第22話 ジュリアさんは美魔女

「そう…か。異世界人さんなのね…」


「はい」



 俺とアレグリアは恐る恐るジュリアさんの様子を窺う。


 しばらく沈黙が続く…が



「…まっ、いいか!!」



 ジュリアさんの言葉を聞き、俺とアレグリアが同時にコケる。



「お、お母さん!!その間は止めて!!その間は!!」


「うふふっ、ビックリしちゃった?」



 ジュリアさんが俺とアレグリアを見て笑う。



「でも、異世界人さんとは思わなかったわ。普通の男の子と比べると、雰囲気が違いすぎるから、どこかの訳アリ貴族さんかな?って思ってたのよ」


「すみません…黙っていて」


「いいのよ、気にしなくても。でもこの事は、あまり話さないほうがいいわよ。この世界には悪い事を考える人達も多いわ」


「はい。アレグリアにも会った時に言われました」


「へぇ~、この子が…」



 俺とジュリアさんがアレグリアのほうを『チラッ』と見ると


 アレグリアが『すまし顔』で、当然です!!という顔をしているのがおかしかった。



「ハヤト君も特殊な能力を持って、この世界に来たの?」



 俺はもうジュリアさんに隠すつもりは無く



「はい。俺は『鑑定スキル』を持っています。だから、このスキルを使って料理が得意な人を探そうと思っています」


「まあ、『鑑定スキル』を…。凄いじゃない!!私の事も鑑定できるの?」


「はい。ある程度は…」


「私が今、考えている事を鑑定してみて!!」


「とりあえず…やってみます」



 俺はジュリアさんをもう一度、鑑定してみた。そして今、何を考えているのか確認をしてみると…



(!?…い、いや…これは、さすがに…)



 俺は思わずジュリアさんを見た。



「………わかったみたいね。とんでもないスキルだわ。でも…、うふふふっ、冗談よ、冗談!!本気にしちゃ駄目よ」



 満面の笑顔で俺を見つめるジュリアさん。美魔女である。



「ねえねえ、お母さんが何を考えていたか教えて!!」



 アレグリアが無邪気に聞いてくる…が、言えるわけねぇよ。



(今夜、ベッドの中で待ってるから…なんて!!)



「アレグリア、個人の情報は漏らさないのが鉄則だ。何も言えないよ」



 と逃げるしかない。



「つまんないの~」



 アレグリアはそう言って、ジュリアさんと一緒に、食器の後片付けを始める。


 食器の片付けをしながらジュリアさんが俺に



「料理が出来る人を見つけたら、この宿に連れてきてもいいわよ」



 と言った。



「わかりました。最高の料理人を見つけてきます」



 俺はそう言って自室に戻った。



 



 翌日、昨日と同じ場所に陣取り、人生相談所を開くがお客さんは来ない。三日目、四日目、五日目と過ぎるが、いまだにお客さんは一人もいない。暇な時間を使って、料理の才能がある人を探してはいるが、こちらも成果はあがっていない。


 六日目の夕方、少し早いがお客さんが来ないので、帰ろうかと思っていたら



「ハヤト、調子はどう?」



 という声がして、商業ギルドのグレースさんが現れた。



「まあ、見ての通りです。お客さんは一人も来ていません」


「でしょうね。ハヤトの場合は仕入れ値が無いから、お客さえ来れば利益が上がって、ギルドに税金を納めに来るはず…ギルドに来ないという事は」


「はい。お客さんが来ていません」


「ハヤト、世の中の厳しさが少しは分かったかしら…」


「いいえ。まだまだですよ。長期戦は覚悟のうえですから!!」


「はあ~~~」



 グレースさんは大きなため息をついてから椅子に座り、机の上に1万エン金貨を置いた。



「ハヤトに大事な相談があって来たの」



 今までの冗談半分の表情ではなくなり、かなり真剣で深刻な表情をしていた。



「ラモーヌさんの事でしょう。お伺いします」



 現状、鑑定スキルは使ってはいない。だからグレースさんの情報は数日前のままで変わってはいない。なので、数日の間でグレースさんとラモーヌさんの間でトラブルでもあったのかと心配をするが…。



「ハヤト~~~、週末に先輩の家に招待されたんだけど…私は…どうしたらいいの~~~」



 グレースさんは顔を真っ赤にして、俺に泣きついてきたのだった。






【アレグリア視点】


(むむむっ!? ハヤトの様子がおかしい…)



 お母さんが



「私が今、考えている事を鑑定してみて!!」



 と言って、鑑定してから…挙動がおかしい。顔も赤くなっている。明らかに動揺しているように見える。



(私が『ねえねえ、お母さんが何を考えていたか教えて!!』と聞いても『個人の情報は漏らさないのが鉄則だ』と言って逃げられてしまったわ)



 私はハヤトとお母さんの様子を見て、何か胸が『モヤモヤ』としていた。



【ジュリア視点】


 私はベッドに横になり、夕食の時の会話を思い出していた。


「うふふふっ、ちょっと悪ふざけが過ぎたかしら…。でも、本当に私が思っていた事まで鑑定で分かってしまうなんて…凄いスキルだわ!!」



 私は異世界人が持つと言われている特殊なスキルを目の当たりにして、驚きを通り越して言葉を失ってしまった。



(ハヤト君に任せておけば、アレグリアも大丈夫…。この出会いであの子は大きく成長した。本当に母親として感謝しています。でも…ハヤト君が本気にして私の寝室を訪ねてきたら、私は断れるかしら…)



 私は『ありえない事』と思いつつ、いけない想像をしてしまうのだった。禁断の関係…頭の中に浮かんだ言葉。



(想像するだけなら…問題無いわ)



 私は自分自身に言い訳をしつつも、体が熱くなってしまうのだった。

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