第24話 学校の帰り道

たまにしか参加しない写真部の活動に

珍しく、咲夜は久しぶりに顔を出していた。


化学室を借りて、

次の撮影場所のお知らせを写真部長は

部員たちに報告した。

顧問の先生は撮影会の当日、

車を手配してくれるという話だった。

部員数は幽霊部員を含む12人。

活動的なのは咲夜を含めて6人。

先生所有のワゴン車に全員乗れるから

大丈夫だと安心した。


「咲夜ちゃん、久しぶりだね。

 来てくれてありがとう。」


 まったりゆったりの写真部。

 参加は任意で自由。

 活動も週に1回の木曜日。

 来れる人が来てという部長である

 3年の齋藤薫子さいとうかおるこ

 咲夜に声をかけた。

 

「齋藤先輩。お久しぶりです。

 珍しいですね。

 先生が遠い場所に連れてって

 行くなんて。」


「そう、そうなんだよね。

 3年の活動も夏で終わりだから、

 記念になるようにって

 フラワーガーデンに

 写真撮りに行こうって

 ことになったのよ。

 咲夜ちゃんも行ける?

 楽しいよ。」


「今まで全然参加してませんでしたけど、

 フラワーガーデンは

 何だか楽しそうですね。

 インスタ映えしそう。」


「そうそう、

 桜ソフトクリームとかあるらしいのよ。

 あと、夏だと、

 薔薇のソフトクリームだったかな。」


「え?!それは気になる。

 行きますよ、絶対。

 ソフトクリーム好きですもん。」


「良かった。幽霊部員が多いからさ。

 参加してくれるだけで嬉しいよ。」


 齋藤部長は嬉しいそうに笑った。

 こちらまで笑顔になりそうだった。


 久しぶりに会った齋藤部長と

 会話が弾んで、

 ああでもないこうでもないと

 話のネタが尽きなかった。


 窓の外を覗くといつの間にか

 真っ暗になっていた。


「あれ、いつの間にこんな時間。

 咲夜ちゃんといると話止まらない!

 そろそろ帰ろう。

 暗いから。」


「あーー、そうですね。

 だって、齋藤部長も話振るから。

 楽しいんですもん。」


 他の部員と顧問の先生は先に帰っていて、

 齋藤部長と2人だけになっていた。

 化学室の電気を消して、ドアの鍵を

 閉める。

 昇降口で手を降って、齋藤先輩と別れた

 咲夜はスマホをバックから取り出して、

 ラインを開いた。

 いつも部活終わりの悠を咲夜は

 待っていた。

 今日は咲夜の方が遅かった。

 用事があったのか先に帰るねの文字が

 送られてきた。


 珍しいなと思いながら、家路を歩く。

 街灯もぼんやりと光る真っ暗な歩道を

 歩く。


 周りには誰もいない。

 咲夜1人だった。

 いつも誰かと一緒に帰るのに

 1人だと寂しいし、薄暗くて怖い。

 それでも家に帰らないといけない。

 今日は共働きの両親は仕事で帰りは遅い。


 誰も迎えに来てくれる人はいなかった。

 

 車のヘッドライトが左側を照らす。

 1台の車が通り過ぎるだけでも怖かった。

 学校の情報で不審者が出ているといる

 メールが来ていた。

 白い軽自動車が女子高生を狙う事件が

 発生していた。

 犯人はまだ捕まっていない。


 変な想像していたが、

 無事、車は通り過ぎていく。

 ゆっくりと足を進めると、後ろから皮靴の

 音が聞こえてきた。

 人数は1人。

 真っ暗で後ろを振り返るのも怖かった。

 目的地の駅まで15分は歩かないと

 いけない。


 早歩きで進めると後ろの靴音も

 同じ早さになる。


 走って逃げようとした。

 

 コンビニでフローズンドリンクを買って

 外に出ようとした琉偉が無我夢中で

 走る咲夜を見かけた。


「あ、おい!咲夜。」


 咲夜の肩を掴んで止めた。


「え?」

 

 急いで走ったからか

 汗をびっしょりとかいていた。

 少し体が震えていた。


「大丈夫か?」


 琉偉が咲夜に声をかけていると

 近くでがさこそと草むらに

 隠れる物音がした。


「琉偉、今、

 私、何か追いかけられてて…。」


 呼吸が荒くて話しにくかった。


「お、おう。

 後ろは誰もいないぞ。

 てか、お前部活入ってないん

 じゃないのか。

 遅くね?」


「し、失敬な。

 これでも写真部です!

 まぁ、プチ幽霊部員ですけど。」


「プチ?プチってなんだよ。」


 咲夜は、笑みがこぼれた。

 琉偉と話して、安心した。

 

 さっきまで1人で歩いていて

 後ろから誰かに追いかけられているかと

 思うと恐怖でしかなかった。


 全身真っ黒い姿の咲夜を追いかけた

 その人は、そっといなくなった。


「琉偉でも役に立つ時が来たね。」


「は?琉偉先輩と呼びなさい。」


 咲夜はケタケタと笑う。

 なんだかんだで咲夜と琉偉と隣同士で

 歩いて駅に向かった。

 

 琉偉と一緒にいると

 嫌だと思っていたのに

 今は全然嫌じゃない。

 

 なぜだかほっとしている。


 咲夜は、スマホに電話着信が

 来ていたことを

 知らずにずっと琉偉と話して

 盛り上がっていた。



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