神の領域の鑑定スキルを得た俺は、関わったすべての人を幸せにする

爆進王

第1話 創造神様との出会い

(未来には、絶望しかない…何の期待感もない。不遇な人生)



 ベッドの中で、もうろうとした頭で考える。安い給料でこき使われ、体を壊したら『もう来なくてもいい』と言われ、失業してしまった。



「いつも無理を言って悪いね。君みたいな人がいてくれると本当に助かるんだ。いつも感謝しているよ」



 この言葉は…口先だけの言葉だった。

 


 先週、体の調子が悪いので、病院に行って検査をしたいから、一日だけ休ませてほしいとお願いをしたら…態度は一転した。



「はぁっ!?、無理無理!!もし休むんだったらクビにして違う人を呼ぶよ」

 


 と言われ、取り合ってもらえなかった。


 疲れた体に鞭を打って働いた結果、完全に体がおかしくなり動けなくなってしまった。


 会社に連絡をしたが



「あっ、もういりません」



 その一言しかなかった…。


 このアパートも出て行かなければいけないが、もう気力が無く、立ち上がれない…。胸が苦しい。目が回り、視界が無くなっていく…。



「俺は…死ぬのか。ただ…ただ普通に生きていきたかっただけなのに…」



 そう呟き、32年の不遇の人生を終えた。






 真っ暗な世界。体の感覚は無く、空中にふわふわと浮かんでいるような感覚しかない。



(俺は死んだんだ…)



 そう思った時、遠くに一筋の光が見えたかと思うと、強烈な光に包まれた。


 光が強烈すぎて、しばらくは何も見えなかったが、段々と目が慣れてきて周りの景色が見えてきた。


 そこには映画で見たような神殿があり、異常なまでの存在感を放つ、とても美しい女性が立っていた。



「ふふふっ、こんにちは。ハヤト君」


「こ、こんにちわ…」


「緊張してる?出来れば気楽にしてほしいのだけれど…」


「………はい」



 優しく女性が話しかけてきた。



「大変な人生だったわね。お疲れ様でした」


「あっ、お疲れ様です」



 反射的に仕事が終わった時のような挨拶をしてしまった。



「あなたはハヤト君で間違いは無いわね」


「はい。俺はハヤトですが…貴女は…どちら様でしたっけ?」


「ふふふっ、私は創造神のマリアです」


「…創造神のマリア…そ、創造神!?」



 創造神マリア様は、青みがかった銀髪で、透き通るような白い肌をした美しい女性だった。



「普段通りでいいのよ。気楽にね」


「は、はい」


「私は亡くなった人の中から、行いが良かった人を選んでこちらに呼んでいるのです。今回はハヤト君、あなたを選びました」


「はぁ…俺には意味が分かりませんが…」



 慈愛に満ちた表情のマリア様が近づいてきた。



「あなたは、厳しい環境でも一生懸命に生きてきたのを、私は知っています。自分を犠牲にしても、人の為に行動をしていた。でも…何も報われなかった」


「…はい。でも、それは俺に何の才能もなかったから…。それに俺は『ありがとう』と言われる事が、とても嬉しかったので…そうしていただけです」


「そうね。でもなかなか出来ることでは無いわ。それに…あなたには才能があったわ」


「!?、俺に才能が…し、信じられません…」


「そうね。あなたには世界的なピアニストになれる才能があった」


「はっ!?」



 思わず、大きな声を出してしまった。



「世界的なピアニストって…。俺はピアノなんか弾いた事も、触った事もありませんけど…」


「弾いた事も、触った事もないから、才能に気づかなかったのよ」


「そんな事、言われても…」


「私は創造神として、人が生まれた時に一人ずつ、才能を与えているのです」



 俺は唖然として、マリア様の話を聞いている。



「99%の人間が、自分の持っている才能に気づかないで一生を終える。運よく才能に気づいて努力した者だけが成功するのよ」


「………複雑な気分です」


「そうね。でも、私が一人ひとりに教えて回るわけにはいかないわ」



 正直、今更感が否めない。



「ハヤト君、今、今更感が否めないと思ったでしょ」


「えっ、い、いやっ」


「いいのよ。それでね、あなたにはもう一度、生きる機会を与えたいと思って、ここに呼んだの」


「生き返れるんですか!?」


「いえ、あなたには異世界へ転移してもらいます!!」

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