか…。俺は思わず感動してしまった。



「確かに…。使徒であるハヤト様に何かあってら一大事です。アレグリアさん、頼みました!!」


「任せておいて!!」



(使徒じゃないって言ってるのに…)



「アレグリア、槍は置いていきなさい。あなたの殺気が厄介事を呼び寄せるのです。今日は自然体で行きましょう」



 ジュリアさん…素晴らしい発言です。



「アレグリア、襲われるんだったら、一人で店を出している時に襲われてるから大丈夫だよ。それに、むやみにスキルの事は話してないからね」


「う~ん…わかったわ」



 アレグリアは一度自室に戻り、槍を置いてきた。


 しかし、口を尖らせ、少し不満げな顔をしている。



「アレグリアの気持ちは嬉しく思うよ。ありがとう」



 俺はそう言って、アレグリアの頭を『ポンポン』と叩いた。


 アレグリアは顔を赤くし、俺の右腕に自分の腕を絡ませて



「さあ、行きましょう!!」



 と、元気に言った。



(アレグリアの胸の膨らみが腕に…)



 俺は『ムニュ』っとした感触に『ドキッ』とした。



「ア、アレグリアさん!!私達の見ている前で殿方の体に触れるなど、女性としてはしたないと思います」



 リスグラシューはアレグリアに抗議をする。



「さすがに元侯爵家のお嬢様だわ。でも…そんな事を言ってると、私はこっちの腕に!!」



 そう言って、ジュリアさんが俺の左腕に腕を絡ませてきた。



(こ、これは!!…また…結構な大きさ…素晴らしい!!)



 俺はジュリアさんの確かな胸の感触を堪能する。



「むむむっ!!」



 二人を見たリスグラシューが前言を撤回し、負けじと俺の背中に抱き着いてきた。



(僅かな…とても僅かな胸の感触…何も言うまい。まだ15歳だし…)



「とても嬉しいのだが…歩けないので、みんな離れてくれる?」



 俺はそう言って、三人に離れてもらい、買い出しに出発した。






 俺達はまず市場に繰り出した。色々な食材が並んでいる…が、正直よくわからない。



(もっと、前世で料理をしておくべきだった。俺は外食やコンビニ弁当ばかりだったから、食材の事がよくわからない…)



 だが、悔やんでいる暇はない。俺は少ない知識を思い出しながら市場を見ていく。



(確か、俺が見た女性の好きな食事ランキングで一位がパスタだったような記憶があるな)



 俺はそう思いだし、見慣れた乾燥したパスタを探すが見当たらない。



(乾燥パスタがない…じゃあ、生パスタか…あれって小麦粉だよな?麺類は基本小麦粉を使っているはず…)



 俺は頭の中に残るわずかな記憶を必死に思い出しながら、食材を探していく。



(小麦粉、水、卵…このあたりの物を混ぜて麵に加工すればいいのか?正直わからん!!)



 俺はもしかしたら、似たような食べ物があるかもと思い、ジュリアさんに聞いてみる。



「パスタ?小麦を細長く加工した食べ物…知らないわねぇ~」



 アレグリアとリスグラシューにも聞くが、知らないという。


 仕方が無いので、思い当たる食材を買って、あとはリスグラシューに丸投げをする事にした。ある程度の方向性だけ示してあげれば、何とかしてくれるのではないだろうか。


 そうと決まれば話は簡単だ。


 俺は次々に食材を買っては、マジックバッグに放り込んでいった。



「米もあるよ…。あっ!?醤油だ!!塩、砂糖に胡椒…ここらへんも買っておくか」


「そんなに買うの?」



 アレグリアが驚いて聞いてきた。



「うん。ある程度の初期投資は必要だよ。だからまだまだ買うよ。どうせ必要になると思うからね」


「…ふ~ん。私にはよくわからないけど…。私は甘い物が食べたいなぁ」



 俺はアレグリアの甘い物という言葉に『ピン』ときた。



「アレグリア、いいね。食後にケーキとか甘い物を出したいね」



 と言う・・・が、アレグリアが首をかしげて言う。



「ハヤト、ケーキって何?」


「……………」



 この世界にはケーキがないらしい…。






【アレグリア視点】


(むむむっ…。私の殺気とは!?)



 私はお母さんのこの一言に何も言い返せない。渋々ではありますが、槍を部屋に置いてきました。



(私も成長しています。槍が無くてもある程度は戦えるようになっているはず…)



 私はそう思い、懐に短剣を忍ばせる。


 そして…



「さあ、行きましょう!!」



 と言い、ハヤトの腕に自分の腕を絡ませる。



(ふふふっ、少しハヤトを誘惑してしまおうかしら…)



 私は知らない振りをして、ハヤトの腕に胸を押し付けた。


 しかし…ここで想定外の事態が


 何とお母さんがリスグラシューの苦言を聞き流し



「さすがに元侯爵家のお嬢様だわ。でも…そんな事を言ってると、私はこっちの腕に!!」



 と言い、ハヤトの左腕に絡みつく。



(お母さん、止めて~!!お母さんの大きい胸がハヤトの腕に…。そんな事をしたら私の胸の存在感が消えてしまうわ…)



 そんな事を考えているとリスグラシューまで、ハヤトの背中にしがみついてきてしまいました。


 しかしそんな私達はハヤトに



「とても嬉しいのだが…歩けないので、みんな離れてくれる?」



 と言われてしまいました。



(こ、今回は失敗ですが、私は諦めませんよ!!)



 と、密かに心の中で誓うのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る