第3話 冒険者 アレグリア
俺は意識を取り戻して、少し重たい頭を振って周りを見渡した。
「森の中か…もう少しマシな所に送ってくれれば良かったのに…」
小さい声で愚痴るように呟いた。
(何とか人のいる場所まで行かないとな。暗くなったら危ないし…魔物とかいたら本当にヤバい。何か武器になるようなものは無いのかな)
俺は頭の中で考えながら、マリア様のくれたバッグの中を捜してみるが、お金しか入ってはいなかった。
(今はお金じゃなく、何か武器になるものが欲しいんだが…)
あたりを探し、木刀みたいな木の枝と野球のボール位の石を数個見つけた。あまり多くても持ち歩けないので、持てない分はバッグに入れて移動を開始しようとすると
「ガサ、ガサッ」
と音がし、何か生き物の気配を感じた。
「うわぁ、ヤバい!!」
俺は木の枝を構えて体勢を整えるが、剣術とか剣道とか全く教わった事が無かったので、腰が引けて格好が悪い。
「ガサ、ガサ、ガサッ」
音が段々大きくなってきて、近づいて来ているのがわかった。
俺は無意識に後ずさりをしていて、背中が木にぶつかり行き場を無くした。
「あなた…こんな所で、何してるの?」
突然、言葉が聞こえたので、俺は恐くて閉じていた目を、少しづつ開けていく。そこには銀髪の美少女が剣を持って立っていた。
「ま、迷子です」
俺は思わず、そう答えた。
「迷子って歳には見えないけど…」
「迷子という言葉はおいといて…。ここがどこなのか、全くわからないんだ。気が付いたら…ここにいたんだ」
「………気が付いたらここにいたって、あなた、まさか…異世界人?」
俺は一瞬、異世界から転移してきた事を隠すべきか迷った。この美少女が何を考えているかわからないから…。
(この子を鑑定してみれば…)
俺はそう考えて、彼女を見て『鑑定スキル』を発動させた。
膨大な彼女の情報が俺の頭の中に流れ込んできた。
アレグリア 16歳 身長155㎝ 体重43㎏ B78 W56 H79 処女
戦闘 070/100 政治 045/100 内政 055/100 性欲 052/100
魔法 000/100 家事 055/100 料理 008/100 生産 022/100
農業 024/100 商業 029/100 建築 061/100 魅力 068/100
外交 033/100 交渉 045/100 信用 096/100 採掘 035/100
鍛冶 002/100 研究 001/100 狩猟 072/100 解体 061/100
これはほんの一部だ。まだまだ鑑定した情報はあるのだが…キリがない。
あと、戦闘を選択すると
戦闘 070/100 属性 氷
剣術 E 槍術 S 刀術 D 斧術 E 棒術 E 弓術 F
詳細が出てくる。これもほんの一部だが…。
まだまだ膨大な情報がある。
さすがは神の領域の鑑定スキルだ。対象の人間の全てが分かってしまう。
ただこれでは、彼女の能力はわかるが、考えている事まではわからない。
俺はアレグリアという名前を選択する…すると、『現在の状態』が表示された。
かなりの量の情報が表示されたが、俺に関する情報は…ふむ、ふむ、なるほど…。
彼女は俺が異世界人だったら、悪い人間に捕まらないように注意しようと思っている。今、会ったばかりなのに、心の底から心配している。とても良い人だった。
「あなたの言う通り、俺は今、ここに転移してきた異世界人です」
「本当に!? 私、異世界人を見るのは初めてだけど、見た目的には全然変わらないのね」
「そうなんですか…。俺らの世界には、あなたのような美少女はいませんでしたよ」
「び、美少女なんて…は、恥ずかしいわ…」
彼女は少し顔を赤らめ、下を向いた。実際、彼女の顔は鼻筋が綺麗に通り、びっくりするほど整っている。そして髪はとても美しい銀髪のロングヘアを後ろで束ねている。俺が今までに見たことの無いレベルの美少女だった。
「私の事なんてどうでもいいのよ。異世界人は…特殊な能力を持っている人が多くて、悪い貴族や商人に狙われるの。異世界人を捕まえて、大金で売り払った話を聞いた事があるわ。あなたが特殊な能力を持っているかはわからないけど、気を付けないと大変な事になるわよ」
「もし…あなたが俺を捕まえて貴族や商人の所へ連れて行けば、大金が手に入るかもしれませんよ。でも、あなたは俺を心配してくれている。どうしてですか?」
鑑定スキルは人が持っている潜在能力は完全に鑑定できるが、感情の動きは変化していくので、普通に聞いたほうがいいだろう。会話が進行するたびに鑑定するのは現実的ではない。
「…私は、私は人を不幸にしてまで、お金が欲しいとは思わない。私はFランクの冒険者で偉そうなことは言えないけど…お金は実力で稼ぎたいのよ」
俺は素直に感動した。自分が前世で16歳の時、こんなセリフが言えただろうか。マリア様は俺とこの少女を合わせるために、この場所に転移させたのだと確信した。
「俺はあなたを人間として尊敬します」
自分の気持ちを素直に伝えた。自分でも驚くほど自然に口から出てきた。
「そ、そんな事、目を見つめられて言われたら…恥ずかしいじゃない!!」
アレグリアは白く美しい肌が耳まで真っ赤になり、うつ向いてしまったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。