第21話 母と娘の破壊力が半端ない!!
宿に戻りしばらくすると、アレグリアも帰ってきた。ジュリアさんも一緒に夕食を食べながら、今日一日の話をする。
「前にも話したと思うけど、槍が手になじむの…。全く持ったことが無かったのに、ずっと前から使っていたような感じがして…凄く手になじむ」
興奮気味に話をするアレグリア。
そんなアレグリアを見て俺は
「槍の技術を上げていくと同時に、筋力も鍛えないと、体を痛めてしまうよ。でも何も考えずに筋肉をつけすぎると、スピードが落ちてしまうからね。本当にバランスに気を付けて鍛えないと逆効果になってしまうからね」
と、アドバイスを送る。アレグリアは16歳の女の子である。体がまだ出来上がってはいない。
「そうね。あまりの衝撃で驚いてしまう時があるから、バランスよく鍛えていかないと…」
アレグリアも自覚があるのだろう。今後、どのように鍛えていくか、色々と考えているようだった。
「ところで…ハヤトのほうは、どうだったの?」
アレグリアは心配そうな顔をして俺に話を振ってきた。
俺は苦笑しながら
「初日のお客さんは…いなかったよ」
と言う。
「…やっぱり。…あっ、ごめん」
アレグリアは思わず本音が出てしまったが、申し訳なさそうな顔をして俺に謝った。
「いや…それはいいんだ。全然気にしてないから…長期戦は覚悟の上だよ」
俺がそう言うと、ジュリアさんが
「さすがに始めから全てが上手くいく事は無いわ。私もこの宿を両親から引き継いだ時は、なかなか上手くいかなかったから…あっ、今も上手くいっていないけど…ね」
ジュリアさんは俺を励ます様に言ってくれた。でも、今の宿の経営状態を思い出し、顔を赤くして苦笑いをした。
俺は顔を赤くしているジュリアさんを見て
(36歳の銀髪の美熟女…現在、未亡人。破壊力が半端ない!!)
と考えながら、思わず見惚れてしまった。
「私もハヤトも頑張っているから、お母さんも宿の経営を頑張ってよ!!」
と、アレグリアがジュリアさんに向かって言った。
「そうねぇ~。ちゃんと料理ができる人を雇ってみようかしら…」
「…お母さんの気持ちが、まだ整理できていないのはわかるよ。私もお父さんの事をよく思い出すから…。でも生きている私達は、前に進まないといけないと思うの」
アレグリアの言葉を聞いてジュリアさんは
「…アレグリア。ふふっ、大人になったのね」
と微笑んだ。
アレグリアは俺のほうを見て
「私はハヤトに出会って成長したと思う。うまく言えないけど…過去よりも未来のほうが、何倍も大切だと思うの」
と言った後『ハッ』として
「こんな事を言うのは、少し恥ずかしいけど…」
と顔を赤くし、少し舌を出して笑った。
(16歳の銀髪の美少女も破壊力が半端ない)
と思い、またまた見惚れてしまった。
そして二人を見ながら
(16歳の少年にとって、この母娘は刺激的すぎるな。中身が32歳だから、なんとか我慢ができるが…10代後半の少年だったら…たまらんだろうな!!)
と思うのであった。
「料理ができる人…か」
アレグリアの呟きに俺は
「もし良かったら、俺が料理の才能がある人を見つけてきていいかな?」
と二人に提案をする。
「えっ!?本当!!…私は大歓迎だけど…」
アレグリアは『チラリ』とジュリアさんのほうを見る。
「アレグリア、あなたが私の事を心配してくれるのはとても嬉しいですが、私はお父さんの事はもう吹っ切っていますよ。だから気にしなくてもいいわよ。………それから、ハヤト君。一つ聞いておきたい事があります」
ジュリアさんはそう言って、真剣な顔をして俺を見た。
「アレグリアがあなたに会ってから、凄く前向きな気持ちになって、明らかに変わった。それは凄く感謝しているわ。でもね…母親として、私個人としても、あなたの事をもっと知りたいの…一体、あなたは何者なの?」
「……………」
「……………」
俺とアレグリアは顔を見合わせる。
そして俺は
「別の世界から転移して来た異世界人です」
と、ジュリアさんに告白した。
【アレグリア視点】
(お母さんは本当にお父さんの事を吹っ切れたのかなぁ…心配だなぁ)
私はハヤトのおかげで、前に進む事ができた。これからも前に進んでいける手ごたえを感じている。充実した日々…でも、お母さんは…。
16歳の私にお父さんを亡くしたお母さんの気持ちはよく分からない。同じ女性だけど、妻と娘、16歳と36歳…立場の違いがあるから…。
(新しい恋でもすれば、気持ちが前向きになるかも…)
そのくらいしか思いつかない。
じゃあ…誰と?
アレグリアの頭の中にハヤトの顔が浮かび上がる。
(いやいやいや!?え~~~、で、でも…そんなのあり?)
私はお母さんとハヤトを取り合う姿を想像して、見悶えてしまうのだった。
【ジュリア視点】
(ついこの前までは子供だと思っていたのに…)
私は娘の急激な成長を目にして、嬉しさと戸惑いを感じている。
(成長する娘は目標に向かい、刺激的な毎日を過ごしている。それは母親として、凄く嬉しい事だが…じゃあ、私は?)
そう考えた時に、自分だけが取り残された気持ちになってしまう。そして言葉では言い表せないほどの寂しさが襲ってくる。
亡き夫の事を忘れるわけではないが…。
(新しい恋がしたい!!まだ老け込む歳じゃないわ!!)
そう思って、目の前で娘とおしゃべりをしている『推しの少年』を見つめるのだった。
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