第27話 リスグラシューは中二病!?

「鑑定スキル…生活魔法…マジックバッグ…創造神様…異世界人」



 リスグラシューは頭を抱えて呟く。



「私は何を信じればいいのよ…」


「何を信じればって…全部本当の事なんだけど」


「…全部。もうないでしょうね。私に隠している事は…」


「別に隠していたわけではないよ。あとは…加護くらいかなぁ~」


「加護!!!!!」



 リスグラシューは『加護』と言う言葉に食らいついてきた。



「水の精霊様、地の精霊様、火の精霊様、それとも風の精霊様…あわわわ。光・月・空・氷・夢…一体、どの精霊様の加護を頂いたというの!?」


「せ、精霊様?よくわからないけど…創造神マリア様の加護だけど…」


「……………」



 リスグラシューは再度固まってしまい『ピクリッ』とも動かない。



(よく固まる女の子だなぁ~)



 俺はしかたなく、リスグラシューが再起動するのを待つ事にした。






「ハッ!?」



 待つ事三分ほど、リスグラシューが再起動に成功した。


 しかし…俺を見るなり、リスグラシューは見事なジャンピング土下座を決めたのだった。



「ど、土下座は止めてください!!」



 俺はいきなりの土下座に驚いてしまい、自分も思わず土下座をしてしまう。


 しかし、リスグラシューは止めるどころか、地面に額をこすり付けている。



「マリア様の使徒様とは知らず、失礼いたしました!!」


「いや、俺はただの人間で、使徒様なんかじゃないよ」



 土下座をして話をする二人。アホである。



「ほ、本当に使徒様ではない?」


「はい。絶対に違います!!」


「わかりました。何か理由があるのでしょう」


「何も理由はありません!!」



 土下座で見つめ合う二人。



「ハヤト様は異世界人という事で、ご存じないかもしれませんが、この世界で名を上げた人間は、洩れなく精霊様の加護を持っていると言われています」


「はぁ、そうなのですか…」


「はい。ハヤト様の加護は、精霊様の上位の各神様を束ねる創造神様の加護…最上位の加護なのです」


「創造神様は結構、お気楽な感じでくれたので、そんな凄い加護とは思わなかったよ」



 リスグラシューは急に立ち上がり天を見上げる。そして胸の前で手を組んで語りだした。



「ここ数日の間で私に起きた出来事は、すべてはハヤト様と出会うための試練だったのです」


「???」


「今日ここでハヤト様と出会うために、あらかじめ定められた運命」


「???」


「ハヤト様!!私は身も心もあなた様の物になります。末永くよろしくお願いいたします」


「……………」



(なんか、とんでもない娘に目を付けられてしまった…どうしよう)



 俺は思い込みが激しいリスグラシューに圧倒されてしまう。ただ、料理の才能があるのも事実。



(まあ、どうにかなるだろう。美少女から慕われるのは嬉しいが、思い込みが激しいのがなぁ)



 と思いながら、二人で宿へと向かった。


 宿に着くまでの間にリスグラシューと話をしたが、本当に素直で性格の良い娘という印象だ。



(15歳で思い込みが激しいのは…中二病的なものかもしれないな。時間が立てば治るだろう)



 俺はそう考える事にした。誰にでも多少はある事だと思う。



「ただいま~」


「ハヤト君、おかえりなさい!!」



 俺とジュリアさんの平凡な会話…。誰もいない真っ暗な部屋に帰っていた俺にとって、心温まるジュリアさんの声。誰にも言わないが…とても嬉しく思っている。



「あら、そちらのお嬢さんは?」


「この娘はリスグラシューさん。料理の才能があったので、連れてきました」



 俺はジュリアさんにリスグラシューを紹介した。



「リスグラシューと申します。ハヤト様に料理の才能を見出されて、連れてきてもらいました。ただし、生まれてから一度も料理を作った事はありません」


「一度も料理を作った事が無い…」



 ジュリアさんは明らかに不安な顔をしていた。


 俺はすかさずフォローをする。



「まだ料理の経験はありませんが、才能は凄いものがあります。リスグラシューは金の卵なのです。即戦力とはいきませんが、見習いとしてでも雇ってもらえないでしょうか?」



 俺とリスグラシューは、深々と頭をさげてジュリアさんに頼んだ。






【リスグラシュー視点 知り合いの商人】


 私は侯爵家を追放になり、途方に暮れながらも考える。



(…仕方がありません。生前、お母様が贔屓にしていた商人を訪ねましょう。私も何度か会った事があるので、きっと力を貸してくれるはず…)



 私は町にある商店まで、何とか自力でたどり着いた。



「おぉ~、リスグラシューさん!!今日はどの様なご用向きで…」



(リスグラシューさん…様ではなく、さん…。もう情報が入っているのですね…)



「実は…少しの間、こちらでお世話になれないものかと思い、伺いました」


「う~ん…。これはなかなか難しい事をおっしゃいますな。あなたを受け入れるとなると、侯爵家から目を付けられてしまう可能性がありますから…」



 商人は渋い顔をして言った。


 私はすぐに無理だという事を悟った…が、行くあてがないという現実。



「しばらく…しばらくの間だけでも、お世話になれませんか?」


「う~ん…」



 商人はしばらく考え込み、私の体を舐め回すように見てきた。



「あなたは亡き奥様に似て、大変お美しい。雇う事ができない訳でもありませんが…囲ってやる。ぐふふふっ、行く当てがないのだろう。俺の女になれ!!体中舐めまわして可愛がってやるぞ!!」



 商人の態度は一変し、私の手を強引に引き寄せ、お尻に触ろうとした。



「パシーン!!」



 私は咄嗟に商人の頬を叩き、店から飛び出した。


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