第23話 人気者の悩み

優しく甘い言葉に見た目も劣ることはない。

学校から自宅までいつも悠は咲夜を

送っている。


いつも別れるのが嫌になる。

明日も会えるのにと分かっていても

スマホでメッセージやスタンプの

やり取りをしていても、どう思っているのか

何を考えているのかと心配になる。


本当に好いていてくれるのか。

他にも好かれている女子がいないのか。

翼から聞いていた悠の人気情報。

誰かと交際していると聞くと

周りのファンたちが騒ぎ出す。


何かいじわるされても平気な咲夜は

それよりも何よりも悠のことを独占したい

気持ちでいっぱいになる。


前まで一緒にいていいのかな。

スカートを履いている悠を

受け入れなかった。

今は、学校に要望を出して、

ズボンでも良いと注文して作り直した悠は

男子と同じズボンを履いている。


もう、それを見るだけで

イケメンのアイドルのような

学校ではさらに噂が広がっていた。


男子より男子だねと

かっこいいと移動するたびに

女子たちが群がるくらいだ。


昼休みに購買に行くだけで買わなくても

何かしら手一杯にパンが載せられる

くらいだ。


その人気は、

3年の琉偉の耳にも入っていた。


「ねぇねぇ、琉偉くん。

 知ってる?

 1年の悠って言う女子なんだけど

 すごいかっこいい子。

 宝塚に出てもおかしくないみたいな。

 今女子たちの間で盛り上がってるよ。」


「……ああ、あいつのことか。

 へぇ、そうなんだ。

 ここに元祖イケメンの琉偉様が

 いるっていうのにみんなどこに目を

 つけてるんだろうね。」


「琉偉くんはかっこいいけど、

 男子だから。いろいろね。

 問題になる部分もあるっしょ。」


「え?何、どういうこと。

 男子であることの何が問題なのさ。」


「理解できてないってことは

 勉強不足だよ。

 女子が求めるものは、

 理解ある優しさだよ。

 女子同士ってことは

 お互いに分かる訳でしょう.

 私も悠くんなら、彼氏にしたいかも。

 変にその辺の男子と付き合うより

 初めてならさ、傷つかないっていうか。」


「えーー、理解できねぇ。

 なにがそんなにいいんだよ。」

(だからなのか。

 咲夜が俺に眼中ないのって。)


 琉偉はぐったりとベランダのふちに

 うなだれて、中庭にいる悠に

 群がるファンを見ていた。


「あそこにいるのは俺だっつーの。

 ちくしょー。」


 ファンが集まってくるのを夢見ていたが、

 文化祭が終わると

 みんな忘れてしまうようで

 琉偉の前には誰も集まらなくなった。

 歌がうまいだけでは良くない。

 何か人の心をつかむ要素がなければ

 定着しないというのを学んだ。


 木の枝で休んでいた鳩が

 バサバサと飛び立った。


 

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