第2話 神の領域の鑑定スキル
「い、異世界…異世界って…何?」
「………異世界とは、あなたの生きていた世界とは、別の世界の事です」
「はぁ、でも…正直に言って、厳しいです。俺はもう…疲れました」
「……………」
マリア様は俺の話を無言で聞いている。
「そもそも、その異世界にはピアノがあるのですか。あったとしても、この歳から一から始めて、どうにかなるものですか?また前世の様に…辛いだけの人生なら、このまま死なせてください」
「あの…すみません。言っていませんでしたが…今から転移する予定の異世界にはピアノはありません」
「はっ!?、ひ、酷い!!…信じられない。じゃあ、何の為に俺は転移するんですか」
マリア様が転移をする異世界にピアノは無いと、とんでもない発言をした。これじゃあ、俺は異世界に転移して、どうやって暮らしていけばいいのか。
「マリア様、これでは前世よりも悲惨な人生が待っているも同然ではないですか!!」
「申し訳ありません。つい、うっかりしていました」
大丈夫か?この創造神様は!?
「ど、どうしましょう。このまま転移させてしまったら…恐らくは」
「…恐らくは!?」
俺は恐る恐るマリア様に聞いた。
「奴隷落ちに…」
「い、嫌です。俺を今すぐ殺してください!!」
「ハ、ハヤト君。落ち着いて!!あなたはもう死んでいます」
冗談じゃない!!
「…勘弁してください。俺は本当に、本当に生きる事に疲れました」
マリア様はさすがに自分のミスなので肩を落としている。
「本当に申し訳ありません。お詫びと言ってはなんですが…。あなたに強力なスキルを与えましょう。本来なら人間が持つ事はできないほどの強力なスキルを…」
「…スキル!?」
「スキルとは…特殊な能力とでも言えばわかりやすいでしょうか。まあ、一種の才能と言ってもいいでしょう」
「本来なら…人が持つ事の出来ない程の才能…」
「はい。いかがですか。異世界に行きたくなったのではありませんか?」
「まあ…そうですね」
何故か自分のミスを忘れて、ドヤ顔で俺に言ってきた。
「ハヤト君は異世界に行って、どんな人生を送りたいですか。あなたの希望によって、付与するスキルを決めますから。何でもいいですよ。武力を極めたいとか、商人になって莫大な富を築きたいとか、美女を集めてハーレムを作りたいとか、希望を言ってください」
「正直、全てに魅力を感じますが…出来得る事なら、不遇の人生を送っている人たちを助けたいです。努力しても、努力しても報われない人を助けられたら…。それで『ありがとう』と言ってもらえたら…そんな人生を送りたいです」
「…ハヤト君。あなた本当にいい人ね。わかりました。あなたに鑑定スキルを…いえ、特別ですよ。神の領域の鑑定スキルを付与します!!」
「おお~、なんか凄い感じがする」
マリア様が俺に向かって手をかざすと、一瞬、体が金色に輝いた。
「鑑定スキルを付与したわ」
「何も変わったことが無いですけど…」
「私を見て、『鑑定』と思い描いてください」
俺はマリア様に言われた通りに『鑑定』と思い描いてみた。
頭の中に無数の文字や数字が浮かび上がる。
「うわぁ~~!?あ、頭の中に文字や数字が!!」
「ふふふっ、どう?」
俺は頭の中の文字と数字を読み上げる。
「創造神マリア、T165cm・47kg B89・W62・H90 処女」
「ち、ちょっと!?ダメよ!!」
「あっ、すいません。頭の中に浮かんできたもので…悪意は無いです」
なかなかのお体をしていらっしゃる…ではなく
「本当にすみません。最初から読み上げたら…こんな情報が」
「異世界に行ったら気を付けなさい。セクハラですからね」
「はい」
異世界にもセクハラがあるのか?と思いながら、一応は返事をしておく。
「それでは、そうね…私の加護と生活魔法、それに言語や文字をあなたに合わせて最適化をしておきます…あとは多少のお金を渡しておきます。お金はこのバックに入れておきます。容量が大きくて結構便利よ。それから…せっかくやり直すんだから、イケメンにしておくわね。16歳のイケメンの少年っと!!」
「…あ、ありがとうございます。ちょ、ちょっと待ってください。今、魔法という言葉が聞こえた気がしましたけど…」
「ハヤト君が行く世界は、魔法が使えるのよ。あなたも私の加護があるので、問題なく使えるわ。向こうに行ったら、練習してみるといいわ。面白いわよ」
「へぇ~、魔法かぁ~」
俺はあまり『ピンッ』ときていないが、凄い事なのだけはわかる。
「それでは…準備はいいわね?」
「は、はい。マリア様、お世話になりました」
マリア様が再び俺に手をかざしたかと思うと、光に包まれ、やがて意識がなくなった。
「ふふふっ、いってらっしゃい。今度は幸せになってね」
マリア様は微笑み、神殿の中に消えて行った。
【創造神マリア視点】
マリアは神殿に戻りながら考えていた。
(まさか、ハヤト君が転移する世界にピアノが無かったとは…。ちゃんと確認して良かったわ。本当にあのまま転移させていたら、間違えなく悲惨な人生を送る事になっていたでしょうから…)
マリアは心底『ホッ』としていた。
創造神たる自分のミスで、人間が悲惨な人生を送ってしまう事はあってはならない。もし、そんな事が現実に起こってしまったら、他の神に示しがつかないからだ。ただ、その代わりに本来なら人間が持つ事の出来ない『神の領域の鑑定スキル』を付与して異世界に送り出した事が気にかかっている。
(ハヤト君なら悪用はしないと思うけど…)
マリアはそんな事を考えながら、神殿の中に入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。